Puzzle game
7:Attack




「いや〜〜。なんていうか、大量ね〜〜」
そんな何故か楽しげなリリスの声とは対照的に、それ以外のメンバーは正常な思考をもってげっそりだとか、あるいは少し動揺した表情を浮かべていた。
それも無理はないことであろう。
前の歴史では漆黒の翼によって落とされたロテルロー橋は、今回タルタロスがないため漆黒の翼を追い回す事もないので落ちるはずはなかった。
そのためローテルロー橋を経由してバチカルを目指すかという案が出ていたのだが、何の因果かこの橋がルーク達がエンゲーブを出る直前に落ちてしまったのだ。
否、落ちてしまったというのは少々語弊がある。
なぜなら橋を落としたのはここにいるリリスなのだ。
前と同じように歴史が進むのは面白くないと言っておきながら、あまりあっさりしすぎているのも好みではないので、遠回りしてバチカルへ行くルートを辿ろうと、本人曰く苦渋の決断で橋を落としたのだという。
もっとも彼女の苦渋の決断というのは疑わしいもの以外の何物でもないが。
その結果、現在バチカルに向かうためカイツールを(徒歩で)目指していた一行なのだが、突如大量のライガとグリフィンと神託の盾騎士団兵に周りをずらっと囲まれてしまった。
否、前の歴史を知るものにとっては必ずしも突如というわけではない。
ただ実際にルークの話にあった以前の歴史を始めてそうだと実感できる形で目の当たりにしたティアとジェイドに関しては少々戸惑った様子も見えなくはない。
特にティアはルークとの付き合いは彼女にとってまだ2ヶ月程度のものであるから仕方ないといえる。
一方のアニスとイオンは本当に何も知らない状態の為、純粋に動揺の色を浮かべている。
もっともアニスに関しては、現在の彼女の立場を考えると、多少演技が入っているといえるのかもしれない。
そしてルークに関しても自分自身で良くわかっていることとはいえ、さすがにこれだけの数をまた目の当たりにしてしまうと大きく溜息が出てしまう。
そんな中であの発言を言えるリリスはさすがというべきなのだろうか。
「・・・カバラ少佐。楽しそうですね」
「そりゃあ、楽しいですよ大佐〜。敵のバーゲンセールで特価お買い得品目白押し〜〜ですからね!」
「・・・少佐って・・」
リリスの完全に目の前の敵を舐めきった楽しげな発言に、アニスが顔を引き攣らせながらぽつりと言葉を漏らした。
その時、背後からの気配に気づき、ルークは咄嗟に剣を抜いて振り下ろされた刃を捌いていた。
「・・っく、やっぱ技術ではどうこうでも、力に差があるか・・・」
ポツリと零したその発言はルークが逆行してきた事を知る人物達にしか聞こえない程度の声で漏らされたものだった。
前の時間から戦闘能力はきちんと受け継いではいる為、こちらの方が明らかに実力で上回っているのは確実である。
しかしこと攻撃を受け止めたり捌いたりするのには単純な力が必要となってくる。
そして相手との体格差を考えれば、明らかにルークの方が力では劣っている。
ましてや今のルークは女になっているから余計にそうである。
目の前に現れた黒獅子ラルゴの重たい一撃を、我ながらよく捌けたなとルークは腕に多少の痺れを感じながら考えていた。
「・・ほう。死霊使いに向けて放った一撃だったが・・・まさかこんな小娘に捌かれるとはな」
そう言いつつもラルゴの言葉はどこか楽しげなもののように聞こえた。
そのラルゴに向けて、ジェイドはルークの腕に痺れが回復する少しの間の時間稼ぎを始めることにした。
「うちのルナは優秀なんですよ。それにしても私も随分と有名になったものですね」
「戦争乱のたびに躯を漁るお前の噂、世界にあまねく轟いているようだな」
その言葉に本来のジェイドという人間を知るルークはかっと頭に血が上ったが、次に移ろうした行動を他ならぬジェイドによって阻まれた。
「貴方ほどではありませんよ。神託の騎士団六神将『黒獅子ラルゴ』・・・・・・ルナ、腕の調子は戻りましたか?」
「あ、ああ・・・もう大丈夫だ」
