何時もの如く、脳裏に突然浮かんでくる何かの情景・・・
それは何時も違う情景ではあるが、何かが浮かんでくるのはもう慣れてしまっていること。
だから特に気にした様子もなくベッドに潜り込む。
明日くる、出会いに備えて。
Enounter of a labyrinth:2
『腕輪』の力を使って時空間を渡った人数は全部で7人だった。
まず、この世界にこなくてはならないカメリアとラスの2人。
ラスの話を聞き、この世界に来てみたいと言ったアルマとユーディア。
そして・・・
なぜかついて来た、フィブロ、イリティス、カイアスの3人。
これで全てである。
「盗み聞きなんていい趣味してるな・・・」
じーっと、じと目で訴えるラスに対し、特にイリティスは気にした風もなく、片手をひらひらと舞わせながら、面白そうに語る。
「まあ、いいじゃねーか。『旅は道連れ』って言うだろ?」
なんだか、頭がくらくらして立っていられないような感覚にラスは襲われた。
どうも言い返す気もなくなってしまう。
4人が話をしている時、イリティスは隣の部屋で壁にコップの底をあて、聞き耳を立てていたらしい。
それを主でもあるフィブロに報告し、その時カイアスも一緒にいたから自然と聞くことになる。
そして、フィブロはユーディアが、カイアスはアルマが心配で、話し合いの末2人も同乗することになり、自然の流れ出イリティスも着いてくることになった。
「俺はできるだけ早く帰りたいのに・・・・・」
これではその願いも叶わないと、薄っすらと瞳に涙をためる。
しかもこれから城に行くということは、あの天敵と合うことになるということで、自然と頭痛と足取りも重くなる。
「おまけにここどこだよ・・・・・」
それは誰にも解らない。
ここが深い森間というのは解る。
解るのだが、ラスは確かに城に直接辿り着くように『腕輪』の波長を合わせたはずだった。
まったく行った事のないはずの場所ならともかく、1度いたことのある場所を間違えるはずはない。
しかも現在は夜。
森の木々の合間から微かに月の光が差し込んでいるだけの闇夜。
下手に動けば、城にたどり着くどころか迷うのは確実である。
「らす〜〜。おしろまでね、かなりきょりあるって〜〜」
植物に干渉する得意の力でこの森の木々に聞いたのであろうカメリアの一言がラスをさらに撃沈させた。
「どうするんだよ?」
アルマにじと目で尋ねられるが、呆然自失状態のラスには何も聞こえていなかった。
「きゃっ!」
「大丈夫か?ディー」
「あ、ありがとうお兄ちゃん・・・・・ないかにつまず・・・!」
きょろきょろと周りを見渡しながら歩いていたユーディアは暗闇で足元が見えないため、何かに引っかかりバランスを崩して転びそうになったところを間一髪でフィブロに助けられる。
しかし、その瞬間彼女は今まではっきり見えなかった自分の足元に転がるそれを見てしまった。
「ひ・・・人が!」
ユーディアのその声に他も目を凝らしてようくそこを見てみると、あまり人相の良いとはとてもいえないような男が傷だらけで横たわっていた。
「・・・・・気絶してるだけみたいだぜ」
イリティスが脈を調べてそういった一言になんとなくほっとするが、次に浮かんでくる疑問があった。
誰がこんなことしたのか?
