Waking moon
〜and future〜
奈落城内のとある一室に、王と王妃、そしその側近である高官8人が結集していた。
その理由は、先日の『四季の王』達の一件における事後処理である。
事実上自分達が眠らされている間、子供達が解決していたのだが、彼らにはその時の状況を理解できるだけ理解し、今後その事実の元でどうしていくかを決めるという義務があるのだ。
この国の中心にいる者達としても1人の親としても。
「じゃあ、やっぱりそうしようか?」
「ですね。それが妥当でしょう」
「それなら、下の連中がどうこう言うことないやろうしな」
満場一致でこくりと頷き、その意見にその場の全員が賛成する。
「それじゃあ、ルシアはジェイドの養女ってことで決定だな」
そう現在の話し合いの内容は、アイス達が連れてきたルシアをどうするかということだった。
子供達一同は満場一致で「城においてあげてほしい」と頼んできたのである。
その時、いつもは王族以外に関して無関心であったウォールまで口を揃えていたから、アレク達にとっては1人増えていること以上に驚くばかりだった。
そして行く宛ても無いことや、アイス達が時間の旅をしていた際に助けてもらったという話などを聞き、これでアイス達の願いを聞き入れないのは酷だと思い、ルシアを城においても良いことにしたのだった。
ただしただ城に置くだけでは通常の城勤めの者たちと変わりがない。
ルシアの立場はあくまでもテールやブリック達のようにアイスとアクラの幼馴染と同じ程度の立場でなければならない。
そこで他の城勤めの者達も納得するであろう、高官の誰かが彼女を養女として引き取るという案がでたのである。
そしてルシアを養女にすることになったのはジェイドだった。
「やれやれ…まさかあんな大きな子供がいきなりできるとは思っていませんでしたよ」
溜息をついて肩をすくめるジェイドだが、その表情はどこか楽しそうであった。
「まあ、無理もないですね」
「俺達はもう子持ちだしな。ベリルにいたってはプラチナとアレクが子供なわけだし」
「すでに孫もいるけどね」
そう言ってまるでいたずらをした子供のような表情でベリルは嬉しそうに微笑んでだ。
しかしそんなほのぼのとした中で、1人だけ少し不満そうにしている人物がいた。
「プラム。何膨れてるのさ」
「うっ〜〜、だって〜」
「貴方だって納得してたじゃないですか」
「・・・別に良いデスけど。でもやっぱり、ボクの子供にしてほしかったデス」
そう現在仲間の中で子供持ちでないのはジェイドとプラムの2人。
そしてこの2人のどちらかの養女にすることになったのだが、すぐさまジェイドにという結論が出されたのだった。
そのためプラムとしては納得はしているが少し面白くないといったところなのだ。
「だってお前の娘じゃ、なんか説得力ないしな・・・」
「ロード・・・!」
「でも、ロードの言う通りですよ。・・・子供よりも親の方が子供に見えますしね」
「なんデスとー!バカにするとゆるさんデスよ〜〜!!」
カロールの言葉にプラムはかちんっときたようで、尻尾と耳の毛を逆立てて怒る。
その光景を見つつ一部の人間は「じゃあ、アレクとアイスなんてどうなるんだ?」と考えていた。
「とにかく、ルシアは今後ジェイドの養女。そして、王族の直轄音楽家にするので決定だ。変更はしないぞ」
「だって。ほらプラム・・・プラチナが本気でキレないうちに落ち着いて」
「ああ・・・でも、久々に抜剣見れるかもね」
「・・・・・本当に抜くぞ」
眉間に皺を寄せ手を剣の柄に持っていくプラチナを見て、今度こそ全員は大人しく静まり返ったのだった。
「それにしても・・・アクラにテールにウォールが、揃いも揃って『前の世界』の種族の生まれ変わりなんてな・・・」
