ドリーム小説
四宝神刀 七





ルキア救出に向けて尸魂界に出発するまでの数日の間、一護達が必死に修行に励んでいる中、は黒崎家を訪ねていた。
真咲と一心を目の前に、あらかたの事情の説明を終えると、3人の間に暫しの沈黙が落ちた。
そして最初におずおずと口を開いたのは真咲だった。
「・・・あの」
「何?真咲」
なんとなく真咲が尋ねてくることは見当がついていたが、あえては続きを言うように促した。
「・・・一護がその子を助けたいという気持ちは解りました。親として誇らしいくらいです。けど・・・同時に親として、あの子は無事帰ってこれるのだろうかと・・・」
尸魂界は真咲にとっては完全に未知の世界といってもいい場所だ。
そんな場所に可愛い息子を送り出すのが内心親として心配であるのは当然の事。
そして一心の方は、逆にその尸魂界をしっているからこそ、彼もまた多少心配にしていることが伺えた。
「大丈夫よ。何があっても、一護は私が護るから。あんたの願い・・・約束は忘れてないわ」
「・・そうですか。貴女がそう仰るなら・・・安心して、あの子の任せます」
「・・・良いのか?母さん」
それまで黙って聞いていた一心が真咲に向かって少し心配そうに口を開いた。
「きっと大丈夫よ。この人がこう仰るのだから」
「・・・母さんがそういうなら俺も頷きたいところだが・・・・俺は今一この子の正体が解らないから、素直に信用できないんだよ」
自分が死神だとあっさりと見抜いたこのに対し、当然とも言える不信感を抱いている一心は複雑な表情でそう告げる。
しかし真咲はそれに対し、にっこりと微笑んでに太鼓判を押した。
「大丈夫よ。この人は絶対に信用できるから。だって・・・この人が私を生き返らせてくれたから、今でもあなたや子供達と一緒にいられるんだから」
そうあっさりと真相を告げた真咲の言葉を聞いた瞬間、一心はぴたりと動きが止まり、続いて大きく目を見開いた後、を凝視した。
「・・・生き返らせた・・」
「ええ・・・今までずっと黙っててごめんな」
「い、いや母さん!それも確かに重要だが・・!」
自分が1度死んでいた事を驚いているのだと思った真咲は、申し訳なさそうに一心に謝りかけたが、しかし一心はその謝罪の言葉を止め、別の事に驚いているというそぶりを見せる。
そのあまりの狼狽振りに逆に真咲が驚く中、一心は未だを凝視して震えながら口を開いた。
「生き返らせるなんて真似・・・・・・じゃあ、あんたは・・・・・いや、貴女は・・・・・・」
一心が驚く中、その答えを彼が口から零すよりも前に、にっこりと微笑んだの表情が、まさに一心の出そうとしていた答えに確信を持たせていた。











一護達が修行を終え、尸魂界に旅立つ当日、一同は浦原商店の地下で浦原作の穿界門(霊子変換機付)を前にしていた。
そして一通りの説明を浦原が行なおうとした時、がそれを激しい蹴りで止めた。
「は〜〜い!ちょっと待った〜〜」
「な、何するんですか?!さ・・」
突然の行為に抗議の声を上げようとした浦原だったが、の顔は笑っているが目は笑っていない、典型的なという健やかな(?)怒りの様子を前に、言葉を詰まらせてしまった。
「どうしたの?さん」
「ん〜〜っとね〜〜。皆にルキアが連れて行かれた真相を話しておこうと思って」
その言葉に一護達はぴくりと反応し、逆に浦原は内心ぎくっとする。
「なにって・・・俺に死神の能力を渡したりしたから・・・」
「確かに譲渡行為は違反だけど・・・あれはルキアの力が一護に全て渡る前に私が途中で止めたわ。でも、例え完全に譲渡していたとしても、長期滞在と合わせても、極刑にされるような罪じゃないわね」
そう言いながら、はずっと浦原の方を睨み、睨まれている当の浦原の目は完全に泳いでいた。
