ドリーム小説
四宝神刀 八




広い静かな空間に2つの話し声が響き渡る。
「・・・どうやら、本当に帰ってきたようだな。ただ『瀞霊廷に侵入』するという形でのようだが」
「ったく・・・帰ってくるなら、直接こっちに帰って来いよな。しかも侵入って・・・あいつ自分の立場ちゃんと解ってるのか・・・」
「今更だろ・・」
「それはそうだが・・・」
いっこうに腑に落ちないといったいった様子で少し不機嫌な片方に対し、もう片方はもう慣れたとでもいうように冷静に言葉を口にしていた。
「だが、あの朽木の現当主・・あれはやりすぎだろ」
「まあ、確かに・・・瀞霊廷内でも騒ぎになっていたようだからな。たかだか、罪人を捕らえに行くだけのことで、六番隊の隊長が現世から負傷して帰ってきたと・・・」
「まったくだ・・・それにしてもその罪人のことだが・・・」
「確かに・・罪状からして極刑に値しないな。こんな決定、四十六室がするとは思えない」
「どう見る・・・?」
先程の少しばかり緩んでいた空気が、片方の目がもう片方に真剣に向かうと一気に厳しいものへと変った。
そして尋ねられたもう片方は暫しの間の後、口を開いて自分の考えを語りだした。
「・・俺の考えでは、四十六室は全滅していて・・・何者かが罪人・・・こうなっては本当に罪人か解らないが・・・・・その何者かが四十六室のふりをして、無茶苦茶な処罰を決定した・・・だな」
「だろうな。その何者かの手で四十六室の連中は全滅した・・・誰にも知られずか・・・」
そこまで言って片方は少し考え込むようにして1度黙った。
「・・・その手のことが簡単に出来る斬魄刀に心当たりがある」
「ならその主が犯人だろうな。そいつが何をしようとしているのか、俺たちでは情報が少ないが・・・この無茶な処罰の決定の仕方から見て、燬鴻王が利用されようとしているのは明白だな」
「ある意味それが1番腹立つんだよ!あいつは本来処刑道具なんかじゃないんだぞ!!」
そう言って本当に片方は忌々しそうにはき捨てると、先程以上に不機嫌な様子をあらわにした。
それが何を意味しているのか知っているもう片方の人物は、軽い溜息をつくと口を開いた。
「・・とにかく、こちらでも何かしろ動いてみよう。ただ・・・今の状況であいつと接触するのは止めておくぞ」
「・・・・・解ってるよ」
常に冷静な片方の言葉に対し、もう片方はやはりまだ怒りさめやらぬといったように、不機嫌に言葉を返したのだった。