「うちのブリックとシャルトなんて、あのリインとニーチェの生まれ変わりやで」
「懐かしい名前だね〜」
「っていうか、俺もアプラサスの生まれ変わりだって言うしね・・・」
そう確認した瞬間に全員は声を揃えて乾いた笑いを漏らす。
まだ少し信じられないという感じである。
「でもそれが本当なら、ボクはちょっと嬉しいデス」
「プラム・・・」
「あの2人の話はボクもおじいちゃんからきいたことがあります。本当に可哀相な2人だって・・・・・でも、きっとアイス達のおかげで最後は幸せだったと思うのデス」
「そうだね・・・そうみたいだよ・・・・・」
「アレク・・・」
「生まれ変わりの俺は・・・プラチナや、皆がいてくれるから幸せだしね」
にっこりと満面の表情で微笑むアレクに、一同も自然と顔が綻んでいく。
最初はこの事を告げられて多少混乱していたようだが、それを今はしっかりと受け入れられている分、アレクは本当に強いと全員は思っていた。
「まあそれは一先ずおいておいて。で、極めつけはシエナ、だね・・・」
ベリルがそう言った瞬間じっと全員がジルの方を一斉に見る。
ジルはと言うと、その口を閉ざして黙っていながらも、どこか一同の視線に対して耐えかねているようだった。
「アイスの能力・・・『知詠』って、名前だったんだよね?」
「そうそう・・・それが覚醒して自由に使えるようになったから、それで『知る』ことができたんだよな」
「まさか・・・」
そこまでベリルは言葉を出すといったん切り、そしてまるで示し合わせたかのように全員が口を揃えていった。
「「「「「「「まさかジルの奥さんの生まれ変わりとはね」」」」」」」
「・・・・・・・・・」
未だ沈黙を保つジルに対し、他の面々は楽しそうにしていたり、嬉しそうにしていたりと半々だった。
ジル本人としては、死んだ妻が今度は自分の養女になっていたということで複雑な思いなのだろう。
「なんていうか・・・ジルの親ばかっぷりなところもこれで説明つくかもね」
「そうだよな〜。なんとなく感じてたんじゃないのか?そうだって」
「ありえない話、とは言い切れませんね」
「・・・・・お前達」
次から次へと勝手に喋っていく一同に、ようやくジルは溜息をつきながら重たい口を開いた。
「少し黙っていろ」
「まあ、まあ、いいじゃないか」
「マスターも・・・」
楽しそうにそう言ったベリルに、ジルはまたより深く皺を刻んだ。
「まあ、それも後々の話としておいて。・・・問題なのは、やはりアイスのこと、だな・・・」
「そうだね・・・」
アイスのことが話に上った瞬間、全員は先程までの空気を改めた。
実際にただ事ではない話である。
「世界の『真の主』ね・・・」
「あの子がただならない存在って言うのは、なんとなく『知詠』で解っていたけど・・・」
「問題は、その『真の主』っていうのは、具体的にどういう役割なのかって、ことだな・・・」
「それはあたしが説明するよ」
聞き慣れた声に後ろを振り返ってみると、そこには予想通りの真っ白な人物。
「スノウ!」
「やっほ〜〜、アレクv」
「・・・あれからすぐ消えたと思ったら、今頃のこのこと・・・」
意気揚々とアレクに抱きついていくスノウに顔を引きつらせながらプラチナがそう告げると、片やスノウはアレクに抱きついたまま顔だけプラチナに向け舌をべっとだした。
「ふ〜〜んだ!こっちだって色々と事後処理があったんですぅ〜」
「どんなだか・・・」
2人が只ならぬ空気を纏って睨み合っている中、この場で唯一この2人止められるアレクは溜息とついて2人にやんわりと呼びかける。
「2人とも落ち着いて。スノウ、早く説明して」
「・・・うん、解った」
まだ少し睨みを聞かせているが、それでもアレクの言うこととあってスノウはそれに従った。
プラチナも少し不機嫌な様子ではあるが大人しく椅子に座りなおす。
