出会いはいつも、突然訪れる・・・


Enounter of a labyrinth:1



ぽすんと何かが自分の足元にぶつかった気がして後ろを振り返ると、そこには見ず知らずの小さな幼子がいた。
紅い瞳と、その紅の瞳に少し青みを加えたような瞳がぶつかり合う。
視線が交わり数秒の静寂の後に、幼子はにっこりと微笑む。
それにつられて微笑んだ星銀の王女の心境は複雑なものだったが思考はただ一点に絞られていた。
(だれだろう・・・この子・・・・・)



とりあえず、自分の部屋に連れて帰ったものの、どうするべきかいまだに迷っている。
そんなアルマの心知らずな幼子はアルマのベッドの上でその大きな瞳をきょろきょろと動かして部屋の中を興味深そうに見渡している。
「姉上様おられますか?」
「ディア?」
突然、半開きに扉を開けて声をかけてきた義妹に、ノックの音にも気が付かないほど自分が動揺していたことに気が付いた。
その間、幼子を見つけたユーディアが先ほどのアルマと同じように視線を交わらせ、数秒間その思考をとめている。
そして、まともに動揺したように口元を抑え、幼子を指差してこういった。
「・・・まさか、姉上様とトパーズ様の・・隠し子ですか?」
その言葉にアルマもまともにこけそう担ったのを何とか踏みとどまって耐えた。
「あ・・・あのなあ・・・」
「・・・違うのですか?顔の感じとか、トパーズ様にそっくりですから」
どうやらあながち冗談で言っていたのではないユーディアの言葉に多少脱力していたが、彼女が言った言葉にはっとする。
「そ、そういえば・・・」
「では、どこかまた別の奈落の・・・でしょうか?」
そう考えるとつじつまは合うことは合うが、しかしただ1つおかしなことがある。
それは時空移動する時に感じられる波長をここ数日の間感知していない。
この子が別の奈落から来たというのなら、それよりも前に来たことになる。
「姉上様、この子の名前は・・・」
「名前・・・あっ・・・」
そういえば、すっかり動揺していて名前を聞くのすら忘れていた。
アルマは目線を合わせるとじっと幼子を見る。
それに対して、無意識なのだろうが小首を可愛らしく傾げながら幼子もアルマのほうをじっと見つめる。
再びその視線が交わる。
「お前・・・名前は?」
「めりぃのなまえ?」
舌足らずな、幼い子供そのものとも言える口調で言ったその言葉にアルマがこくりと頷くと、ぱああっと明るい満面の笑顔で答えた。
「かめりあ=りとる=ぱすとぅーる。4しゃい。めりぃってよんでくだしゃい」
舌足らずな発音ではあるが、ファミリーネームがパストゥールと確かに言ったことに、アルマとユーディアの2人は顔を見合わせ、互いにこくりと頷く。
「・・・お前は別の奈落から来たんだな?」
「??・・・ならく?」
アルマのその質問にきょとんとした表情を作り、カメリアは良く解らないと訴えかけているようだ。
「奈落・・・じゃ、ないんですか?」
「まさか、天上とか・・・いわないよな?」
このファミリーネームを持ってして、そんな馬鹿なことがあるわけないはずだがとりあえず尋ねてみる。
しかし、それに対してカメリアは首を大きくぶんぶんと振る。
「てんじょうもしらない・・・」
「・・・本当に、知らないのか?」
こくりとただ頷くだけで話に進展はなかった。
これはどうしたものかと、アルマとユーディアは顔を見合わせて溜息をついた。
今まで様々な可能性の世界に生きる王子や王女、あるいはそれに関わる者達に出会ってきたが、奈落や天上を知らないというのは前代未聞のことである。