「極刑って・・・」
「燬・・・双極っていう簡単に言えば超強力な・・・武器で罪人を貫くのよ。本来は十三隊の隊長クラスにのみ執行されるはず刑よ・・」
「なっ・・・なんで、そんなもんにルキアが!」
「・・・ルキアが連れて行かれた本当の理由が処刑そのものじゃないから・・・そうでしょ?喜助」
一護の慌てた言葉に、今度こそは元凶である浦原の名前を呼んだ。
それに反応して全員の視線がから浦原に移る。
「・・・どういうことだよ」
「この馬鹿はね。一護、あんたの家が襲われたあの日がルキアと初対面なふりして、本当はそのずっと前にルキア見かけてて、その時に『崩玉』っていう、あっぶなかしーものをルキアの魂魄に埋め込んで隠し場所にしたのよ」
「『崩玉』・・・?」
「正確な説明は省くけど・・死神や虚の境界、限界を取り払い、飛躍的に能力を向上させる道具。昔こいつが、十二番隊隊長、及び技術開発局局長だった時に尸魂界で開発したものよ」
から聞いた浦原の正体に、一同は驚いて眼を大きく見開く。
「浦原さんが死神・・・?!しかもそんな大物の・・・」
「元・・・ですが」
「元でも実際、今回の一件はあんたが引き金みたいなもんでしょーが」
「すいません・・・」
苦笑しながら告げる浦原に対し、はきっぱりと告げて一刀両断してみせる。
そしてその言葉に一護が眉を寄せ口を開く。
「今回の件が浦原さんが引き金って・・・どういう意味だよ?」
「・・・魂魄に埋め込まれた物質を取り出す方法の1つに超高温で魂魄を焼き尽くして取り出すものがあるのよ。双極は解放の際、その超高温の炎に包まれて罪人を貫くから、まさにうってつけってわけ」
「・・それが本当なら、今回の一件は全てその『崩玉』を手に入れるための?!」
「そう・・・しかもこんな馬鹿げた判断、四十六室が下すわけないから、誰かが裏で糸を引いてるのは間違いないでしょ・・・・・・そうなると、四十六室も多分無事じゃない・・・全滅してる可能性がるわね」
四十六室が何かは正確になところは解らなかったが、少なくとも尸魂界における重要な決定機関で、そこが潰されて誰かが裏で糸を引いているのなら、ルキアの極刑は絶対に覆らないのだろうと、少なくとも雨竜には予想がついた。
「じゃあ、僕達が助け出す以外に、朽木さんの助かる見込みは・・・・」
「ゼロね・・・ね〜〜喜助〜〜」
またしても振られたの笑顔だが怒りのオーラを身に纏わせたその姿に、浦原は恐怖のあまり顔を引き攣らせていた。
そんな中、一護はぐっと拳を硬く握って口を開いた。
「元々・・・俺があいつを助け出すつもりだったんだ!今更、他に助ける見込みが歩かないかなんて関係ねーよ」
「黒崎くん!『俺』、じゃなくて、『俺達』だよ」
一護は硬い決意の言葉を口にしたが、すぐさま織姫の鋭い訂正が入る。
その言葉を聞いて一護が周りを見てみると、全員織姫の言葉に賛同するように一護に笑いかけていた。
「・・ああ、そうだな」
「そうね・・後、本当にここでルキア助け出せなかったら・・・ルキアはただの犬死ってことになるし・・・」
「・・・どういうことだよ?」
「ん〜〜・・・だって、その『崩玉』ここにあるし」
そう言ってが取り出したのは、1つの小さな玉だった。
それを目にした瞬間、浦原と取り出したを除く全員が驚いた表情をした。
「なっ!どういうことだよ?!」
「ルキアと初めて会ったあの日のうちに、私が気づいて取り出しておいたのよ。勿論、ルキアはそのことも、自分の中にこんなものが埋め込まれていたことも知らないけど」
「・・・あの時の様・・・・・・物凄い形相でした・・・」
何気ないことのようにが告げるその言葉の後に、浦原がぽつりと漏らしたその言葉は、幸か不幸が誰にも気づかれていなかった。