ラルゴの気を引くための言葉のすぐ後、ジェイドは小声で確認するとルークからも小声でそう返事が返ってきたのを確認し、ジェイドはルークを静止するため彼女の前に突き出していた腕を元通りに下ろした。
「フ・・・いずれ手合わせしたいと思っていたが、残念ながら今はイオン様を貰い受けるのが先だ」
「させると思うかよ」
ラルゴの言葉のすぐ後にタイミングを推し量っていたルークが飛び出し彼に一撃を加えようとした。
それをすかさずラルゴは受け止め、もう片方の手で懐から小箱のようなものを取り出しそれをジェイドに向かって投げつけていた。
それが何かすぐに気づいたルークはジェイドに向かって声を上げた。
「ジェイド、封印術だ!」
「解っています」
「なにっ!?」
ここで封印術を使われる事を前もってルークから聞いていたジェイドは、用意周到に唱えていたのであろう譜術で封印術が展開される前の小さな小箱の段階でそれを粉々にして見せた。
その光景に事情を知る面々は1つ目の問題をクリアできたとほっと胸を撫で下ろしていた。
一方のラルゴは封印術を用意していた事を察知されていた事に明らかに同様の色を見せていた。
「いや〜〜。これで大佐が使いもにならずにすんだわね〜」
「・・カバラ少佐。どういう意味ですか〜?」
「ん〜〜・・そのまんまの意味ですよ〜〜」
目の前で動揺しているラルゴを置いて余裕ともいえる漫才のような会話を披露する上司部下コンビに、ルーク、ティア、アニスの3人は顔を引き攣らせ、イオンは純粋な笑顔を向けていた。
「お2人は本当に中が良いんですね」
「いや・・イオン、それ違うから・・・」
「そうですよ・・・イオンさ・・・ひゃあっ!」
イオンの素のボケにルークが突っ込みを入れ、それにアニスも賛同しようとした矢先、驚いた声を上げたアニスを全員が見てみると、そこにはグリフィンに捕まって宙吊りにしているアニスの姿があった。
どうやらイオンを庇って捕まってしまったようだ。
「アニスっ!」
「・・・イオン様を連れて行きたかったのに・・・・・アニスのばかばかばか!!」
「あっ!根クラッタ!」
「アリエッタ!」
「・・・アリエッタ」
未だ宙吊りのアニスはグリフィンに指示を出したであろうアリエッタを睨みつけて悪態をつき、イオンは目を丸くして少し驚いているようだった。
そしてこの事態がある程度予想できていたルークが少し悲しげな声でその名を口にすると、アリエッタはようやくルークに気づいたのか心底驚いた表情でこちらを見ていた。
「えっ・・・なんで、ルナお姉ちゃんが・・」
「お、お姉ちゃん?!ルナって、アリエッタと姉妹だったの?!」
「いや〜〜血は繋がってないわよ。ただ、ちょっと前にライガの住処の森でアリエッタの母親をルナが助けてね。その時に気に入られちゃってお姉ちゃんって呼ばれるようになったわけ」
「ああ、あの時ですか・・・」
声を上げたアニスはもちろんの事、イオンもティアも驚いてルナの方を見る中、リリスがした説明にジェイドは大いに納得していた。
だからあの時期に外出の許可を取ったのかと事情を察したのだ。
「ですが・・・こんな事になってるなら、一言報告がほしかったですね。2人とも」
「・・ごめん」
「いや〜・・驚く大佐の顔が見たかったもので」
素直に謝るルークに対し、おそらく本気なのだろうリリスの言葉にジェイドは溜息を漏らした。
一方謎が解けたこちら側とは対照的に、アリエッタはやはりまだ動揺しているようだった。
「・・お姉ちゃん・・・なんで、お姉ちゃんが・・イオン様と・・・?」
「アリエッタ・・・俺は元々マルクトに世話になってて・・・」
「・・・・・解った」
ルークが半分本当で半分嘘の内容でアリエッタに説明しようとした時、アリエッタが何やら1人納得したようにそう一言漏らした。
そしてすぐ未だ宙吊り状態のアニスをきっと睨みつけて口を開いた。
「・・アニスが・・イオン様だけじゃなくって、ルナお姉ちゃんもとっちゃったんだ!」
「ええっ!!?」
「ちょっ、なによ?!それ?!」
「アリエッタ違います!貴方を導師守護役から遠ざけたのはそういう理由ではなく・・・」