こんこんっと何かが部屋の窓を叩くような音がした。
何だろう、と思いはしたが、それ以上、別段気にとめることもなく、メリィにさらに質問しようとすると、先ほどよりも早い速度で窓を叩く音がした。
やがて、それは急速に速くなり、休む間もなく叩き続ける。
「ああ!なんだよ?!」
あまりに煩いので、もう我慢できなくなったアルマは、同じく煩さのあまり顔をしかめて耳を塞いでいるユーディアと、何が起こっているのか解らずきょとんと目を見開いて大人しく座ったままのカメリアに見守られながら、その窓を勢いよく開けた。
「誰だよ?!・・・・・っ!」
窓を開けた瞬間そこには誰もおらず、アルマの声がむなしく響き渡った。
いや、誰もいないというのには語弊がある。
人ではない者なら確かにいた。
窓の近くにある樹に止まった1羽の黒紫の鳥。
ふとアルマとその鳥との視線が交じり合う。
「まさか・・・お前じゃない、よな?」
あははっと、鳥相手に自分は何を言っているんだと自問自答しながらも、その鳥をじっと見ていると、鳥はアルマには目もくれずばさりとその翼を翻し、部屋の中に難なく入っていった。
そして、部屋の中・・・カメリアの付近を旋回する。
「らす〜〜v」
その鳥を見た瞬間、メリィが嬉しそうににっこりと微笑む、と同時にその鳥は光に包まれ、次の瞬間現れたのは、1人の少年。
ふうと1つ溜息をつくと、少年は一目散にカメリアに向かって飛びつく。
「メリィ〜〜〜vv無事でよかった〜〜〜。心配したんだぞ!!」
「うにぃvらす」
べたべたといった擬音が似合うほどにカメリアを抱きしめ、頭を撫でるその人物が自分を完全に無視していることを悟り、アルマは頭に血を上らせる。
「ちょっっっとまてぇぇ〜〜〜!!」
その叫び声に、ユーディアもビックと身を強張らせる。
メリィはやはり何も解っていないのか小首を傾げるだけ。
そして・・・あのラスとカメリアに呼ばれた少年は今までのカメリアに対する態度とは180度異なった態度目つきで持ってアルマを見やる。
「なんだよ・・・そういえば、お前・・・・・・さっきはよくもさっさと開けやがらなかったな!窓!!」
「煩い!無礼だぞ、お前!!」
「知るか!第一、お前プラチナみたいな顔して、アレクみたいな性格してんじゃね〜〜よ!!」
「それとこれとは関係ないだろ!第一、お前は何者なんだよ?!」
「名乗ってやる義理はね・・・」
「ちょっと待ってください!」
このままではいつまでたっても不毛は言い争いを続けそうな2人にユーディアが待ったをかける。
それにびっくりしたように言い合いをしていた2人はけんかをぴたりと止めて目を大きく見開いていた。
そして、カメリアはというと・・・
「・・・らす〜〜」
「!!」
ラスはびしっとそのカメリアの様子に固まってしまった。
カメリアはその大きな瞳に大粒の涙をため、ラスの服の裾を握り締めている。
そして、今にも泣き出してしまいそうな声で・・・
「けんか・・・しゅるの?」
「うっ・・・」
「けんか・・・・・だめぇ」
泣いてしまうであろうその寸前のカメリアの様子にラスだけでなく、アルマもユーディアも慌ててしまう。
「め、メリィ・・・別に俺たちはけんかしてるわけじゃないぞ?!」
「・・・本当?」
「そ、そうそう・・・」
今まで言い争いしていた相手と歩調を合わせるのは嫌だが、小さな子を泣かせるわけにはいかないと、必死に歩調を合わせる。
ユーディアもカメリアに見つめられた瞬間こくこくと頷く。
その3人の様子を暫くじっと見てカメリアはにっこりと無邪気な笑顔を浮かべる。
「よかった〜〜v」
ただ純粋な笑顔にほっとしたように3人は胸をなでおろした。
肝心なことはまだ終わってはいないが・・・