「まあ、今回の黒幕は・・・ルキアの魂魄に『崩玉』が埋め込まれていると気づいて、それを欲しがってる奴の仕業でしょうけど。・・これがここにある以上、空振りなのよね〜〜」
「んなこと呑気に言うな!それじゃあ、本当にルキアは無駄死にじゃねえか!大体、超高温でも燃やさなきゃ取り出せなかったんじゃないのかよ!!」
「それはあくまで取り出す方法の1つって言ったでしょ?私にかかればこれくらいちょろいわよ。それに、無駄死ににはならないわ。絶対に助け出すんでしょ?」
の言葉に勢いのついていた一護はぐっと押し黙った。
確かに自分達は絶対にルキアを助け出すと先程誓ったばかりなのだから、ルキアが無駄死にになるようなことなどあるはずがない。
否、そういう結果にしてはいけないと一護は改めて心に誓った。
そんな中、ふと雨竜が密かな疑問を口にした。
「そういえばさん・・・・・どうして、朽木さんが極刑になるなんてこと・・・」
「ん?ああ・・・ちょっと黒いのが調べてくれてね。まあ、それ以来また音沙汰がないけど・・・」
「・・・黒いの?」
「この間、様と一緒に黒崎さん達を助けてくださった方ですよ」
浦原の言葉に一護は思い出して、「ああ・・」と短く声を漏らした。
正確には暴走していたを止めに現れたのであろうその人物を思い出しながら、ふと一護は彼の名前など聞いていなかった事を思い出した。
そして思い出したついでに一護が聞いてみようと口を開きかけた時には、既に一同は先程の話題から外れ、浦原から穿界門の説明を聞いていた。
そのため一護は、今聞かなくてもいいだろうという結論に達し、他の面々と一緒に穿界門についての説明を聞くことにした。
そして一通りの説明を聞き終え、出発しようとした矢先に、またが声を上げた。
「ところで喜助〜〜」
「はい?なんでしょう?」
「あんたさ〜〜・・・まさか、ここに残るつもりでいるんじゃないわよね?」
最初に声をかけられ、浦原はなんだか嫌な予感がしたが、案の定というような内容をが口にする。
「・・様・・・私・・・門くぐれないんですけど・・・」
「でも、責任はちゃんと感じてるんでしょ?」
「そりゃあ・・勿論・・・」
「・・なら、良いわよね」
浦原の真剣な言葉を聞くと、はにっこりと笑って浦原の胸の辺りに手を置いた。
そして次の瞬間、浦原の中から何かが抜けていくような感覚がした。
「・・様・・・今の・・・」
「はいっ!これで、あんた尸魂界に帰れるようになったわよ」
そう言って再度笑うに、浦原は複雑そうな表情をしながら慌てる。
「ちょっ・・様!」
「何よ?嬉しくないの?」
「そりゃあ、嬉しくないといえば嘘な方ですけど・・・でも・・・」
「はい、問答無用!私が良いって言ってるんだから追放罪なんてどうでもいいの!んなことより行くわよ!」
無茶苦茶な事を言って真っ先に門へと足を踏み入れたのいた場所を呆然と見つめていた浦原に、夜一は軽く溜息をつきながら言葉を零した。
「諦めろ・・様はああなってはこちらの聞く耳など一切もたれん」
「・・・そうっすね」
そしてやはり少々複雑な心境を抱えながらも、浦原は覚悟を決めて夜一と共に達の後を追ったのだった。










「ぷうっ!だいじょうぶ!?みんな!」
穿界門に入り断界を抜けて尸魂界に到着した一同の中から、最初にそう声を上げたのは織姫だった。
しかしまともに返事を返してくるものはいなかった。
何故なら、断界を抜ける際、拘突に終われて捕まりそうになったところを、織姫が三天結盾で防いだため、その時の衝撃で全員弾き飛ばされる形で尸魂界に落ちたからだ。
そのため、まともに着地できているのは織姫ただ1人だった。