アリエッタの明らかな勘違いの発言に、ルーク、アニス、イオンといった3人の当事者達は慌てたり驚いたりしながら各々の反応を返していた。
当然その光景をお腹を抑えながら楽しんでいるリリスをジェイドは溜息をつきながら見ていた。
一方未だ勘違いの続くアリエッタの暴走は収まる気配がなかった。
「アニスのばか〜〜!ルナお姉ちゃんはアリエッタのお姉ちゃんだもん!アニスになんて上げないんだから〜〜〜!」
「ちょっ・・勘違いもいいか・・・・・・ってぇ〜!」
「アニス!!」
「ヤローてめーぶっ殺す!」
アリエッタの癇癪ともいえる様子に反応するように、グリフィンは大きく身体を動かすと抗議の言葉を半ばにしたアニスを思いっきり崖にしたに投げ落としていた。
投げ落とされたアニスが落ちながら非常に普段の彼女とは正反対と思われる台詞を吐いていたが、アニスが崖下に落とされたという事実にあまりこの時点ではそのことを深く気にせず、慌ててその無事を確認しようと崖付近に近寄ろうとした一同をアリエッタの登場以来動く気配のなかった、寧ろあまりの展開で動く事のできなかったラルゴの一撃によって阻まれ、一同は後ろに後退してしまう。
「おっと・・動かないでもらおうか・・」
そう言って己の獲物の切っ先を突きつけてくるラルゴに、一同は警戒しながらもアニスの事を気にかけていた。
「くっ・・・これじゃあ、アニスを探しに行けないわ」
「アニスなら大丈夫でしょう。こういう時に落ち合う場所も前もって指示してあります」
根拠はないが誰の中にもアニスなら大丈夫だろうという予感が過ぎっていた。
何よりも最後のあのアニスの捨て台詞を今思い出して考えてみると、相当大丈夫なのではないだろうかという考えに辿り着いてしまった。
「人の心配よりも、まずは自分達の心配をするべきではないか?死霊使いの譜術を封じる事はできなかったが周りを良く見てみることだ・・」
「確かに・・・そうですね・・」
目の前には六神将が2人に、更に回りは大量の魔物と神託の騎士兵に囲まれている。
周りを囲んでいる敵に今のところ動きは見られないが、司令塔である目の前の2人の指示でいつでも自分達を取り押さえられるだろう。
そしてそれに更に追い討ちをかけるようにラルゴの言葉が突き刺さった。
「さらに1つ忠告しておくが、六神将で来ているのは我々だけではない」
「おや、おや・・・随分とこの程度の人数に大サービスですね」
「目的がイオン様の奪還・・・ましてやその最大の障害が死霊使いとくれば、これくらいの戦力はしかたあるまい・・・」
ラルゴのその言葉にジェイドはちらりと目線をリリスにやった。
ルークは先程の攻撃でおそらく警戒されているだろうが、リリスは完全にノーマークのままである。
ラルゴは先程イオン奪還の最大の難関がジェイドと言ったが、実際にはリリスの方がジェイドより実力は上のため、彼女こそが真の最大の難関なのだ。
しかしリリスのことはジェイドと違い有名でないため、ラルゴや他の神託の騎士兵がこう思うのも無理はない。
そのためここでリリスを使えば一気に不意をつけるが、しかし同時にそれは大惨事を引き起こすことにもなるのでジェイドには少々戸惑いが出ていた。
おそらくリリス自身は準備万端であろうが。
「さて、それではそろそろ本気で行かせてもらおうか」
「・・・ラルゴ・・・ルナお姉ちゃんには酷い事しないで・・・」
「・・・仕方がない。出来る限り配慮はしよう」
そう言うとラルゴはルークとジェイドに、アリエッタはティアとリリスにそれぞれ攻撃の意思を露にする。
ルーク達はラルゴの凶刃をルークが前衛で捌いたり避けたりしながら翻弄し、ジェイドがその隙に譜術を唱えてラルゴを攻撃するという形をとっているが、さすがにこれだけ密集して闘っていると強力な譜術は唱えられないのかジェイド本来の強力な譜術はあまり活躍していない。
一方のティア達はアリエッタの譜術を避けつつ、アリエッタの代わりに直接攻撃を仕掛けてくる魔物達を何とか攻撃していた。
しかしリリスに対して本能で何かを感じ取っているのか、彼女にあまり寄ってこようとしない魔物たちは、自然ティアばかりを集中的に攻撃するようになっている。