その時、ぴくんとカメリアは何かに反応したかのように後ろのほうを振り返る。
「メリィ?」
「・・・くる」
はっきりとそういった一言に一同メリィの見ている方向を見るが、何の気配もない。
子供の勘違いかとラス以外の一同がそう思った瞬間、メリィは顔を上に・・・正確には木の上の方に向けそちらを見る。
それとほぼ同時に何か、殺気に似たものが現れ瞬間的に臨戦体制をとった一同の頭上からそれが降ってきた。
「っ!」
アルマの剣とぶつかった、おそらく敵の獲物は剣かその類。
こちらができると見たのか、相手は間合いをとる。
そのまま隙を伺うように互いに構え、あたりに緊張が生まれていたが、いきなり相手の楽しそうな声が聞こえた。
「驚いたな〜〜。まだ、こんなできるやつが残っとたんか」
敵と退治しているのにどこか上機嫌そうなその声の主は、声の感じからしてまだ少年といったところ。
そして、その声を聞いた瞬間ラスとカメリアの表情が変わっていた。
それはアルマ達と違い、緊張感からは程遠い表情だった。
「せやけど・・・これでおわ」
「ブリックか?!」
「ぶりっくおにいちゃん?!」
ラスとカメリア、2人が叫んだその瞬間に敵の動きがぴたりと止まる。
「・・・その声、ラスにメリィ?!」
森の合間から差し込む月明かりが差し込み彼の姿を映した。
それでもはっきりとは見えないが、15・6歳くらいの少年であることがアルマ達にも解った。
声を頼りに見たのであろう、ラスとカメリアのほうを見て、口をぽかんと開けて驚いたような表情をしている。
「ほ、ほんまにラスにメリィや」
「ぶりっくおにいちゃん♪」
どうしてここに、と言ったようにいまだ動けないでいるブリックに嬉しそうにカメリアがぽすんと抱きついていく。
「それはこちの科白だ!いきなり襲ってくるなよ」
「・・・しゃあないやん。この暗がりでよう見えへんかったんやで!それに、お前とメリィなら2人のはずなのに、人数多かったんやから・・・俺はてっきり盗賊の残党かと・・・」
「ちょっと、待ってください!盗賊?!」
ブリックの言葉にカイアスが声を上げ一歩後退する。
カイアスだけでなく、ラスを含むほぼ全員が驚いていたが、カメリアだけはよく解っていないらしい。
その様子を見つつ、ブリックはアルマ達の方を指差しながらラスに尋ねる。
「だれや?こいつら」
「・・・こことも俺たちの世界とも違う世界の連中」
もう疲れたというようにラスは頭を抑えてその場に座り込んでしまう。
一方のブリックはというと、多少予測していたのか、あまり驚いた様子もなく腕を組んでまじまじとアルマ達を見詰める。
「そうやとないかと思うた。陛下や王妃様に似とる連中がおるもんな」
「で、お前は何をしてたんだよ?」
「見て解らんか?『盗賊狩り』や」
さらりととんでもないことのように言ってのけるブリックの言葉に一同唖然としてしまう。
それに気がついているのか、いないのか、ブリックは拳を握り締めて、力強く語り続ける。
「人の為にもなって、自分のストレスも発散できる・・・こんなええことあるか?いや、ない!!」
きっぱりと言い切ってしまう。
つまり、先程転がっていた男は盗賊の一員で、ブリックによって成敗されたということになるらしい。
まだ盗賊の残党がいるかどうかあたりをブリックが確認していると新しい気配が現れたので、隠れていた盗賊の残党だと思って攻撃してきた、といった所だろう。
それにしても・・・
「ものすごい趣味だな・・・」
知らなかったといわんばかりのラスの言葉にブリックは手をパタパタと振り、否定の意を露にする。
「いや、俺の趣味は釣り。親父やアイス曰く、これは一種の特技らしい」
けらけら笑いながら語るブリックを見つつ、先程の発言から黙認しているであろう者達に溜息をつく。
「・・・なあ、いいかげんそいつが誰か教えてくれよ」
ほぼ、ラスとブリックオンリーで話が進行することにいい加減飽きてきたかのようにイリティスが言葉をこぼす。
「俺か?俺は、ブリック=ジャンクソンや」
「ひょっとして、お父上は」
「ルビイ=ジャンクソン。お前と同じやな」
「!」
アルマ達はなんとなくブリックがラスと話している中で、口調やら何らでルビイの息子ではないかと推測してしたが、カイアスからルビイの息子であるという情報を読み取れる要素は与えていないはずだった。
「おっ?!やっぱりそうか?」
「ど、どうして解ったんですか?!」
「雰囲気でなんとなく、な。それに俺の名前聞いた途端真っ先に反応しよるから」
「でたらめな勘のよさだな・・・」
半ばアルマが呆れる中、ブリックは苦笑をこぼしながら言った。