否、よく見てみればもう1人何故か無事に到着できていた人物がいた。
「うん。大丈夫よ。織姫〜〜。あんがとね〜〜」
「ありがとうじゃありません!」
呑気に織姫にが礼を言うのとは全くの正反対に、夜一は怒りの声を上げて織姫の目に頭突きを食らわす。
そのあまりの痛さに織姫が声がだせないまま、目を抑えている間も夜一は怒りの声を上げ続ける。
「おぬし儂の話を聞いておらんかったのか!?拘突に触れたのが盾部分だったからよかったものの・・・六花本体が触れておったらおぬしの命はなかったぞ!!」
「・・・ご・・ごめんなさい・・・」
「いいじゃねえか、そんな怒んなくても!結果的に井上のおかげで全員無キズだったんだし!」
「そうそう」
「一護・・おぬし事の重大さがわからぬようじゃな・・・それに様・・・貴女も貴女です・!貴女ならあの状況を・・・」
「夜一さん!夜一さん!!」
まだ少し怒り覚めやらぬといった様子で夜一が口走りそうになったことに浦原が名前を呼んで待ったをかけた。
その浦原の呼びかけにはっとした夜一は、自分が口走りそうになった事を慌てて飲み込んだ。
2人のその妙なやりとりに一同が不思議そうに思う中、雨竜がなにやら考え込むような表情をしているのに茶渡が気づいた。
「・・どうした?石田」
「いや・・・そういえば・・断界を走っていた時・・・何故か拘流はさんだけは避けるようにしていたような・・・・・」
「・・なにっ?」
「・・・僕の気のせいかもしれないけど」
「わかった!あっちが死神達の住んでる、ナントカって街だな?」
石田と茶渡の会話は、夜一から一通りこの場所の説明を受け、瀞霊廷を発見した一護の声によって中断させられてしまう。
そして1人先走る一護の後を慌てて夜一が止めようと声をあげた時、空の上から何枚もの壁のようなものが降ってきて、あっという間に流魂街と瀞霊廷を隔離してしまった。
「・・・久しぶりだあ・・・通廷証もなすにごの瀞霊門をくぐろうどすだ奴は・・・」
そう言って現れた巨体の男に一同が目を見張る中、は誰にも聞こえない声でぽつりと呟いた。
「・・・本当に久しぶりね・・・・・私が作ったこの門を見るのは・・・・・・」
しかし当然そんな言葉は届いていない一同は目の前の門番と名乗った人物とやり取りを交わしている。
そしていつの間にか一護と門番・ジ丹坊ととの一騎打ちが決まり、全員が慌てる中、はなにやら少し考えると一同に向かってあっさりと告げた。
「・・いいんじゃない?一騎打ちさせても」
さん!?」
のあまりにもさらりとしたその発言に、まず最初に驚いて声を上げたのは雨竜だった。
「で、でもでも!あんな大きな人・・・」
雨竜に続いて織姫も慌てて声を上げるが、それでもはあっさりとしたものだった。
「大丈夫だって。あれくらいなら今の一護なら十分勝てるわよ。ね、喜助」
「・・そうっすね。今の黒崎さんなら大丈夫でしょ」
に続いて浦原まで告げたそのあっさりとした発言に、夜一もしょうがないといったように溜息を零した。
その様子を見て、他の3名は本当に一護1人に任せるしかなくなったということを瞬時に悟り、多少呆然としていた。
そんな中、またポツリと一言呟いた。
「・・にしても・・代々の門番って・・・なんでああデカイのばかりが選出されるのかしら・・・」
その言葉を聞き取れたのは夜一と喜助の2人のみで、2人はその言葉にどこか複雑そうな笑いを零していた。











一護とジ丹坊との戦闘はと浦原の言った通り、無事一護の勝利という形で幕を閉じた。
しかも何故か一護はジ丹坊に友好的に見られるという快挙まで成し遂げ、一同は無事白道門の通行を許可された。
