Rehabilitation
3:ウィンリィ




ある日、中央にウィンリィが遊びに来た。
それ自体はなんら問題はないことなのである。
ましてやホークアイの家に遊びに来たことも問題ではない。
しかし問題はその先にあった。
ちょうどホークアイに服を選別してもらうため、彼女の家にきていたエドは電話に出ていたホークアイが「人を迎えに行くから少し待っていてね」と言われ、それなら自分は帰ったほうがいいのではないのかと言おうとすると、ホークアイはそれを察したように、「遠慮しないで待ってて」と言われ、大人しくそのままホークアイの家で待っていた。
そして帰ってきた彼女が連れてきたのは、驚いたことに自分がよく見知った幼馴染。
そしてすぐさま有無を言わせず、2人がかりでエドを着替えさせたウィンリィとホークアイに強制的に引きずられて買い物に出た。
今まであまり縁がなかった女性物専用の店に。



店内に入ってからエドはずっと緊張のしどうしだった。
それも無理はない。
エドは旅をしていたときはずっと男物を着、男のように振舞ってきていた。
最近になってようやく女物を着たり、女らしく振舞える特訓をしているとはいえ、すべてホークアイの家で仕立ててもらっていたのだ。
こんな店に入ったのはエドにとっては人生初である。
「それじゃあ、まずは下着からいきましょうか」
「そうですね」
「ええっ?!」
本人を差し置いて楽しそうに話を進める2人に、エドは思いっきり慌てた。
そして未だ自分の置かれている状況を理解できないというように2人に尋ねてみる。
「これは・・・どういうこと?」
「そんなの、あんたの必要品の買い物に決まってるじゃない」
「いつまでも私のお下がりばかりじゃいけないからね」
「いや・・・別に俺は今のままでも・・・・・」
「「だめ」」
2人同時に却下の言葉を下され、エドは反論する気力をなくしてしまう。
それと同時に徒党を組んでしまっている今の2人に逆らってはいけないと本能で察していた。
「それじゃあ、いきましょうか。ここのお店は品揃いがかなり良いのよ」
「わぁ〜〜楽しみ」
品物を買い揃える対象である自分よりも、連れてきた2人の方がやけに楽しそうなことに、エドは今回の買い物に一抹の不安を覚えていた。









下着を買うにあたってまずはスリーサイズを測らされた。
以前ホークアイの家で測らされたことがあるのだが、今回改めてきちんと測っておいた方が良いということで、半ば強制的に店員に測られることとなった。
そしてそれが終わってすぐに本題スタートである。
「リザさん。これなんてどうですか?」
「あら、可愛い。エドワードくん、ちょっときて」
「・・・・はい」
もはやこの店に入ってきた時点でエドの意思などほとんどないと言ってよい。
「それじゃあ、これも買いましょうか」
「はぁ・・・」
「ちょっとエド!今度はあんた1人で買いにくることになるんだから。解ってる?!」
「ええっ!」
ウィンリィの爆弾発言に驚いてエドは思わず声をあげてしまう。
実は未だ男物の時はそれに合わせてエドは男物の下着を着用している。
女物の時はありがたいことにホークアイが調達してきてくれていたのだ。
「でもねエドワードくん。いつまでも私が買出しに行くわけにはいかないのよ」
「リザさんの言う通りよ!これを機に、1人で買い物できるようになりなさい」
普段からあまり頭の上がらない人物が2人がかりでこられたうえ、明らかに正論を言われたのでエドは反論などできない状況だった。
「それじゃあ、下着はこれくらいでいいかしら?」
「そうですね・・・・・あっ!待ってください。一応勝負下着も買っておかないと」
「・・・勝負下着?」
聞きなれない言葉にエドは眉を顰めて首を傾げる。
するとにやりとウィンリィは意味ありげな、エドにとっては嫌な予感のする笑みを浮かべた。
「それは、後で教えてあげるわよ」
そして購入したあとその意味を知らされたエドが真っ赤な顔でウィンリィに激しく抗議をしたらしい。