「ま、うちの王子が王子やし・・・」
その真意を測りかねてアルマの頭上にはまるでクエッションマークでも浮かんでいるようだった。
「さてと!こないな所で話しこんどるもなんやし。城に戻るか」
「道解るのか?」
「わからなんだら普通きいへんやろ?方角はばっちり解る。森を抜けたら道も完全に解るしな」
そう言いつつすでに歩き出したブリックの後を一同は暗さになれてきたその目で確認しながら追いかけた。
「おっはよ〜〜〜〜〜☆」
眩しい光と共に降ってきたその明るし声につられるようにアルマは目覚めた。
ただし状態は起こさず、仰向けに寝て目を開いただけの状態で見えるのは天井のはずなのに、今見えるのは1人の少女の満面の笑み。
「朝だよ!朝だよ!あっさだよ〜〜〜☆」
「わっ!ちょっと・・・」
思考を停止させていると、少女はいきなりアルマの寝ているベッド目掛けてダイブしてきた。
少し苦しかった。
「ちょっと、起きるから!どいて!!」
「うん!い〜〜よ☆」
抗議の声を上げられているにも関わらず少女はにこにこと満面の笑顔を作ったまま素直にベッドから退く。
その笑顔が多少困惑する原因の1つになりながらも、アルマは必死に今現在の状況を判断しようと頭の中を整理する。
1分後、昨日からの一連の出来事を含む頭の中の整理完了。
「ああ、そういえば・・・昨晩はもう遅いからって、城に着いた途端空いてる部屋に案内されて寝たんだっけ・・・」
「そうそう♪そんな感じ」
その場にいなかったにも関わらず、まるでそこに居たかのように良く状況が飲み込めている少女がやはり満面の笑みのまま何かを差し出す。
「着替えの服だよ〜〜☆これ着てね〜〜〜〜〜☆」
「あ、ありがと・・・」
アルマが服を受け取ると少女はぱたぱたと扉まで駆けて行き、扉を半分開けたところでアルマほ方に振り返る。
「それじゃあ、あたしは部屋の外で待ってるからね☆着替えたら声かけて〜〜☆」
決して快適とはいえない目覚めから、約5分。
あまりに一方的で、早く疲れるその目覚めからの一連の出来事に、しばしアルマはその場で呆然としていたという。
着替え終えて、案内されたのはちょっとした広い部屋だった。
そこにはずらりとすでに昨日一緒に『こちら』に来た面々は集まっていてアルマが最後だった。
「ご苦労様でした。シエナ」
「うん☆」
「姉上様、おはようございます」
「おはよ・・・」
「あれ?どうかしたのか?」
イリティスが疲れきったようなアルマに対して尋ねると、アルマはそれに引きつったような笑顔で応えて見せた。
ここに案内される最中、この少女の行動に付き合うこと、疲れる、疲れる。
「なにがあったか想像できるところが悲しいな・・・」
「まったくや・・・」
ラスとブリックがお互いにその光景を想像し、頷き合っている。
「この場にウォールがいなくて良かっ・・・」
「俺がどうかしましたか?」
「「「「「「「「「!!!!!!!!!」」」」」」」」」
突然気配もなく現れたその人物にその場にいる者ほぼ全員がびくりっと反応する。
ただし、この人物を前から知っている者達と知らない者達とではその反応の意味合いが違う。
知らなかった者達は「いつから・・・」という意味であり。知っている者達は一種の恐怖でそうなったに過ぎない。
「う、ウォール」
「で、何が悲しいのですか?ブリック、それに鳥」
「と、鳥言うな!」
「ロリコン、下っ端のほうがよろしいですか?」
この言葉であえなくラスは撃沈した。
前々から知っていた者達は「こうなるのが解ってるんだから止めておけばいいのに・・・」とほとんどのものが思い、心の中で哀れなラスに涙を送っていた。
一方知らなかった者達はその光景を唖然と見ていた。
「な、なに?あれ・・・」
「気にせんとき・・・いつものことや・・・・・」
「いつも?!」
ブリックの無責任なその発言に多少蒼ざめる。
「王族には無害やから、大丈夫や」
「・・・・・・その論理でいくと、俺は危ないってこと?」
多少、疑心的に尋ねてくるイリティスに、ブリックは何を思ったかぽんと肩を叩き、まるで同類でも見るかのような眼でみた。
その瞬間、イリティスは「やばい・・・」と感じ取ったという。
「・・・・・・・お前達、何してるの?」
その微妙な空気の中に飛び込んだことに多少後悔しながら、ひくひくとその人物は顔を引きつらせていた。
「・・・と、トパーズ?!」
「はっ?」
アルマが真っ先にその姿を確認して、驚きの声を上げると素っ頓狂な声を出す。
「・・・じゃ、ないか」
「でも、髪の色に瞳に、顔も良く似てらっしゃいますわ」
「背丈は向こうの方が高いけどな」