そしてティアに明らかに疲労が蓄積された頃、突如足が縺れてバランスを崩したティア目掛けてライガの鋭い爪が振り下ろされようとしていた。
「ティア!!」
それに気づいたルークは慌ててラルゴから離れると彼女の元に駆け寄る。
そして間一髪のところで彼女とライガとの間に割って入った。
その結果、ルークの脚にはティアの代わりにライガの爪による傷が出来ていた。
「ルー・・ルナ!!」
「・・お姉ちゃん・・・」
自分を庇って怪我をしたルークにティアは慌てて駆け寄り、一方アリエッタは自分の友達であるライガが偶然とはいえルークを傷付け他事実にショックで固まっているようだった。
「だ、大丈夫だ・・・これくらい・・・・っ」
「無理しないで。脚をやられたんじゃ歩くのだって辛いはずよ・・・待ってて、すぐに回復・・・」
そう言ってティアが治癒の譜歌を謡おうとした時、彼女のその行動を邪魔するように一筋に弾丸が目の前に撃ち込まれた。
それに驚いて弾丸を見つめていたティアに聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「・・・ティア・・何故お前がここにいる?」
「リグレット教官!?」
現れた恩師の姿にティアは驚いて声を上げた。
否、ルーク達から前の時間の話を聞き、リグレットが敵として立ちはだかる事はティアも知っていたし一応の覚悟はしていたのだ。
しかしいざそれを実際に目の当たりにすると、やはり動揺してしまうのは無理もないことである。
そしてそれはルークの方も同じであった。
確かにルークは彼がこの時期のイオン奪還の作戦に参加している事は解っていた。
しかし実際にこうしてこういう場面で彼に、アッシュに対面してみると身体が萎縮してしまう。
そしてリグレットと共に現れた彼の翠の視線が自分の脚に向かって注がれている事に気づいたルークはびくっと身体を震わせた。
以前彼に言われたあの言葉を思い出したためだった。
案の定、彼は状況が状況だけに何も言わないが、明らかに怒った目でこちらを見ていた。
その様子からルークは彼の心情を悟って内心恐怖を感じていた。
そしてそのルークの様子を察したのか、ジェイドは六神将達の気を自分に向ける事にした。
「おやおや・・・確か『魔弾のリグレット』に、『鮮血のアッシュ』ですか・・・六神将が4人も集合とは豪華ですね」
「ふっ・・この状況で随分と余裕だな死霊使い。イオン様を奪還すれば貴様等に用はないと思っていたが・・・」
「思っていたが・・・?」
「・・・どうやら、色々と聞きたい事ができたようだ」
そう言ってリグレットはちらりとティアの方に目をやる。
ティアはそのリグレットから視線をはずさず、否寧ろ視線を外せないといった様子で彼女を凝視していた。
「聞きたい事ですか・・・生憎とこちらには何も喋る事はありませんよ。無論、イオン様を渡す気もありません」
「はっ・・・そんな減らず口が好く叩けるな。導師を守りながら・・・しかも怪我人1人抱えて、俺達から逃げられるとおもってるのかよ?」
その怪我人という言葉に、ルークだけが確かにアッシュからの棘を感じ取った。
やはり怒っているとルークの中の得体の知れない恐怖感が増していく。
そんな中でやはりジェイドはまだ余裕といえるような発言を取っていた。
「そうですね・・・確かに少々骨が折れるかもしれません。・・・というわけでカバラ少佐」
「はい、はい。大佐、なんですか?」
「・・・解ってるでしょう。やっちゃって良いですよ」
ジェイドからその言葉を聞くと、きらりとリリスの目が怪しく光ったように思えた。
「えっ?良いんですか〜?」
「はい。ただし、あまり酷い事にはならないよう抑えてくださいね」
「了解〜!あっ、死人も出来るだけ出さないほうが良いですよね?」
「そうですね・・・・・後で五月蝿い子が1人いますから」
そう言ってちらりとルークの方に目をやると、どうやらジェイドの先程のリリスに対する許可ですっかりと元の調子に戻ったのか、顔を引き攣らせた様子でこちらを見ていた。