達は瀞霊廷内に存在する薄暗い地下水道を歩いていた。
しかしそこにはある1人の人物が足りなかった。
「・・・黒崎くん、大丈夫かな・・・」
「心配ないわよ、織姫。一護なら大丈夫」
「しかし・・・かなり無茶な特訓方法だとは思うけど・・・」
「ん〜〜そうはいってもね〜〜。十一番隊の三席相手にあれくらいの実力だと・・・この先大変よ・・・」
市丸から逃げた一同がの瞬歩で辿り着いた先でこれからどうするか、こそこそ隠れて話をしていたところに、こちらには運悪く護廷十三隊の十一番隊の三席と五席の2人に見つかってしまった。
五席の方はが適当にあしらい楽に沈黙させられたのだが、三席と戦った一護はというと、それなりのダメージを受けてしまったのだ。
それを見たが、この先隊長格とやりあうには少し無理があると考え、更に一護を強くすべく、ある場所に連れて行き、現在は卍解の修行に取り掛からせているのだ。
「そもそも十三隊の隊長は卍解できるからね〜。一護も会得しておいたほうがいいってわけよ」
「確かに・・それはそうかもしれないけど・・・」
のある意味能天気な発言に、それでもやはり納得が少しいかないのか、雨竜が言葉を続けようとしたとき、織姫が何かにぶつかったのか上げた声にそれは遮られた。
「わわわっ!ご、ごめんなさい・・人がいるなんて思わなくて・・・」
「あ、良いの・・・こっちも前見てなかったから・・・」
慌てて謝るその声に律儀に返事を返す織姫だったが、他の面々はその時ふと気がついた。
こんな場所に自分達以外にいる人間といえば、それはどう考えても1つしか考えられない。
案の定、目の前にいたのは、死神の証ともいえる死覇装をみにつけ、掃除でもしていたのか箒を持った少年の姿の死神だった。
そして暫しこちらの姿を見ていたその少年も、やがて考えがまともまったのか、いっきのその顔が青くなっていく。
「・・まさか・・・あの・・旅禍じゃないです・・よね?」
一抹の希望を持ってなのか乾いた笑いを漏らしながらそういう少年だが、しかしその少年の願いが叶わないことは誰よりも彼の目の前にいるたち自身が良く知っていた。
そして有無を言わせずその少年の肩をが掴んだ。
その行動にびくっと身体を強張らせた少年は、恐る恐るの顔を見てみると、そこには何かをたくらんでいるようなとても良い笑顔があった。
「あ・・・あの・・・」
「ここで会ったのも何かの縁ね。ちょっと付き合ってくれる?」
「・・・えっ・・いえ・・あの・・・はい・・・」
さん・・・一体どういうつもりなんだ?死神を連れて行くなんて・・・」
少し泣きそうな声で了承する少年は了承したが、逆に仲間である雨竜の方から反発の声が上がっていた。
「ん〜〜・・この子、四番隊みたいだから、怪我した時とか役に立つと思うわよ」
「四番隊・・・?」
「死神はね、隊によって特色があるの。四番隊は救護・補給専門の部隊。とはいえ、実質治癒霊力を扱えるのは四番隊だけだし・・・ある意味でいえば、十三隊の中で1番重要な隊だと思うのよね。私は」
のその言葉に少年は思わず顔をあげ、驚きと同時にどこか感激したような表情だった。
おそらく今までそんなことを言われたことがないのであろう。
「ん〜〜でも、どうしてさんはこの人が四番隊って解ったの?」
「四番隊はね・・・他の隊から雑用を良く押し付けられるのよ。この地下水道の掃除とかも、ね・・・」
「ああ・・・それでか・・・」
「まあでも・・そのおかげもあって、四番隊はここ全部把握してるみたいだけど・・・」
そう言うに対し、織姫と茶渡は成程と納得し見せる。
しかしその中で雨竜1人だけがの事を不審に思っていた。
「・・・さん・・聞いても良いかな?」
「ん?何?」
「・・君は、なぜ・・そんな各隊の特色とやらまで詳しいんだ?」
「ん・・・?あ〜それはね。夜一と喜助に聞いて・・・」
「じゃあ・・なんで、この地下水道の複雑な道順まで知ってるいるんだい?とてもじゃないが、ここは聞いた程度で憶えられるような場所じゃない。君もさっきそんな風なことを言ってたじゃないか?」
雨竜のもっともな疑問にはっとしたように織姫と茶渡も不思議そうにを見る。
いわれてみれば、他の事に関しても、彼女はまるで前から直接しっていたかのように、この瀞霊廷について詳しすぎる。
「・・さん・・・君は本当は・・・何者なんだい?」









結局、雨竜の質問は適当にあしらい、彼からは不満を受けながらも、は道中捕まえた死神の少年、山田花太郎とすっかり仲良くなってしまい、意気揚々と歩みを進めていた。
「・・ルキアさんを助けにこられたなら、最初にそういってくだされば良かったのに・・・」
「あははっ。だって普通潜入した先の住人にそんな話はしないでしょうよ」
「でも、花太郎さんが朽木さんの知り合いだったなんて、偶然ですよね〜」
「はい。ルキアさんが六番隊の隊舎牢に入れられていた頃、僕がお世話をしていたんです。・・・僕もルキアさんを助けたいと思ってましたから、皆さんに協力させてもらいます!」
だけではなくすっかり織姫とまでも仲良くなってしまっている。
否、ひょっとしたら密かに茶渡ともかもしれない。
そんなことを考えながら、雨竜は頭が痛くなるような気がしたが、花太郎自身にまったっく敵意がないうえ、おまけに根っからの良い人物であるようなので、今のところ何も文句は言う気はなかった。
そんなことを考えていると、突如ぴたりとは足を止めた。
「ああ。ここ、ここ」
「ここが・・・どうかしたんですか?」
そこは何の変哲もない行き止まりだった。
掃除はしているといってもあまりここには人が来ないのだろう。
地下水道の他の場所と比べても明らかに汚れた場所だった。
こんな場所に何があるんだというように一同が首をかしげいていると、は楽しそうに笑って口を開いた。
「ん〜〜と、抜け道」
「抜け道・・・?なんの?」
「ま、百聞は一見にしかずってね。じゃ、いくわよ〜〜」
そう言っては一同を一箇所に集め、なにやら小さく言葉を口にしていた。
「焔の鳥王見ゆる塔へ」
がそう唱えると同時に、その場から一瞬で彼女達の姿は跡形もなく消え去っていた。










