Lost Mise〜失われし約束〜
序章(前編)




また
またこの夢
苦しい、痛い
頭が割れるように、胸が裂けるように
それでも何か大切なことのはず
けれどはっきりとはしない
そして覚めれば忘れてしまう
夢に垣間見ては忘れる誰か
誰・・・一体誰・・・・・?




暑い真夏の陽光の下、一台の車の傍に3人の人物がいた。
そのうちの一人はかすかに息をきらしていた。
「はあ」
「『はあ』じゃないだろ。遅いぞお前」
肩で呼吸を整えているその人物を茶色の髪のポニーテールの少女が詰った。
「そうはいいましてもね、ロード。これでも急いだ方ですよ」
「その割には遅かったな」
「道が込んでたんだからしょうがないでしょ」
「お2人とも、そんなことより」
このまま言い合いを続けそうな2人を見るに見かねて紫紺の髪の青年が溜息交じりに声をかける。
そうだったと翡翠の髪の青年は持ってきたものを車の中で眠るもう1人の人物の額にのせた。
「いきなりぶっ倒れるんだもんな、こいつ」
「仕方ありませんよ。ここの所精神的なストレスが貯まっていましたからね」
「何かあったんですか?プラチナ様」
「色々とな・・・屋敷についたら医者はいるんだろ?」
「それはもちろんです」
問い掛けられたことに深々と頷きつつも視線は心配そうに眠る人物の方を向いている。
「それじゃ、早いとこ行こうぜ。どれくらいかかるんだ?」
「え〜と、車で約2時間ですね」
「げ!半日電車に揺られてこの上2時間もかよ」
「嫌なら帰ってもいいんですよ?あなたは勝手についてきただけなんですから」
「・・・いまさら帰るほうがめんどうだよ」
「だったら文句いわないでください。それではサフィルス、よろしく」
「解りました。ジェイド」
熱をだし倒れたプラチナの額に解けかけの氷枕をのせたままサフィルスの運転する車は一同を乗せ目的地に出発したのだった。


すっと瞼を開いて夢から覚める。
相変わらずどんな夢であったかは覚えていない。
楽しい夢のような、辛い夢のような・・・・・
酷く記憶がおぼろげになる。
突然思い出したかのように吐き気が起こり、うめき声を上げた。
「あ!やっと起きた」
知らぬ誰かの声がした。
そこでなぜか疑問に思った。
本当に知らないのかと・・・・・
「?お〜い、起きてるよな?」
怪訝そうな声と共に近寄って来る足音の方を見るとそこには1人の少女がいた。
「・・・・・?」
その姿を確認して眉を潜ませる。
目の前のその人物は金の髪に赤の瞳の美しい少女。
そこまではいいのだが問題はその服装。
白い肢体が透けて見えるような透明度の高い何かの儀式にでも着るような着物。
更に頭には豪華な髪飾りとまだ夢をみているのかと思わせる。
精霊のような・・・と呼べば良いのか解らないその姿を暫くみているうち、無意識に言葉が紡ぎだされていた。
「・・・・・綺麗だ」
「え?!うわ!」
気づいたときにはその腕を引っ張り自分の方に引き寄せていた。
そこで再び意識は失われた。