そしてジ丹坊が自ら門を押し上げ開いてくれていたその時、途中でぴたりと止まったジ丹坊の動きに一同が不思議そうに目を向ける。
するとジ丹坊はみるみるうちに恐怖に引き攣ったような表情になり、ある一点を凝視して声を上げていた。
その方向に一護達も目をやれば、そこには見知らぬ1人の死神が佇んでいた。
しかし夜一と浦原の2人には良く知った顔で、2人のうち浦原の方は慌てて顔を隠して見せた。
「誰だ?」
一護の短いその声に、ジ丹坊は声を震わせながらその答えを告げた。
「さ・・・三番隊隊長・・・市丸ギン・・・」
「あァ。こらあかん」
そう言って市丸が刀に手をかけたのが見えたのは3人だけだった。
1人は夜一、もう1人は浦原、そして最後の1人は、その刀が完全に振り切られる前に動き、ジ丹坊の腕が切り落とされる前にその攻撃を防いでいた。
あまりの突然の事態に一護達は当然驚いたが、市丸の方もまさか攻撃を防がれるとは思えず、攻撃を防いだ張本人であるを凝視していた。
「・・・・へ〜〜、よく防げたな。君、凄いなァ」
「それはどうも・・・でも、いきなり人の腕切り落とそうなんて、いい神経してるわね」
「そいつはどうも」
当然睨むのそれは誉め言葉ではないのだが、市丸は面白そうにその言葉に乗ってくる。
そんな中、の横をすり抜けいきなり市丸に斬りかかっていく人物がいた。
「なんてことしようとしやがんだ、この野郎!」
そう言って勢いよく相手に斬月を向ける怖いもの知らずの一護に、市丸の実力を知る夜一と浦原は顔を引き攣らせていた。
しかし全くそんなことには気づかない一護はさらに勢いよく言葉を続けた。
「ジ丹坊と俺たちの間でもう勝負はついてんだよ!それを後から出てきてちょっかい出そうとしやがって、このキツネ野郎!」
「・・・・・」
がなんとか防いだから良かったものの・・・来いよ。そんなにやりたきゃ俺が相手にしてやる。武器も持ってねえ奴に平気で斬りかかろうとするクソ野郎は・・・・俺が斬る」
その一護の言動に興味を示したのか、市丸は面白そうに笑って口を開く。
「おもろい子やな。ボクが怖ないんか?」
「ぜんぜ・・・」
「コラーーー!もう止せ、一護!!ここはひとまず退くのじゃ!!」
夜一のその言葉に反応して一護は瞬時に後ろを振り返って抗議の声を上げる。
しかし夜一のその声に反応したのは呼ばれた当の一護だけではなかった。
夜一の言葉を聞いた瞬間、市丸も何か思うところがあるのか少し考え込んでいるようだった。
そしてがその様子を不信そうな目で見ていると、市丸は不意に声を漏らした。
「・・・キミが黒崎一護か」
「!知ってんのか、俺のこと?」
まさか自分を知っている死神があの時ルキアを連れて行った2人以外にもいるとは思っても見なかった一護は少し驚いてその問いに反応する。
そしてそれで何かに納得した様子の市丸は、後ろを向いて何故か一護から距離をとり始める。
それを不思議そうに見ていた一護に対し、市丸は背を向けたまま1本の短い脇差程度の長さの刀を手に取った。
「何する気だよ。そんな離れて?その脇差でも投げるのか?」
「脇差やない。これが僕の斬魄刀や」
そう言って構えに入る市丸を見て、未だ意図が汲み取れない一護とは対象に、は彼が何をしようとしているのか気づいた。
「射殺せ『神鎗』」
「一護!斬月を前で構えて!」
「えっ・・・?!」
の叫びにとっさにそのように一護が行動した次の瞬間、襲ってきた強烈な一撃で一護は後ろにいたジ丹坊共々門の外に吹き飛ばされてしまう。
そしてその後を追って門の外に出たは、一護が無事である事を確認した後、門の方を振り返る。
「しまった!!門が下りる・・・っ!!」
夜一の焦ったようにそう叫ぶと、は厳しい目で門を見つめながら一言叫んだ。
「止まれ!!」