四深牢に閉じ込められたルキアは、ただ何もすることもなくその場に仰向けになり、目を閉じて静かに寝ていた。
眠っているわけではなく、しっかりと意識は現実にある。
しかし何もすることがなく、ただ待つだけしかない現状では、こうしている事がある意味1番ましだった。
ふとそこでルキアは何か近くで気配がするような気がした。
しかしまさかと思い目を閉じたままその場から起き上がることはなかった。
この四深牢にいるのは自分ただ1人。
ここに入ってこれるのはただ1つしかない厳重に施錠された扉のみ。
僅かなに外を覗ける隙間から小鳥が入ってこれはするが、それ以外のものがここに、ましてや人が入ってこれるわけはないと、ルキアは気のせいだと思っていた。
しかしやはりまた感じた気配、しかも明らかに小鳥などではないそれが気になり、今度こそルキアは目を開けてその方向を見てみた。
そして次の瞬間、ルキアは大きく目を見開くことになる。
そこには確かに、自分しかいないはずのこの場に、2人の人物がこちらをみて立っていたからだった。
「へっ?!えええっ!」
その光景が信じられないといったように、ルキアは暫しの間の後目を見開いて声を上げた。
そして口をぱくぱくとさせ、明らかに驚いているというその表現に、その2人の人物はそれぞれ言葉を漏らした。
「・・・はぁ〜〜、良い反応するな。こいつ・・・」
「そういうものでもないだろう・・・」
片方の感心したような言葉に、もう片方は少し呆れたように溜息をつく。
その何でもないことのような2人に、ルキアははっとして声を上げていた。
「お、お前達何者だ?!どうやってここに・・?」
「・・・お前、朽木家の人間だよな?」
しかしルキアの質問に答えることはなく、逆に片方がルキアに尋ねてきた。
するとルキアは一瞬きょとんとしたような表情になった後、律儀にその質問に答える。
「あ、ああ・・・そうだが・・・」
「・・なら、俺達の正体バラスわけには余計にいかないな。・・・特にお前は」
「そうだな・・・」
そう何やら意味深に言い合う2人に、ますます訳が解らないといった様子でルキアは首をかしげた。
そんなルキアに気づいているかいないのか、2人はルキアの方を改めて向き、やがて片方が真剣な表情で口を開いた。
「・・・生きたいと言え」
「えっ・・・?」
自分に向かって何を言われているのか、ルキアは最初理解が出来なかった。
「今回のお前の罪状は殆ど無効だ・・・何しろ・・四十六室はとっくに全滅していたからな・・・」
「なっ・・・!?」
尸魂界最高の司法機関が全滅しているという事実に、ルキアは当然目を見開いて驚いた。
「お前が処刑される理由はない。だが、四十六室が全滅していることを知らない者達はお前をこのまま処刑するだろう。・・・お前が一言生きたいと言えば・・・俺達が決定を覆してやる」
「馬鹿な・・・四十六室が全滅など・・・それに、お前達にどうやって決定を覆すなど・・・」
「俺達には出来る・・今はそれしか言えない。だから・・・生きたいといえ」
ルキアのただ驚愕しかないその言葉と胸のうちに、しかし2人はいたって冷静にそう言葉を返していた。
その2人の冷静さに、ルキアも言葉を止めて少し考え込む。
しかし出てきた言葉は、2人は待つのとは正反対の辛らつな言葉だった。
「・・それは出来ない・・・私はそもそも今回の件がなくとも罪人だ・・・裁かれてしかるべきの・・・」
「・・馬鹿かお前」
しかしそんなルキアの言葉に対して、片方が返した言葉はある意味信じられないものだった。
真剣に言葉を重ねていたルキアにとっては、あまりにも侮辱とも言えるその言葉に、思わず反論しようとしたが、それよりも相手の方が先に言葉を口にした。
「お前が・・・例えば死んで然るべきの罪を犯していたとしても・・・・・やはり死ぬべきじゃない」
「何故・・そんなことが・・・」