「と、まあ説明する前にさ。ついでに扉の向こうにいる連中も呼ぼうか?」
「そうだ、ね!」
「「「「「「うわぁ〜〜〜〜!!」」」」」」
スノウの言葉で部屋の扉付近にいたベリルが思いっきり扉を開けると、なだれ込むようにして入ってきた6名と、それを見下ろしている2名がいた。
「・・・あっ、あははははは」
「盗み聞きは楽しかった?」
「まったっく・・・」
おそらく聞き耳をたてていたであろう6人とそれに付き合って廊下に立っていたのであろう2人に、溜息をつくものが大半をしめていた。
「アイスは?」
「・・・少し1人で考えたいからって部屋にいるわよ」
アクラの言葉にアイスにもそれなりの葛藤というものがあるのだろうと一同は考えた。
「まあ、アイスには話さなくても自動的に解っているし。それじゃあ、話を始めるわよ」
そう言ってスノウは先程までとはうって変わって真剣な表情で話し始めた。
「『黄泉』のさらに深い先に『冥府』という世界があるの。『黄泉』で死んだ者達が行き着く先がそこ・・・」
「『黄泉』で死んだ者って・・・死人が行き着くのが『黄泉』じゃないのかよ」
「そうよ、普通わね。死んだら生まれ変わる以外ではずっと『黄泉』にい続ける。それは『黄泉』までが『こちら側』だから」
「『こちら側』って・・・?」
「それは後で。でもなんらかのイレギュラー・・・もっとも多いパターンが『冥府』からの干渉で、『黄泉』にいる魂がさらに『死ぬ』ことになる。そうなると、その魂は『冥府』にいくことになる。そして『冥府』の力を増徴させることになる」
「増徴させるとどうなるんだ?」
「『冥府』は私達の『世界』とはまったくの別物・・・それどころか敵対する『世界』。『冥府』の力を増徴させると、ひいては私たちの『世界』が滅ぶ・・・私達『四季の王』がもたらすような『滅び』じゃない。土台そのものまで失う『完全消滅』」
スノウのその一言に周りの空気がいっきに冷たいものへと変わっていった。
『世界』を箱庭に例えるのなら、スノウ達がやって来た『滅び』とは、箱庭のあくまで『中身』のみを壊し、消して、新しいものをまた作り直すということ。
しかし今スノウが言った『完全消滅』は違う。
箱庭を作るための基になる『箱』そのものさえも消してしまうということである。
それは2度とそこには『世界』はできないと言っても過言ではないこと。
「それを防ぐために必要なのが『世界』の『真の主』」
「・・・ようするにアイスか」
「そう・・・『真の主』には様々な特殊能力が開花する。『時空転移』、『天地創造』、『運命歪曲』など・・・通常じゃ考えられないような能力がね」
そのあまりにも凄い能力の数々を聞き、アイスのあの『知詠』ですら序の口の能力だったんだなと、一同は乾いた笑いを漏らした。
「そしてもっとも重要なのが、『死者蘇生』・・・これによって、『冥府』に逝きかねない魂を救うことができ、『冥府』側の力の増徴を防ぐことができるの」
「なるほど・・・そういえばマーテルが『絶対に身に付けてもらわなければならない』って・・・意味深に語ってたもんね・・・・・」
あの時のことを思い出してアクラは少し溜息がでた。
本当にあれだけでも大変だったというのに、これから更に大変になりそうだと思いながら。
不幸にもその考えはある意味とんでもない方向で当たっていることがこの後の話で明らかになる。
「で、話を続けるけど、『冥府』側にもアイスと対する『真の主』がいるの。『葬命主』って言ってね。ちなみにアイスの呼び名は『創命主』ね」
『命を創る主』と『命を葬る主』。
読み方は同じではあるが明らかに違いすぎるその名の持つ意味に緊張を覚えていた。
「『葬命主』は絶対に倒さなければならないの。でも今のアイスじゃ無理」