次は洋服の購入だった。
大人っぽいものから可愛いものまで、色も多彩に揃えられている店の品揃えに、思わずエドも目を見張る。
いくら長年男のふりをしていたとはいえ、そこはやはりエドも元は女の子である。
さすがに下着は少し抵抗はあったが、普通の服には興味を惹かれるものがあるようだ。
しかしここでもウィンリィとホークアイの勢いは続く。
「普段黒系ばっかだから、ここは思い切って明るい色かも良いかも」
「そうね・・・こっちのスカートなんてどうかしら?」
「あっ、良いですね。それから・・・1着くらいゴスロリ風もどうですか?」
エドは先程から散々2人の着せ替え人形状態になっていた。
それもエドは元が良いためになんでも似合うため、2人は次から次へと服を持ってくるのだ。
そして幾つかの試着が終わった後、ウィンリィが持ってきたその服にエドはぎょっとした。
「な、なんだよそれ?!」
「ゴスロリ」
物凄くフリル等がついているその服一式を持ちながら、ウィンリィは至極楽しそうにエドに向かっていった。
「・・・誰が着るんだ?」
「あんた以外誰がいるの?」
ウィンリィが全てを言い終わるよりも早くエドはその場から逃げ出そうとした。
しかしかちゃっという音に思わず足を止めてしまった。
振り返るとそこには、笑顔で銃口とこちらに向けているホークアイがいた。
「エドワードくん。大人しく試着しましょうね」
「・・・・・・はい」
逆らえるわけもなくエドは大人しく試着室に戻った。
そしてその後も着せ替えは続き、終いには店員まで参加してしまうありさまになっていた。
試着した服はウィンリィとホークアイの独断で全て購入した。
もちろんゴスロリも。








その後もペンダントやイヤリング等の小物も揃え、本日の買い物は終了した。
自分の物を購入したエドがげっそりとしているのとは対称的に、ウィンリィとホークアイの方が満足気な表情をしていた。
「とりあえず、今日買った物は全部私の家に宅配してもらえるようにしておいたからね」
「そりゃどうも・・・」
「あんた、もっとちゃんと御礼言いなさいよ」
ウィンリィにそう諭されたが、エドにとっては今日の買い物はほとんど災難よりである。
「そりゃあ、ホークアイ少佐に会計任せたけど・・・」
「でしょう。あんたリザさんに全部払ってもらってるよ」
「あら、違うわよ」
ホークアイの意外な一言に2人は彼女を見て目を見張った。
今日の買い物は全てエドの物を購入するのだから、エドが全て負担するのだと思っていた。
エド自身もそういうつもりで覚悟を決めていた。
しかしエドのその考えを覆すかのように、ホークアイが今日の全ての会計を1人で行っていたのだ。
さすがにそれでホークアイに負担させたと思っていたエドは、その事に関しては申し訳なさと感謝をしていたのだが。
「大丈夫よ。私達の誰の懐も痛まない所からお金は出てるから」
まるで悪戯を仕掛けたかのように微笑むホークアイだが、エドもウィンリィさえもその言葉の真意はつかめないでいた。
「どうせ後でいい思いするんだから、払わせても罰はあたらないでしょう」
「何かいいました?」
小声で何やら呟いたホークアイに、ウィンリィあ不思議そうに尋ねたが、ホークアイは微笑んだだけで何も言わなかった・



その日、ロイの本来支給されるべき今月分の給料から幾らかが引かれていた。










あとがき

エド初めて女物専門店に行くの巻きでした。
そして今回は手紙はなしです。
っていうか、ウィンリィが合流しましたので、むしろなしの方向で。
今回は物凄くギャグばっかりで行かせてもらいました。
うちではウィンリィとホークアイ姉さんが揃うとあんな感じになります;
ゴスロリはいつか着る日はくるのでしょうか・・・
そして知らないうちにロイは給料ひかれてます;
でもホークアイ姉さんのいう通り、後で自分がおいしい思いできるんですから、良いでしょう。
後2話くらいでこのシリーズ終わりと思います。





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