「・・死んで罪を償うっていうのは、ある意味もっとも楽な方法だ・・・・・特にお前みたいに、自ら死のうとしているような奴にはな・・・」
「死ねばそこで終わるからな・・・・・本当に罪を償う気があるのなら・・・・・生きて償うべきだ・・・」
片方の言葉に更にもう片方がそれを助けるように言葉を重ねた。
その2人のある意味正論とも言える言葉に、ルキアはなんだか様々な思いが交じり合い、その場で泣いてしまいたい気分になってきた。
しかし彼女が泣きそうになったその事態は、ある意外な人物のおかげで食い止められることとなった。
「と〜〜ちゃ〜〜っく!!」
突円出現した能天気な声に、当然3人は驚いて一斉にそちらに目をやる。
一方の相手の方はまだこちらに気づいていないようで、呑気に会話を交わしていた。
「いや〜〜ちゃんとついたわね。古い仕掛けだから、ちゃんと機能するかどうか心配だったんだけど・・・」
「ちゃんと機能するかかって・・・それ以上にここはどこなんだ?!」
「・・なんか頭がくらくらする〜」
「大丈夫か?井上」
「あああーーー!」
呑気な会話が繰り広げる中、そのうちの1人がようやくこちら側に気づいたようで、ルキアを視界に捕らえると、彼女を指差して驚いた表情をしている。
「ルキアさんっ!?」
「花太郎?!!」
突然の会えないはずの知り合いとの再会に、お互いに驚いた顔で名前を呼び合う。
そしてその花太郎とルキアの声に反応し、他の面々もルキアの方を見て各々の反応をしめしていた。
「あっ!朽木さん。良かった無事だったんだ・・・」
「・・本当に無事でよかった」
「いや・・しかし、ここに朽木さんがいるということは・・・僕達は牢の中に直接でたということか?」
「そういうこと〜〜。ルキア、無事で何よりだわ」
「井上・・茶渡に石田にまで!!」
「「白いの?!!」」
花太郎より更にありえない現世で知り合った面々の出現に、ルキアは余計に目を大きく見開き、声を上げて驚くばかりだった。
しかしそんな中、ルキアの傍にいた謎の2人組も、なにやら謎な言葉を口にして、相当驚いたような表情でを凝視していた。
そしてその声にきょとんとしながらはその2人を暫し眺め、やがてみるみるうちにぎょっとしたような表情になり、今度はの方がその2人を凝視していた。
「げっ!赤いのに、青いの!!なんで、あんた達がここにいるの?!」
「それはこっちの台詞だ!!お前・・色々と洗いざらい話してもうらからなっ!!」
そう言っていきなり四深牢の中にもかかわらず、に赤いのと呼ばれたその人物は、壮絶な追いかけっこを繰り広げ始めた。
その光景に何も知らない面々は、何が起こったのか解らず、ただ呆然としてそんな2人を眺めていた。
その中で、に青いのと呼ばれた人物だけが、冷静にその2人の行動を見ながら軽く溜息をつき、ぽつりと言葉を漏らしていた。
「・・・接触しないといった矢先にこれか・・・まったく、いつも意外に行動パターンが読めないな・・・あいつは・・・」
少し呆れたようにそう呟くと、彼はまた深い溜息をついて見せたのだった。










あとがき

今回短かったです。
『四宝神刀』でこんなに短いのは1話以来ですね・・・
ここら辺からかなり原作とはずれまくりますのでご容赦を・・・
っていうか、既に思いっきりずれてますね・・・;
一角と弓親何時の間にか倒されてるし・・・・・
花太郎は無事(?)に仲間にすることができましたが。
一護は1人で早々に卍解修行に入ります・・・
主人公は隊長格がどうのといってますが、本当は別の存在を懸念してやらしてたり・・・;
で、今回予告どおり、赤いのと青いのを出せてよかったです。
そろそろ主人公の正体も明かせそうかな〜〜と思います。
次回は隊主会に乱入するか、日番谷くん口説き落とすか・・・(えっ;)






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