「どうして?」
「アイスはまだ完全に『創命主』として、目覚めてもいないし。それに・・・」
「それに?」
「必要な者も揃っていない」
「必要な・・・もの?」
アレクの言葉に神妙な面持ちでスノウはこくりと首を縦に振る。
「まずは『創命主』の守徒たる『十徒』が揃っていないこと」
「・・・10人も集めるのかよ」
あまりの数の多さにそう言ったロードだけでなく、ほとんどの者がげっそりといった表情になる。
けれどスノウはふるふると首を横に振った。
「う〜〜ん・・・『十徒』のうち、7人まではここにいるけど」
「・・・7人、って」
「まさか・・・」
そう言って王と王妃と高官8人が見た先には、確かに7人の子供たちがいた。
そしてその視線に7人(一部除く)はあからさまに驚いた表情になる。
「ぼ、僕たちですか?!」
「んな、アホな!!」
「いや、ビンゴだから」
スノウのある意味非情とも取れるあっさりとしたその一言に、7人の中から思わず眩暈で倒れそうになったものが出た。
「う、嘘・・・」
「嘘じゃないって。マーテル様もそんなことを言ってたでしょ。あんた達がであったのは偶然なんかじゃなく、運命そのものよ」
スノウの言葉にあの時のことを振り返り、確かにマーテルが言っていたその言葉に「まさかここまでの意味があったとは」と、7人のほとんどが思っていた。
「『創命主』の『十徒』のうち、『戦姫』、『剣帝』、『賢佐』、『弓聖』、『音繰』、『法博』、『癒護』・・・・・それが貴方達7人よ」
「そういうことだ・・・」
スノウの言葉が終わった瞬間に聞こえたその声に、一同がそちらを一斉に見ると、そこには予想通りアイスが立っていた。
しっかりとした厳しいひとみで。
「兄上・・・」
「心の整理はついた?」
「・・・それなりにな」
スノウの言葉にそう答えるアイスだが、それでもまだどこか完全には整理がついていないように全員には感じ取られた。
しかしアイスがそれでもこうしてここに現れたのだから、今はそれで良しとしておくことにした。
「残る『十徒』は、『星妃』、『白勇』、『花精』だな」
「うん・・・」
「つーことは・・・あと3人見つけんといけんのやなぁ・・・」
「いや、3人の内の1人、『花精』はメリィだ」
「・・・・・まじ?」
アクラの言葉にアイスは静かにこくりと頷いた。
しかしということは、メリィがこの世界に事故でやってきたのは、偶然ではなく運命による必然ということになるのだろう。
つくづく都合の良いようになっていることだと、ある意味で一同は感心した。
だがここで1つの疑問も浮かんだ。
「メリィは違う世界の人間だぞ?」
「『箱庭』にはの中に『区切り』があると思ってもらえればいいわ。世界の境界がその『区切り』で、『ここ』と『メリィ達の世界』はその『区切り』によって一先ず違う世界と認識されている。でも。元々は同じ『箱庭』の中よ」
スノウのその説明に一同はなるほどと納得する。
「『箱庭』の中にできた『個々の世界』には、それぞれちゃんと自然始祖がいるわ。呼び方は様々だけどね・・・でも、ここの『箱庭』で1番強い始祖は、マーテル様だから」
「必然的に、マーテルのいるこの『世界』から『真の主』が出るってわけだ」
自分のことなだけに言っていてアイスはどこか複雑そうであった。
「それじゃあ、アイス・・・」
「ああ・・・・・」
突然話を中断したかと思うと、スノウはより一層真剣な表情でアイスに向き直ると、アイスも何があるのか解かっているように返事をする。
何があるのかと一同が固唾を飲んで見守る中、スノウの手に突如として、銀の装飾に黒、青、赤、白の宝玉の埋め込まれた鞘に収まった1本の剣と、1枚の銀白の板のようなものが出現した。
ただし、銀白の板に関してはどうやら半分欠けているようだった。