一方、リリスの実力を知らないティアとイオン、そして六神将達は訳が解らないといった表情をしていた。
「ふっ・・そんな小娘に一体何・・・」
「やっちゃってください」
「は〜〜い。じゃあ、いきなり『サザンクロス』!!」
リリスが詠唱なしで何やら術名らしきものを叫んだ瞬間、虚空に十字架のような形の光が浮かび、そしてその光が圧縮状態で一気に降り注いで十字架の範囲にあったもの全てを薙ぎ払っていた。
そこにいた神託の騎士兵や魔物達は衝撃と同時に吹き飛ばされた者、あるいはその場で倒れているものもいた。
その攻撃を受けたものは重傷者ばかりである事は確かだが、なんとか一命は取り留めているようである。
しかし攻撃を受けた辺り一体が荒野のようになり、焼け焦げ十字の形をした巨大なクレーターができている事から、その攻撃にすさまじさを物語っていた。
その光景に一同が呆然とする中、リリスは楽しげに言葉を漏らした。
「ま、なんとかい死人出さないように、こんな感じで調整加減してみました」
そう言うリリスを殆どのものは信じられない生き物を見るかのよう目で見ていた。
特に攻撃をもっとも身近で目の当たりにした無事な神託の盾騎士兵や魔物たちは、恐怖で完全に萎縮してしまい、戦闘の意思がこの時点でほぼ欠如してしまっているようだった。
「・・・しょ、少佐って・・・こんなに凄かったんですか?」
なんとか最初に最初に声を絞り出せたティアの言葉はこれだった。
そのティアの発言と周りの様子を見てリリスはとても満足そうであり、逆にリリスの実力を以前から知っていたルークとジェイドは溜息をついていた。
「ええ・・はっきりいって、私よりも強いです。・・・寧ろ我が国で最強というか・・・・・最終秘密兵器というか・・・」
「リリス1人いれば国だって落とせそうだよな〜〜・・・」
自分の言っているその言葉に、実際神様なリリスなら簡単だろうとルークは内心思っていた。
「・・な、何で今まで有名じゃなかったんですか?・・・そ、それに・・それほどならなんで少佐なんて地位のまま・・・」
「えっ?だって出世したら大佐の副官できないし。それに・・・有名だったらこんな反応見れなかったでしょ。あ〜、こういう機会を虎視眈々と待ってたかいがあったわ〜」
そんな言葉を楽しげにさらりと吐くリリスにまたティア達は顔を引き攣らせる。
一方のルークとジェイドの目線は未だ遠い。
「んじゃそういうことで・・・そろそろ良いかな〜〜」
今まで楽しげに笑っていたリリスがそう言いながらその表情をにやりというものに変えた時、六神将達ははっと正気に戻ったが既に遅かった。
リリスが指を鳴らしたその瞬間、目の前の六神将達は勿論、他の神託の騎士兵や魔物達も一切動く事が出来なくなってしまっていた。
「んじゃ、暫く大人しくてしてて頂戴ね〜。『ブラックアウト』」
リリスがそう告げると動きを封じられた彼等は黒い霧のようなものに覆われ、ルーク達からは完全にその姿を確認する事はできなくなった。
無論、黒い霧に覆われた彼等の方もこちら側を確認する事はできないだろう。
「・・・これは」
「この霧は一種の結界で、こちらとあの霧の中は完全に空間が隔絶されてます。これが解けない限り彼等がこちらを襲ったりする事は出来ませんよ。こっちの声も聞こえてないでしょうし」
「・・はぁ・・少佐って・・本当に凄いですね」
「ふふふっ、ティア。本当の事言っても何も出ないわよ」
「・・少佐・・それは『煽てても』の間違いでしょう・・」
リリスのその自信たっぷりの台詞に、ジェイドは溜息をついて突っ込みを入れたが、当然リリスは気にした様子はなかった。
「まあ、ともかく・・・さっさとここを離れないと。ついでにアニスにも追いつかないといけないし」
「・・・アニスはついでかよ」
「あの・・・大丈夫とは思いますが、出来れば少しは心配してあげてください」
リリスの言葉にルークは顔を引き攣らせ、イオンは苦笑を浮かべていた。
「まあ、カバラ少佐の言い方はともかくとして。親書は彼女が持っていますし確かに心配ですね」