身長のことを言われて、少しむっとしている。
どうも気にしているらしい。
「アイスリーズ=パストゥール。この世界のプラチナとアレクの息子で、ここの第一王子だ」
ラスの紹介にアルマ達は納得したような表情を見せる。
「どうりで」
納得ついでに、これがカメリアの言っていた『アイス』かとしみじみと思う。
「・・・・・・納得したなら、話を進めていいか?アルマ」
その場から動いて、適当に椅子に座るとまだ先程の身長の件で機嫌が直っていないのか、それとも別の理由なのか、不機嫌な様子でアイスはアルマに話し掛け、なんとも思わず頷いて、アルマも椅子に座ろうとしたが。
「っ!ちょっと、待て!お前、なんで俺の名前知ってるんだよ?!」
「お前だけじゃないぜ。そっちから、フィブロにユーディア、カイアス、イリティス・・・・・だろ?」
「大正解!」
「ご紹介ありがとうございます。アイス様」
昨晩、会ったブリックには道中話しながら城まで来たので、一通りの自己紹介はしておいた。
そのブリックにアイスは確認するように目配せをすると、ブリックは手をひらりと上げて軽く答える。
それと同時に、ラヴェンダーの髪の少年が深々と礼をする。
他のブリックとカメリア(+撃沈中のラス)を除く面々も今知ったような反応を見せている。
ということは少なくとも、彼らに自分たちの名前などの紹介はなされていなかったわけで、それを差し引いても昨晩はブリックが「もう全員寝とるころやから、挨拶は明日な」と言って各々の部屋に案内したのだ。
「・・・・・・・・・・・また『知った』な、お前」
そこで今まで撃沈していたラスがようやく復活し、カメリアの心配そうな表情を頭を撫でて笑顔に変えると引きつった顔でアイスのほうを見る。
「・・・『知った』?」
「そういう能力持ってるんだよ、こいつ」
「名前もない『知るはずのないことを知る能力』だな」
「・・・長い名前」
「しょうがないだろ?本当にこの能力の名前知らないんだから・・・能力そのままで呼ぶしかないんだよ」
「具体的にはどんなのだよ?それに、それならその能力で名前知れな良いだろ?」
「ああ〜〜むりむり」
アルマの発言にパタパタとブリックが片手を振りながら、無気力な声を出す。
「その能力、自分が思うた時に発動するとは限らんのや」
「はっ?」
「つまり、不意に規則性も何もなく発動するんや。しかも、そのの発動する内容いうんが、ものすごう重要なことやったり、世間一般にはどうでもいい事やったりまちまちなんや」
「気配の察知から、遠見、未来予知等・・・・・こう言ったところだな。能力の範囲が酷いから具体的にどんなとまでは言い切れないし・・・」
呆れるのと同時に、昨晩ブリックが「うちの王子が王子」と言っていた理由が解った。
確かに、こんなのの傍にいれば気配の察知くらい敏感になるのかもしれないし。
「ところで、アクラは?」
「アクラ?」
「俺の妹。アクラフレーム=パストゥール・・・で、まだ寝てる」
やっぱりかと溜息をつく『この奈落』の者達。
まるで『触らぬ神に祟りなし』状態の一同を見て、アルマ達だけでなくカメリアとラスさえも不思議そうな眼をする。
「まあ、それは置いておいて・・・・・とりあえず、こっちの自己紹介」
何か触れてほしくない事のように、アイスは話題を変えようと一同に促す。
追求したくもあったが、あまりにもアイス達の様子から哀れすぎると思って、心の中にそれをそっとしまいこんだ。
「それでは、僕から・・・・・」
「こんな所で呑気にこんな事やってる場合じゃないよ!!」
ようやく自己紹介が始まろうとしていた時、突如けたたましい音と共に真っ白な乱入者がそこに現れていた。
あとがき
またもや土下座でございますm(_ _;)m
もうめちゃくちゃですね・・・・・(←遠い目)
いきなり人数も増え、『四季』の連中は初っ端から暴走しております(特にブリックとシエナ)。
個人的にはティス君出せて嬉しいですv でも、どっかの精神破壊兵器のせいで雲行き怪しいですが・・・・・(すいません!!)
かわりにラスはいじめられ役としての本領を早速発揮してきましたが。
あと、アイスが美琴様宅のトパーズ王子に似ているという発言は髪の色と瞳が同じで顔もアレク似というのが同じ点から言っていただいただけで、実際に比べれば、ウチの王子とトパーズ王子と同じどころか比べるだけトパーズ王子に失礼ですね。(←絶対、ウチの子の方が負けてます)
それではまた酷いギャグ文で申し訳ありませんでした!m(_ _;)m
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