ドリーム小説
四宝神刀 六




その日、部屋の中に黒猫の姿はなかった。
「あれ?夜一さん、いないけどどうかした?」
「んっとね、なんか昨日からいないみたい」
「そうなの?さん」
「そうそう。なんか、知り合いのところに行ってくるって言ってたわ」
の言葉を聞いて2人が連想した夜一の知り合いは、まるで当然とでもいうように猫だった。
しかしは夜一が誰に会いに行ったのか知っていた。
自分にさえ何も言わずに出て行ったが、それはあくまで行き先を言わなくても解る場所だからだ。
まず間違いないなく夜一は浦原の所に足を運んでいる。
何をしに行ったのかもすでに予想がついている。
前回の虚大量出現、及び大虚の出現のおりに、虫の姿に似せた隠密機動の監視道具をジン太が見つけたと浦原から聞いた。
監視道具自体はジン太がその場で叩き潰して破壊したらしいが、まず間違いなくそれまでの大騒動の件が尸魂界側に伝わっているのは間違いない。
虚が大量出現した。
大虚が出現した。
それだけでも驚くべき情報であるのに、それを撃退したのが死神の姿をした見知らぬ少年とあっては、尸魂界の上層部の関心を引かないわけがない。
そしてそれは確実にルキアの事も伝わっているという事である。
現世への長期滞在及び人間への死神能力の譲渡が重罪ということはも良く知っている。
尸魂界はまず間違いなくルキアを罪人として捕らえにくるだろう。
しかし死神能力の譲渡は力の全ては奪い取られていないし、長期滞在に関してはルキアにとっても完全な不可抗力。
それに幾ら掟に背いたとはいえ、人の命を助けようと行動した行為が罪になるのはおかしいとは思っている。
確かに掟は大事かもしれないが、掟以上に命は重いはずである。
その命を掟に縛られず蔑ろにしなかったルキアは、罪人というよりも寧ろ誉め称えられるべきだとは思っている。
「・・それに、個人的な意見を言わせて貰えば・・・・・一護始め黒崎家助けてくれて、凄く感謝してるし・・・」
さん?何か言った?」
「えっ?何も言ってないわよ」
ぽつりと呟いた独り言が微かに織姫達に聞こえていたようで、は平静を装いながらも内心慌ててとぼけて見せた。
そのに織姫とたつきは一瞬不思議そうな表情をしたが、それ以上追求する気はないのか後は何も言ってはこなかった。
目線を自分からはずした2人には安心し、先程の問題に思考を戻した。
命が重いというのはの中で当然の考えである。
しかし尸魂界の融通の利かない上層部はそれを掟に固執するあまりそれを良しとはしない。
自分が正体を暴露して止めに入れば、ルキアの罪は完全に帳消しになるだろうが、そんな事をすれば尸魂界に帰還し暫くはあちらに留まることになってしまう。
としてはできればまだ暫くは現世にいたい事情がある。
もっとも自分もルキアと同じで、前回無茶な事をしたせいで『彼等』に確実に居場所がばれたであろうから、連れ戻す算段をされているのは目に見えている。
なんとかしてルキアと自分、2人ともがあちらに強制送還という事態にならないように出来ないかと、が悩んでいたその時だった。
良く知った霊圧と、知らない霊圧がぶつかり合っているのを。
そして双方の霊圧の現在の質や数からして、まず間違いなく負けてしまうであろう方も。
「・・・・・織姫、たつき」
「どうかした?さん」
「悪いけど私ちょっと散歩行ってくるわ」
の突然の発言に、織姫もたつきも多少呆けた表情をした。
「たつき、今日は泊まっていくでしょ?」
「まあ・・・一応、そのつもり」
「じゃあ、今日は夜一もいないし、霊能力開花の授業はお休みということで。織姫と世間話でもして友情を深めてなさい」
「は〜〜い」
何やら楽しげにそう言うに、織姫も楽しそうに返事をしたが、たつきの方はまだ何がなんだか良く解らないといったようだった。
「いや・・だから、なんでこんな時間に散歩?」
「気分転換よ。気分転換♪じゃ、留守番よろしく〜〜」
は未だ不思議そうにしているたつきと、素直に見送る織姫にそう言って扉を閉めた。