「いや、ジェイド・・・お前のその言い方も親書だけが心配って風に聞こえるぞ・・・」
「はぁ・・」
ジェイドのリリスとあまり大差ない発言に、ルークはやはり突っ込みティアは溜息を漏らした。
やはりこの2人実は気があっているのではないのだろうかと。
「では、カバラ少佐の謎の術が解ける前に、さっさと最初の合流地点のセントビナーに向かいましょうか」
「うわ〜〜。大佐、謎の術って言うのは酷いですね〜〜」
「・・実際、貴方の術は原理が一切不明じゃないですか」
歩き出しながらそんな会話をするリリスとジェイドの言葉を聞きながら、それは明らかに「神様業かなにかだろう」とルークは思いながら、ちらりと後ろを振り返って未だ目の前にある黒い霧の見えないその向こうを見つめていた。
そしてその向こうにいる1人の人物のあの時の目を思い出しながら、これが解けた後に起こるかもしれない事態を想像して、思わずまた恐怖が蘇って身を震わせていた。
「・・ご主人様、どうしたましたですの?」
「な、なんでもねーよ。それよりも、早く行くぞ」
「はいですの」
心配そうに声をかけてくれたミュウのおかげではっと我に返ったルークは、もう1度だけちらりと振り返ると首を振ってまた前を向き、少し先で彼女を待つ仲間達に追いつくべく駆け寄っていった。
それ以降、彼のいる方向をルークが振り返る事はなく、一同は一路セントビナーを目指して再び歩き始めた。











あとがき

なによりもリリスの化けものな実力を書きたかった回です・・・(実際問題神様ですが;)
ちなみに彼女の使った術の一方はお気づきの方もいるかと思いますが、某ゲームお馴染みの術だったりします;;
もう1つは私のオリジナル・・なんですが、ひょっとしたら何処かで使われてるかもしれませんのであまり自信満々にはいえません;
これからリリスは神託の盾騎士団一同様に最警戒されていく事でしょう。
封印術に失敗したジェイドと合わせて本当に厄介な敵を作ったというか・・・任務大失敗な六神将の皆さんですいません;
その六神将の1人が次回でかなり暴走するかと思われます。
はい、今回妙に静かに怒っていたあの方です・・・・・;
ちなみに未だアリエッタのアニスに対する誤解は一切解けていませんのであしからず(えっ;
・・・そういえば初めて行間を一切いれずに書き上げた話かもしれません;
ちなみに今回↓におまけみたいなのがあります;












ルーク「・・・そういえば、リリス」
リリス「ん?なに、ルーク」
ルーク「・・ジェイドも謎の術とか言ってたけど・・あれってなんだ?やっぱり譜術の一種なのか?」
リリス「ん〜・・譜術じゃないわね・・・」
ルーク「・・じゃあ、やっぱり神様業・・・」
リリス「それも違う違う。強いて言えば、とある世界で使用されてる術を拝借しました〜な感じで」
ルーク「・・・はっ?」
リリス「いや〜〜そこも結構楽しい世界でね。親子二代で英雄になっちゃった奴等とか、その数百年後には紋●技術とかいうので強化人間みたいなの作ってたりとかね」
ルーク「・・・よ、良くわけんねーけど・・凄いのか?」
リリス「ん?さあね・・・私結局は人間じゃないから人間の目線に立てないから良く解からないけど・・・人間的には凄いんじゃない?」
ルーク「そ、そう・・・・・」
リリス「変(?)な術とか技術とかなら他にもあるわよ〜。例えば、猫嫌いな機械の兵士がいたりとか、剣が自分の意思を持って喋ったりとか・・・」
ルーク「け、剣が喋る?」
リリス「そうそう。他にも何か聞く?」
ルーク「いや・・今は良い。(剣が喋る・・剣が喋る)」
リリス「そ?じゃ、またの機会で〜〜〜〜〜」






リリスの語った喋る剣とはテイルズシリーズファンならご存知勿論あの剣達の事です;
猫嫌いの機械の兵士は、解る方には解るネタかと思います(笑)
そしてリリスが使った術の元ネタゲームはこれでバレバレですね・・・;








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