しかしあまりにもそこに存在しているだけで威圧感を持つその2つに、一同はどこまでも圧倒される思いで自然と冷汗がで、手には汗を握っていた。
その中で平然としているのはアイスだけだった。
スノウも一見平然としているようには見えるが、よく見るとその2つを持つ手が震えていた。
それは恐らく畏怖によって。
それだけ彼女が今手にしている2つのものの存在がとてつもないということだろう。
そしていつものスノウではない、彼女の本来の性質であろう声と態度を思って告げた。
「お預かりしていた貴方様が本来持つこれら・・・『四精絶華』と、『アカシック・レコード』をお返しいたします」
スノウのその言葉を聞くと、アイスはその2つをやはり平然と受け取った。
もともと自分が持っていた所有物のように。
否、実際あの2つはもともとは『創命主』の所有物なのだということは、その場にいる誰にも感じられた。
「ふぅ〜〜・・・緊張した」
2つを渡し終わった後のスノウは、今までの様相から豹変していつもの彼女に戻っていた。
「またっく・・・お前に敬語使われるなんて変な気分だな」
「・・・それはお互い様〜・・・・・ともかく、『創命主』の剣『四精絶華』と、『世界の基盤=アカシック・レコード』は渡したからね」
「ああ・・・サンキュ」
スノウの言葉にアイスが小さいが重たい声で礼を言う。
ふと一同はスノウの言った言葉に驚いて目を見開いた。
「『世界の基盤』って・・・その板切れがっ・・!」
ルビイが驚いてそう叫んだ瞬間に、スノウがなにやらものを投げつけ、それがルビイの顔面に見事ヒットした。
「板切れとは失礼な!・・・まあ、正確には『一部』なんだけどね・・・」
「一部って・・・?」
「『アカシック・レコード』はあまりにも膨大な、『世界の記録と力』そのもの・・・。その本体は『創命主』自身よ・・・」
そう言ったスノウがアイスを見たのと同時に一同もアイスの方を見る。
ただし、スノウとは違って冷汗を流しながら。
「『創命主』は『世界』の全てを有してるから。『創命主』自身が『アカシック・レコード』であるといって間違いはないの」
「・・・じゃあ、『あれ』なんだよ」
「あれは本物の『アカシック・レコード』の『一部』であると同時に、本来の『アカシック・レコード』とは別物の『葬命主』に対するのにどうしても必要なもの」
「『葬命主』に対するのにどうしても必要って・・・」
「詳しいことはまた機会があれば・・・それとあれは『創命主』の力を高めることもできる。そしてあれを完全にするためには、『十徒』を集めなければならないの。特に『星妃』は絶対見つけないと」
スノウの神妙な面持ちにアイスを除く一同が小首を傾げる。
なぜそこまで強調して『星妃』だけが重要なのかが一同には解らなかった。
アイスはというと、そんな一同の心情を察したのか、それとも『知詠』で『知った』のか、目線を完全にそらしていた。
「なんで『星妃』だけそんなに重要なんだ?」
「そりゃあ、『星妃』こそ『創命主』の運命の相手、つまりはその名の通りアイスの未来の妃になる人物だからよ」
スノウの言葉に一瞬時が止まった。
そして一同が揃ってアイスをじっと見つめ、暫くして各々で驚愕の様相を表していた。
「あ、アイスの妃!?」
「信じられない・・・・・・」
「あの恋愛というものがまるで未だ理解できていない兄上に・・・」
「プラチナ、これで孫の心配しなくてすむね」
「そうだな」
一部ちょっと違うのではないかということをほのぼのと口走っているが、この際それも含めてアイスは頭を抱え込んでいた。
「・・・俺自身も信じられないよ」
「まあ、信じられなくてもそれは決定事項だし」
「決定事項って・・・」
「だってそうなんだもん。出会ってみればすぐ解るわよ。その相手が自分の運命の相手だと、運命を感じてね」