「なるほど・・・」
「理解したのかよ・・・」
とりあえず一通りの事情は話はみたが、それはあくまで早々に説明を終わらせるためのもので、そこまで明瞭に話したとはいえない。
それを話を聞いただけですぐに理解できているアルマに、ラスは正直感心していたが・・・
「いや、全然」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
あっさりとしたオチにラスはそのまま後ろに体制を崩し、壁に後頭部をぶつけてしまった。
「大丈夫ですか?」
「らす〜〜?」
ユーディアとカメリアの2人が心配する中、ラスはじと目でアルマの方を見ながら後頭部をさすっている。
「・・・それならそうといえよ」
「俺の勝手だろ?」
はっきりそう言い切られてはラスとしては納得するしかなくなってしまった。
「まあ、それそうだな・・・」
もう1度、先程より詳しく説明しようと考えたラスは、アルマとユーディアからし線を外すと、ちょこんと座って会話をただ聞いているだけのカメリアのほうを見る。
それに対して、「どうしたの?」というように、カメリアは小首を傾げてみせる。
「メリィ、『腕輪』持ってるよな?」
「・・・・・うでわ?」
はじめは何を言われているのか解らないとでもいうように、その大きなひとみをさらに大きくして不思議そうにラスを見ていたカメリアだったが、すぐに思い当たったのかまごつきながらも一生懸命に服のポケットを探りそれを探す。
「んっしょ・・・・・はい♪」
にっこりと笑い、自分にその『腕輪』を渡してくれるカメリアを見るラスの表情はとても幸せそうだったという。
まるでそれが幻だったかのように、ラスは咳払いするとすぐに真剣な表情に戻る。
「これ、時空間を渡る為のアイテムなんだけど」
「ふむふむ」
「メリィが触って、『腕輪』の力が発動して、俺達はこの世界に事故で着たんだ」
「それならなぜ最初、一緒にいなかったのですか?」
「・・・メリィが、『腕輪』の力を誤って発動させた時、俺、慌ててその力の範囲内にぎりぎり入ったから・・・それで、到着地場がずれたんだと思う」
下手をしたら、場所だけでなく時間軸や世界さえも違っていたかもしれない。
「・・・多分、あっちでは今頃、大慌てだろうな」
それを聞き、メリィは瞳に涙をため、申し訳なさそうに沈んでしまう。
「らす〜〜。ごめんね・・・めりぃのしぇいで」
「ああっ!メリィは悪くないからな!!」
よしよしと、必死にメリィをなだめながらもラスは説明を続ける。
「で、問題はここからだ。メリィを探している最中に色々感知したんだが・・・この世界から直接俺達の世界には行けないみたいなんだ」
「どうして?」
「この世界から、俺達の世界への時空間移動の全ての手段が何らかの作用でロックされてるんだ」
「なんらかのって?」
「そこまでわかんねーよ」
尋ねるアルマに自身満々と表現してもいいような動作できっぱりと告げるラスに多少呆れてしまう。
「だってよ。それいちいち探っても時間の無駄だろ?だったら別の手っ取り早い手で行く」
「手っ取り早い手って?」
「この世界からまた別の世界に行き、そこから俺達の世界に戻る」
この世界から帰る道が通行止めなだけで、他の世界に行く道は閉ざされているわけではない。
ラスはそこに目をつけたのだった。
「前に1度行って帰った世界だから、大丈夫だろうし」
前に1度いったことのある世界という言葉にカメリアがぴくりと反応し、ぱああっと明るい笑顔をラスに向ける。
「ひょっとして・・・あいすおにいしゃまたちのところ」
カメリアのその笑顔を見ながら、多少表情を崩しながらもラスは少々複雑そうな表情も作る。
別にあの世界に行くのは良いし、あの世界の住人達に会うのはいいのだが、彼にだけは会いたくないという思いが駆け巡る。
「他の世界って?」
アルマが興味津々に尋ねてくる。
ユーディアも同じように興味がありそうだし、逃げられそうにないのでラスは複雑な心境の中で話す。
「お前達の言う・・・奈落も天上もある世界だな。結構平和なところだな」
ここでラスはあえて、そこにいる人物たちのことは話さなかった。
話すことになるとあの天敵のことまで語らなくてはならないような気がしたからである。