が何を言ったのかその時誰にも理解は出来なかった。
しかし次の瞬間、物凄い勢いで下りてきていた門がの言葉通りぴたりと止まったその事実に、一同は大きく目を見開いて驚いていた。
無論、こんなことは前代未聞であるから、門の内にいる市丸も同様である。
一同が呆然としている間、は瞬時に一護、織姫、雨竜、茶渡の4人のそれぞれの服の端をいきなり掴み、続いて早口で夜一と喜助に告げた、
「あんた達は予定通り、空鶴と接触してから着なさい。私たちは先に行くわ」
様?!」
の突然の言葉に驚いて夜一が声をあげた時には、既にそこにと他4名の姿はなく、次にその姿を捉えることが出来たのは彼女が瞬歩で一気に辿り着いた市丸のすぐ傍だった。
そのの接近にはっとした市丸は、瞬時に神鎗を振るおうとした。
「・・・神鎗・・あんたはちょっとの間、眠ってなさい」
がそう一言告げるだけで、何故か市丸の持つ神鎗は解放できず、それどころか少し重くなったように感じられた。
まるで今まで使ってきた自分の斬魄刀が、自分のものではないかのように。
「なんや・・これ・・・?」
市丸が不可思議な現象に反射的に眉を寄せたその一瞬の間に、は今度は門の方に向かって声を上げた。
「閉じろ!」
のその言葉と共にぴたりと止まっていた門は、今度こそ最後まで下りきり、完全に流魂街と瀞霊廷を再び隔離した。
その事態にはっとして市丸が先程までがいた場所を見ると、そこには既に彼女はおらず、目線を移動して捜してみると一件の建物の屋根の上にいた。
そして勝ち誇ったかのように笑むと市丸に向かって口を開いた。
「じゃあ、私たちは行かせて貰うわね。行っておくけど、追いつこうとしても無駄だから。それと・・・その斬魄刀、今日丸1日は使い物にならないから。じゃね」
そう言って手をひらひら振ると、はまだ4人の服の端を掴み、引っ張るような形で4人を連れてその場から一瞬で姿を消していた。
「・・・なんなんや・・・あの子・・・・・」
本当に沈黙してしまった自分の斬魄刀を片手に、市丸は得体の知れない少女の存在と、彼等に侵入を許してしまった事態に、複雑そうな表情をしてそうぽつりと呟いたのだった。










あとがき

ひさしぶりの四宝神刀でしたが・・・
色々すっ飛ばしてるところがあってもうしわけありません!
今回は市丸隊長ファンに激しく謝罪・・・・・・;;
Ifはもし浦原さんが一緒についてきてたらと、あのまま門から瀞霊廷に突入できてたらでした。
そして更に深まる主人公の正体。(一心さんは気づいたようですが・・・)
『崩玉』は取り出せるわ、門を自在に開閉でいるわ(実は)、斬魄刀は沈黙させれるわ・・・
なんでもありですな・・・状態・・・;
主人公がルキアから『崩玉』を取り出した方法は、藍染隊長がやった方法とは違います。
主人公ルキアと会った瞬間に『崩玉』のことを見抜き、あんなもん危ないからとルキアが寝ている隙に取り出し、ずっと自分が持ち歩いていました。
その際、なにやらかしたんだと浦原さんは主人公にきつくお叱りを受けたのは余談です・・・;
今回まったく作中に出せなかったたつきに関しては話の中には入ってませんでしたが、まだ尸魂界にこれるレベルじゃないので留守番を言い渡されたためです。
ちなみに極刑についての説明の時、主人公が双極を悩んだ末武器と説明したのは、処刑道具なんぞというと、とある人物が大変怒り狂うからです。
次回はその人物・・・通称赤いの(笑)ともう1人、青いの(笑)も触り程度くらい出したいと思ってます。
・・・で、結局今回黒いの(笑)は話題だけで、やっぱり出せませんでした;;


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