言い聞かせるような口調のスノウに、彼女のその穏やかな口調が真実を物語っていると、一同は取り乱すのを止めた。
「それに『星妃』は『アカシック・レコード』を完全にするための、『繋ぎの術』を秘めてるからね。どちらにしろ『星妃』見つけなきゃね」
どうやらそれがこの先アイスにとっての優先事項になるようだった。
「まあ、『十徒』は自然とひきあうけど、近くに行かないと初めてそうだとは解らないけどね。例え『知詠』の力を持ってしても」
「おい、それって・・・かなり大変なんじゃないのか?」
スノウの話を聞く限り、そして別の『世界』のメリィも『十徒』の1人で会ったことも考えると、スノウ曰くこの『箱庭』の中の全ての『世界』のどれにも残りの2人がいる可能性はある。
しかしそんな中から2人の人間を捜し当てるのは、砂場で米粒を探すに等しい。
否、それよりももっと大変かもしれない。
しかもアイスの『知詠』が有効でなければ余計に。
「まっ、運命を信じることね」
「そんな無責任な・・・」
「そんなこといってもね〜。ま、がんばりなさいあんた達」
スノウのその言葉が一瞬どういう意味か解らなかったアクラ達だったが、すぐさま理解するスノウにすかさず詰め寄った。
「ちょっと、待って!!それって、あたし達も兄上と一緒に探すの?!」
「当たり前でしょう。『十徒』は常に『創命主』に付き従っているの者なのよ。それに探すのはあんた達と同じ『十徒』、仲間でしょう」
「そういうことだ」
スノウの言葉を肯定したアイスの肩がぽんっとアクラの肩を叩く。
そして一同が振り返ると、そこには満面の笑みではあるが、目が笑っておらず、むしろ妙な威圧感を放っているアイスだった。
「これからもよろしく。お前達」
そのアイスの顔には「一蓮托生」と明らかな文字が書かれているように一同は見えたという。
『戦姫』アクラフレーム=パストゥール
『剣帝』ブリック=ジャンクソン
『賢佐』ウォールナット=クロサイト
『弓聖』シエナ=ヒイラギ
『音繰』カノン=セルシアン=ディヴィウス
『法博』テールベルト=ホーソン
『癒護』シャルトルーズ=マルテル
そして彼らを束ねる
『創命主』アイスリーズ=パストゥール
彼らのこれからは、様々な意味で今まで以上の困難が待ち受け、使命が降りかかってくることだろう。
しかし当面の使命は
『星妃』、『白勇』、『花精』・・・
そのうち『星妃』と『白勇』の2人を見つけることである。
まだ見ぬ『世界』にいる仲間を求めて。
彼らの運命はこれからどうなっていくのであろうか。
あとがき
やっとあがった〜〜。
私的に長かったです・・・
いや、ほぼ説明だけですいません・・・;(しかもなんか説明不十分;)
本当に自分の文章力のなさが伺える。
そしてなんか文字が多い・・・見づらいだろうが!!(自分に突っ込み)
本当に読みづらくてすいません・・・
説明不十分なところもありますが、とりあえず、今回の話で認識してほしかったのは、アイス達の敵のことと、アイスに引き続いてのアクラ達の更なる正体(前世とは違う)と、ルシアがジェイドの養女になったことです。
なので最後のところでカノン=セルシアン=ディヴィウスになってます。
プロフィールは名前が長くなりすぎるんで、スペースの関係上そのままでいきますが。
ちなみに『十徒』の名前は力の関係順(強いほうから先)で並べています。
ちなみに、メリィの『花精』もちゃんといれると、実はブリックの『剣帝』よりも名前が出てくるのは先・・・つまり、ブリックよりもメリィのが強いです;(おいおい・・・)
もっとも、あくまでメリィは「覚醒中」とつきますが(^^;
そして最後に『星妃』と『白勇』が誰なのか、解る方には解っていると思われます。
あの2人です・・・あの2人。