できるだけ明るく、これから自分が本当は何をしにいくのか悟られないように。
そして扉を閉めたはすぐに表情を真剣なものに改め、件の方角に視線をやるとすぐに瞬歩でその場から姿を消していた。













最初に目に入ったのは、傷を負い、血まみれになりがらも、未だ立って戦っている一護が、いきなり斬魄刀の刀身を斬りおとされている姿だった。
その光景に大きく目を見開いたは、次に何が起こるのかをすぐさま察し、速度を更に速めて一護に近づき、他の者や一護自身も気づかないうちに、一護の腕を引いてその場から離れていた。
一護が先程まで立っていたその場所に、刃が振り下ろされようとしたのはその刹那の後だった。
一護に向かって刃を振り下ろそうとしたその人物は、手ごたえが全くなかった事と、一護の姿が何時の間にかその場から消えていたことに驚いて目を見開いている。
それはその場にいる他の者達も同じだったようで、暫く呆然として一護が先程まで立っていた所を見ていると、ほぼ3人が同時に先程まで一護が立っていたところから離れた場所、現在一護との2人が立っているそちらに目線を移した。
っ!」
!!」
の姿を目にして、最初に反応したのは彼女を知っている一護とルキアだった。
しかしは何時もの明るい様子で返事はせず、とても申し訳なさそうな顔を一護に向けた。
「・・ごめん一護。少し、遅かったわ」
・・・」
ただそう言ってはすぐ近くに倒れこんでいた雨竜に目をやり、彼の傍に寄ると雨竜の身体に手を当て、一護が始めて死神になったあの夜、一護の傷を治した時と同じように一瞬で雨竜の傷を癒した。
その光景を始めて目にする阿散井と白哉は驚いていた。
「治癒霊力?!普通は四番隊の連中しかもってないはずじゃ・・・」
「いや・・・違う・・・」
「隊長・・・?」
「あれは・・・見たところ、そのような単純なものではない」
雨竜の傷を治したの手法を、白哉は怪訝な表情をしながらそう判断した。
そして同時にが只者ではないであろう事を悟った。
「貴様・・・何者だ?」
「・・・・・あんた、さっきなにしようとした?」
の正体を尋ねた白哉に対し、まるでその言葉を聞いていなかったかのように、は逆に白哉に対して尋ねていた。
その時のの目は先程までとは違い、完全に冷たいものに変わっていた。
その目を見た瞬間、一護とルキアはグランドフィッシャーの時の事を思い出した。
今目の前にいるは、まさしくその時のとほぼ同じだった。
そしてその目に、さすがの白哉と阿散井も少なからず恐怖を憶えていた。
「なんだよ・・こいつ・・・・・」
「で、一護や雨竜にここまで怪我させてくれたのは、どっち?・・それとも両方?」
のその言葉に一瞬微動だにできなかった阿散井だったが、我に返ってすぐに「自分だ」と言おうとした時だった。
何時の間にかに蹴り上げられいたのは。
何が起こったのか解らないまま壁に勢いよくぶつかった阿散井に、全員が呆然として目線を送っていると、の怒りの混じった静かな声が聞こえた。
「私・・・今、あまり気が長くないから・・・・・・」
「貴様・・・・・」
「・・今すぐ私達の目の前から消えて、ルキアの罪を撤回して、2度とルキアを追ってこなければ・・・見逃してあげるけど・・・・・」
が全ての言葉を言い終わるよりも早く、白哉は一瞬のうちに動いていた。
元々の意見を受け入れる気どころか、その言葉をまともに聞く気のない白哉は、すぐに動いての背後を取っていた。
「いけません!兄様!!」
しかしルキアの叫び声と共に、その場に倒れこんだのは白哉の方だった。
何が起こったのか理解できていない白哉はその場に倒れこみ、追い討ちをかけるようにの蹴りが入り、阿散井と同じように壁に身体を叩きつけられた。
「兄様・・・!」
「そう・・あんたが、ルキアの兄なの?」
自分を捕まえに来たとはいえ、一方的にやられる義兄を心配そうにするルキアだったが、はそれでも容赦しないというような素振りで口を開いた。
「それなに、妹を罪人として捕まえに来たの・・・?」
「・・・っ、関係・・ない。罪人であるなら・・・捕らえられねば・・・」