「ふ〜〜ん♪」
ラスの話を楽しそうに聞いているアルマは何かを企んでいるようだったが、それに気がついたのは義妹のユーディアただ1人だった。
「さてと・・・一応、世話になったな。いくか?めり・・・」
「待て」
立ち上がってカメリアを抱き上げようと体制を前かがみにした瞬間、何かに服の裾を掴まれた気がした。
恐る恐る後ろを振り向いてみると、楽しげな、何かたくらんでいるようなアルマの瞳とぶつかった。
「な、なんだよ?」
「俺も連れて行け♪」
楽しげなアルマのその言葉にラスはぴしりと固まってしまった。
「な・・・な・・・・・」
「だってさ、俺いままでいろんな可能性の奈落に言ってるけど・・・メリィが言った『アイス』って奴にはあったことないんだよな」
だから、自分の知らない奈落だろうから、興味あるから連れて行け・・・とアルマは言っているのである。
「・・・あたしも、行ってみたいです」
さらにここでユーディアまでもがアルマに加戦する形となり、ラスは1VS2で不利になってしまった。
が、このまま了承するわけにもいかなかった。
「いくっつっても!向こうに行ったら、とんぼ返りですぐに俺達の世界にもど・・・」
続くはずのラスの言葉をアルマとは別の方から服の裾を掴む、アルマよりも幾分小さな手によって止められてしまう。
その主はもちろん・・・
「らす〜〜。めりぃ、あいすおにいしゃまたちにあいたい。しょれに、おねえしゃまたちもいっしょがいい」
きらきらと期待に満ち溢れたといわんばかりに瞳を輝かせながらそういう、ラスの最大の弱点ともいえる伏兵が現れたために、ラスはもう陥落するしか道がなかった。
「・・・好きにしろ」
半ばやけくそと言わんばかりに出たラスの一言に、アルマは勝ったといわんばかりに満面の笑みを浮かべて上機嫌になる。
そこでふと、そういえばと思いたったこと・・・
「・・・そういえば、お互い名乗っていなかったよな」
そう言われてラスもあっと気が付く。
考えてみれば、カメリア以外まともに自己紹介していなかった。
「俺はアルマ・・・アルマ=パストゥール。で、こっちは義妹の・・・」
「ユーディア=パストゥールです」
名乗り終えると、2人は順番とでも言うように、ラスの方をじっと見つめる。
つられてカメリアも見つめる。
合計3人の娘に見つめられる中、ラスは溜息をついく。
「・・・グランジオラス。ラスでいい」
「ファミリーネームは?」
「んなもんない」
その言葉にアルマもユーディアもきょとんとなって小首を傾げる。
別にアプラサスでもないようだし、ファミリーネームがないということがあるのだろうか。
そういえば、先程の鳥の姿も・・・
「どうした?いくならいくぞ」
とりあえず、その話はこれから向かう世界でしてもいいかということにして、一路アルマ達にとってはまだ見ぬ世界へと向かうのだった。





あとがき&お詫び分

金姫様並びに金姫様のお子様ファンの皆様(私も当然ファンですが)に土下座!!
なんだかとてつもないギャグ路線ですいませんm(_ _)m
我が家のお子達に関わるとギャグ路線になって、他サイト様のお子様方のたくさんある良い部分(特にシリアス面)を殺しているような気がして、お詫びのしようもございません(泣)
これも私の文章力のなさと、ウチのお子達のギャグ傾向の性格のせいです(本当に、本当にすいません!!)
金姫様、パラレル書いて良いというのと、公開OKしてくださったのに、こんな話になってしまって本当にすいません!
そしてこんなのがまだ続くことに申し訳ございませんm(_ _)m
それにしても、ラスとアルマ姫様相性が悪いのでしょうか?(会って早々にけんか;)
ラスが姫様に暴言吐いてやがるのが、自分で書いておきながら心苦しいです・・・
私、金姫様のお子様の中でもアルマ姫様とティスくんが特に好きなので。
ディア姫様の「あの発言」は単に私が言ってみて欲しかったから(トパアルLOVE)
金姫様、よろしければどうぞお持ち帰って煮るなり焼くなりしてやってくださいませ。



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