「俺は嫌だからな!」
「ですが・・・・・」
再び目を覚ますと誰かがうるさく言い合っている声が聞こえた。
「こいつ一回サフィがいないときに気づいたんだ。絶対、狙ってたとしか思えない」
「でも、ジェイドに聞いた限りではそういう方ではありませんけど・・・」
「いきなり押し倒されたこっちの身にもなってみろよ!」
「うるさい」
まだ少し痛む頭に響いてくる声に耐えかねて声を出していた。
それに気づきぴたりと口論がやむ。
「ああ、気づかれましたか」
部屋の中にいるのは2人だった。
安心したかのようにこちら微笑んでみる紫紺の髪の青年ともう1人は・・・
「・・・・・」
じっとこちらを睨みつけてみているのは先程の少女。
やはり服装もそのまままで・・・
夢ではなかった。
「とにかく!こいつ、すぐに追い出すようベリルの奴に言っといてくれよな」
「ええ!そんな無茶・・・アレク様!!」
青年の悲痛の声もむなしく少女は怒り覚めやらぬというようにもの凄い勢いで部屋から去っていった。
「ああ〜、どうしろって言うんですか・・・・・」
「・・・・・おい」
その場で泣き崩れんばかりの青年に声をかける。
青年はすぐに反応して態度を改めた。
「すいません。見苦しい所を見せてしまって」
「いや、それよりもここは・・・」
「パストゥール家のお屋敷。あなたのご実家ですよ。プラチナ様」
にこにこと微笑みながら説明する彼を不信そうな目つきで睨む。
すると気づいたのか彼は自分から名乗りだした。
「ああ、自己紹介していませんでしたね。サフィルス・ホーソンと言います。このお屋敷の執事を勤めています。どうぞよろしく」
「・・・・・・さっきのは・・・」
「?ああ、アレク様のことですか・・・あの方はアレクサンドル・パストゥール様。つまり貴方のお姉さまですよ、双子の」
「あれが?」
とても信じることができないという顔つきになる。
確かに自分の世話役であるジェイドから双子の姉がいるという話は聞いていたが。
それにしては随分と幼い感じがした。
「あ!その・・・すいません。お邪魔してしまって・・・・」
「・・・・・邪魔とは?」
別の意味にとったらしく、なにやらわけの解らないことを口走り始めるサフィルス。
そして、今度は自分の言葉に間の抜けた表情をする。
「ひょっとして・・・何も知らないんですか?」
「?・・・だから何を」
「だから、ジェイドから何か聞いていません?」
相手の言葉にわけが解らず段々いらだってくる。
だが、サフィルスはそれに気づいていないのか1人でどこか納得している。
「そうですか・・・あの人も人が悪いですね。あれ?でもそれじゃ・・・」
何か1人で思案している姿を見続けて苛立ちはピークに達した。
「おい!だから、何がどうなっているんだ?!」
怒鳴りつけた自分の声にようやく1人の世界をやめてサフィルスが困ったような笑いを作って口を開いた。
「えっと・・・それはですね。私の方からはちょっと・・・」
「何?」
「く、詳しいことは明日ベリルさんが説明なさるはずですから・・・」
「おい」
「それでは私は失礼します。何かあったら内線の4番に電話ください」
妙に動揺した態度背そう言い残し、足早に部屋を出て行ってしまった。

取り残されて暫くベッドの上で思いを巡らせる。
しかし、考えても一向にまとまるわけがなく・・・・・
そのまま心地よい睡魔に襲われ再び夢の中へと落ちていった。

5歳位の頃から実家から離れ、自分の世話係であるジェイドと共に都会で暮らしてきた。
何故、次期当主である自分が実家から離れて都会で暮らしているのか・・・
あまり深くは考えないようにしていた。
別に都会の暮らしは嫌ではないし、実家での思い出が何故かない自分にはどちらの暮らしが良いのか判断の仕様がなかった。
いつからか見始めた夢に多少の疑問を思うこと意外は・・・
そんなある日、一通の手紙が届いた。
ジェイドの話では父が病死したために次期当主として戻って来るようにとの事だった。
そして、十数年ぶりの里帰りをすることになった・・・・・



て・・・
ここに帰ってきたか・・・
本当にこれで良かったのか・・・・・
正しい道を見つけられるか・・・・・
それを取り戻すことができるかどうか・・・・・
見届けさせてもらおう・・・・・
打ち破ることができるかどうかを・・・・・
そのために君はここにいるのだから・・・・・
だけど今は・・・・・・
ただ眠れ・・・・・・

安らかに・・・・・

 





あとがき

主役プラチナです。
そしてプラアレです。
書いている奴の趣味がフルに発揮されています。
今回はまだ良いですがこれからが・・・・・・
・・・・・・・
あああ〜〜〜、すいません!すいません!!
ほんっとうにすいません!!!
そして、アレクにプラチナにサフィにジェイドにロードに・・・・・
ごめんなさい!
そしてまだ続きます・・・・・
ごめんなさい・・・・(泣)




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