「・・・・・随分と、思慕にかけてるのね・・・・・今の朽木の当主は・・・」
「なっ・・・」
が呟いたその一言に、白哉とルキアは何か違和感を感じた。
しかしその違和感がなんなのか気づかけぬまま、はより冷たい目線を白哉に向け口を開いた。
「良く解ったわ。自分の妹がどれだけ誇られるべき事をしたか理解できない奴は徹底的に叩き潰してやる・・・」
「兄様・・・逃げてください!」
はっとしたルキアが悲痛な声を上げたが、思った以上の傷を受けた白哉は思ったように身体を動かすことが出来ず、その場から動けずにが攻撃をしかけた。
しかしの攻撃は当たらなかった。
白哉が避けたわけでも、誰かが彼を庇ったわけでも、ましてやが攻撃をわざとはずしたわけでもない。
が白哉を攻撃することが出来なかったのだ。
直接攻撃をしようとして予想外のことで失敗した彼女は驚き、ゆっくりと自分を羽交い絞めにして攻撃をさせなかった人物を見上げた。
そしてその人物はを見下ろしながら一言呟いた。
「・・さすがにこれはやりすぎだ」
「っ、あんた・・・」
を羽交い絞めにしている人物に、白哉や阿散井はもちろん、一護もルキアも見覚えはない。
しかしはその人物を良く知っていた。
グランドフィッシャーが現れたその同じ日に、グランドフィッシャーが現れるよりも前に、が1人のところに現れて幾らか話をしていた、が後日夜一に「会った」と言い、「黒いの」と表現したその人物だった。
予想外の人物の登場に、も暫く呆然としていたが、やがて未だ捕まっている身体をばたばたと暴れさせ始めた。
「ちょっ・・・離して!離しなさい!!」
叫んで暴れるが彼の手をは一向に振りほどけなかった。
暫く思うように暴れて冷静さを欠いていただったが、少し冷静さを取り戻し、彼の手に霊力が集まっていることに気づき、彼独自のなんらかの術を発動されていることに気づき、小さ舌打ちをした。
その様子に彼は軽く溜息を漏らすと、白哉と阿散井を交互に見つめ、最終的に白哉に視線を固定すると口を開いた。
「・・連れて行くなら早く行け。こっちも何時までも押さえておくことは出来ないからな」
「なっ!」
「ちょっと待て!」
彼の口にした発言にはもちろん、それまで呆然と事の成り行きを見ていた一護も反応して声を上げる。
「勝手な事言うな!いきなり出てきて誰だかしらねーけど・・・ルキアは連れて・・」
怒鳴り続けていた一護は突然起こった自分の身体の異変に気がついた。
動かそうと頭では思っているのに、逆に身体が何かに縛られているように動かなくなっているのだ。
その一護を見て一瞬目を見開いたは、すぐに自分を取り押さえ続けている彼を睨みつけた。
「あんたっ!」
「・っ・・てめー、一体何した?!」
の言動で一護は自分の身体が動かなくなった原因が彼である事に気づき、なんとか身体を動かそうとしながら彼に怒りを含んだ声で尋ねた。
「・・・ただの縛道だ」
「なっ・・!?」
静かにそう告げた彼の言葉に、今度はルキア、阿散井、白哉の3人がまともに驚いていた。
鬼道には通常発動に詠唱が必要になってくるが、卓越したものになってくれば多少威力は落ちるが、詠唱破棄での発動も可能になってくる。
しかし詠唱破棄はともかく、その術名まで削除して発動したという例は、今までに全く前例がない。
ルキアは以前、が術の正式名称を告げず、術番のみで発動したのを見たことがある。
それさえも前例のない、極めて異質な発動である。
だが目の前にいる彼はそれどころの問題ではない。
詠唱破棄、術名破棄、術番破棄・・・
鬼道を行使する際に口にする全てを省き、文字通り念じるだけ発動させたと見ていい。
そんなレベルの鬼道の行使はありえるはずがない。
の異常なまでの瞬歩の速さにしろ、今の彼のでたらめな鬼道の発動法にしろ、本当に一体何者なのかと誰もが思っている中、が彼を更に鋭い目で睨みつけた。
「あんた・・・一護に縛道かけるとは良い度胸ね・・・」
のその言葉に彼は軽く溜息をついた。
「・・あの子供や、その家族への思い入れは、この間会った時に聞いて良く解っているが・・・」
「じゃあ・・かけるな。それから、ルキアは・・・・・」
「どの道、ここでこいつらを叩きのめしたところで、尸魂界がまた新手を送り込んでくるだけだ。その次を倒しても、また次・・・また次・・・・・きりがないだろう」
「それは・・・・・・」
「だったら・・まとめて片付けた方が楽だろ?」
彼のその発言ではそれがどういう意味を察し、彼がどういうつもりで自分を止めたのかを察して、それまで見せていた抵抗を一切止めた。
「なるほどねえ・・・よーく解ったわ」
!」
「・・・一護、こいつの言う通りにしましょ」
「けどっ・・・」
「ようは、処刑させなきゃ良いのよ。ついでに、ルキアにかけられた罪全部帳消しにしてね。あ〜〜、なんか調子戻ってきたわ」
本人が言った通り、先程まであった彼女の鬼気迫るような雰囲気はすでになく、普段の彼女そのものの調子に戻ってきていた。
そしてが言った前半の言葉に、一護も何も言えずたっだ呆然としていた。
「・・というけで、ルキア。悪いけど、ちょっと我慢してあっちに戻って。すぐに助けに行くから」
「助け・・」
「にくるな。なんて言うんじゃないわよ。あんたがどう言おうと、こっちは勝手に動くから」
ルキアの言おうとした事を先読みしたは、自身に満ちた表情で笑うとはっきりとそう告げた。
そののある意味調子の良い様子を見て軽く溜息をつくと、彼は白哉に向き直って口を開いた。
「・・・むこうに帰ったら、清流門と朱圭門・・どちらの門番でも良い・・・・・伝えてくれ」
「・・・なに?」
「『俺達は直に帰る。わざわざそっちから連れ戻しに来なくて大丈夫だ』・・・あいつらには、そう言えば解るはずだ」
彼の言った事に白哉はただ怪訝な表情をし、何の返事をすることもなかった。
しかしおそらく大丈夫だろうと、根拠のない確信を彼は感じていた。
それから後はとても静かに事が流れ、ルキアが阿散井と白哉に連れられ、尸魂界へ帰って行く様子を、3人はただ黙って見守っていた。



穿界門が閉じて3人の姿が完全に消えたのを確認すると、は軽く息を吐いて彼をじと目で見つめた。
「・・・で、何時まで私は取り押さえられてればいいのよ?」
「・・・・・放したら何されるか解らないからな」
そう言って彼が目線を逸らすと、小さく舌打ちが聞こえたところから、どうやら本当に何かしようとしていたらしい。
「・・解ったわよ。何もしないから、いい加減放しなさいよ」
「解った・・・」
の仕方がないといった発言に、彼は軽く溜息をついてを放した。
「で、なんであんたはここにいるの?」
「お前、無茶やっただろう?」
彼のその言葉に今度はが気まずそうに視線を逸らした。
しかし彼はその反応にもお構いなしに説明を続ける。
「それで事情を聞こうとこの街に着てみれば・・・ああいう状態に遭遇したから止めに入ったんだ」
「・・なるほど」
「なるほどじゃない。あれはかなりやりすぎだ。もう少し自分の立場を考えて自重しろ」
「いや・・・まあ、なんというか・・・・・一護殺されそうになって頭に血が上って・・・」
「・・・本当に気に入った相手にはとことん肩入れするな」
少し呆れた様子で彼がそう告げると、本当に反省しているのか、は何も反論できないまま彼の言葉を聞いていた。
「まあ、あの朽木の当主がやりすぎだったというのも解る。命令遂行のためとはいえ、関係ない相手にも殺しが許されて良いという理屈は違うだろ」
そう言うと彼は一護とまだ気絶している雨竜の姿を視界に捉えた。
その視線に気づいた一護は、先程から思っていた事を口にした。
「あんた・・・誰だよ?」
「・・・・・・」
「さっきのあんたとのやり取りから2人が知り合いだって事は解った。けど・・・」
「こいつの同類だ」
一護の質問に彼はただそう短く答えた。
しかし当然それだけでは一護が納得するわけがなかった。
「同類って・・・・・」
「同類は同類だ。それに生憎、あれは名乗りたくても名前がないからな」
「名前が・・ない」
「ああ・・いや、正確な名前はあるんだ。しかし、現世で人間としての名前をこいつと違って考えていないから・・・名乗りたくても名乗れないといったところだ」
「正式な名前・・名乗るとちょっと厄介だもんね。私達・・・」
そう言って顔を見合わせる2人に、一護はますます訳が解らないといった様子だった。
その一護の様子には苦笑した後、すぐに手をぱんっと1度だけ合図のように叩いた。
「とにかく、一護。今後は、ルキア奪還のために動くわよ。尸魂界側のルキアを処刑しようて気を根こそぎぶち壊してね・・・・・そのために、しぶしぶルキアを帰しちゃったんだから」
「お、おう・・・」
「じゃ、そうと決まれば・・・喜助〜〜、そこにいるんでしょ?」
にっこりと笑ったがそう声を上げて言うと、すぐに後ろの方からひょっこりと浦原が姿を現した。
そして浦原は冷汗を流し、少し気まずそうにしながら口を開いた。
「あ〜〜・・バレてました?」
「バレバレ」
の口調は非常に楽しそうであるが、目が笑っていないことから彼女の言わんとしていることが良く解る。
これはまた後で絶対に何か怒られると浦原は内心焦りながら悟っていた。
「んじゃ、悪いけど。雨竜と一護をあんたんちまで連行!」
「えっ!ちょ・・?!」
の突然の発言に一護は心底訳が解らないといった様子だった。
「死神としての能力を上げるなら、こいつ結構良い講師よ。とりあえず、こいつに習ってみなさいって」
「んな、勝手に・・・」
「はい。問答無用!強制連行」
がそう告げると、一護は浦原と共にきていたテッサイによって、雨竜共々抱えられて強制的に浦原商店に連れて行かれた。
その際、彼が発した叫び声は、当然とは言えるが、近所迷惑なほどに大きいものだった。
「じゃ、じゃあ・・・様。あたしも、これで・・・」
「うん。くれぐれも、一護のことよろしく〜〜」
そう言ったの表情はとても良い笑顔だったが、目だけが明らかに物語っていた。
『修行とはいえ、一護に万が一があったら、はったおすぞ』と。
その意思をしっかりと読み取った浦原は、内心激しい恐怖に駆られながら、その場を少し足早に後にした。
その際、彼の目の前を通りすぎる時、何故か丁重に頭を下げた。
哀愁の漂う浦原の背中が少し離れると、それを見送っていた彼がぽつりと告げた。
「・・・あれは哀れだと思うが?」
「そう・・・?」
まるで気にしていないの様子に彼は溜息をついた。
そんな彼の様子にすらまったく気にした様子はなく、はわざとらしく話題を変えた。
「あ〜〜・・それにしても、本当に帰らなきゃいけなくなったわね〜〜〜〜」
「仕方がないだろ」
「そりゃあ、私の事情よりもルキアの命が大切だけど・・・もう暫くはこっちにいたかったわよ・・・」
「ある意味自業自得だろ。どの道、あいつ等には、居場所バレるような事しでかしたのだから」
「うっ・・・ごもっともで・・・」
痛いところを疲れては顔を引き攣らせた。
それは自分のせいで彼まで巻き添えを食ったという含みも悟ったためである。
「・・にしても、あの朽木の当主に頼んだ伝言。あれ、門番宛じゃないでしょ?」
「当然だ・・・俺達と門番に直接の繋がりなどないだろ」
「ま、門のとこで言えばあいつ等にも聞こえるでしょうしね」
そう言い合った後、2人はタイミングよく同時に溜息をついた。
「・・とりあえず、色々と気が重いわ」
何が、とはあえてはこの時口にすることはなかった。












あとがき

1番無茶なのは毎度のことながら私の終わらせ方ですね・・・
今回更に無茶苦茶で申し訳ありません;
そして六番隊ファンの皆様、さらに申し訳ありません;
なんだか本サイトではけっこう踏んだり蹴ったりな役回りの多い2人です・・;
でも管理人、この2人好きですから。
特に白哉兄さんは、ルキアに真相話した辺りから株が急上昇してますので。
4話で登場させた謎の人物が早くも再登場です。
次回出るかは不明ですが(えっ)
書く時に大変だから、早く名前明かしたい気分です・・・







BACK        NEXT