This voice2(後半)




魔法院と騎士院の交流を目的とされて開かれたテニス大会。
優勝はアクアっと(ぎっくり腰でリタイアした)ヨハンの代役で交代したユニシスの魔法院チームの優勝で幕を閉じた。
・・・・・はずだった。
そして今、予期せぬとんでもない事態に、会場中の誰もが混乱しきっていた。
突然ソロイが頭の螺子が数本どこかいったのではと思わせるほどにおかしな言動を始め、その上自分までテニスに参加するなどという、普段からは天地がひっくり返ろうともとても信じられないようなことを言い出したのだ。
さらにその後だった。
ソロイに引き続いてシリウスまでもがどこかおかしくなっていた。
シリウスに関しては、始め誰もがいつもの通りに多少冗談を言っているのだろうとしか思わなかったのだが・・・・・・
段々と彼の言動も明らかにおかしいと思われてきた。
それも現在のソロイと似たような状態なのである。
そして今、何故かそのソロイとシリウス相手に、アークとリュートの2人が再びテニスをするはめになってしまっていた。



「・・・どうしちゃったんでしょうね、お2人共」
「失礼だが、プルート殿。ソロイ殿が今までああいう風になったことは?」
「1度もありません」
葵の問いかけに、マリンと一緒に呆然としていながらプルートは即答した。
「なんか、同情するよ・・・アークとリュートに・・・・・」
なぜかあの2人と試合をすることになった2人を、いつもは仲が悪いとはいえ今は哀れに思ってユニシスはそう呟いた。
実際に魔法院、騎士院問わず、現在ああいう状態のソロイとシリウスの相手をすることになった、2人に同情の視線が多数向けられていた。
ただその中で、この状況にすでに慣れたのか生き生きとしている者が2名だけいた。
「いや〜〜、まさか私がテニスの解説をできるなんて、夢にも思いませんでしたよ」
「先生、たのしそうね」
「ええ、楽しいですよ」
「そうね・・・・・これは考えようによってはとてもたのしいかもね」
お互い違う意味で楽しそうにしているヨハンとアクアを見て、誰もが無償に突っ込みを入れたくなったのは当然のことであった。
そん中であきらかに周りから見ておかしな試合は続いていた。



「な、なんだあれは?!」
「ソロイ様の体が黄金に光りだした!」
野次馬たちが驚愕の声を上げる中、1番何事かと驚いて顔を引きつらせているのは、対戦者のアークとリュートだった。
「なんだよ、あれは?!」
「アーク、気をつけて。何かるのかもしれない」
「解ってるよ!」
ある意味戦闘よりも緊張する現状を平静に保ち、先程のアクア達との試合のようにならないようにアークは努力していた。
そして段々と球のコントロールも上手くなっているアークがミスをすることはなくなってきていた。
「アークは随分と進歩したわね」
「そうですね。アークさんは実戦で伸びるタイプかもしれませんね」



「・・・本気で解説やっておるぞ」
「先生・・・・・」
試合そのものと、この状況下でのアクアとヨハンの解説行為、どちらを優先に突っ込みを入れれば良いのか解らず、冷汗を流す者、何故か涙を流す者と多発していた。
「ああっ!あれはっ!!」
ヨハンが叫ぶほど驚いて目にした先では、アークやリュートが打った球が全て自動的にソロイの近く、全て同じ場所に返されるという光景が起こっていた。
「な、なにが起こってるんですか?」
「元プロの先生・・・どうぞ」
周りが驚愕している中で、冷静にアクアはヨハンに解説を頼んだ。
そのヨハンも未だ興奮覚めやらぬという様子で解説をする。
「あ、あれは・・・打ち返す際に場ボールに回転をかけ、その回転によって相手がどこに打とうとしても、同じ場所に返ってくるようになっているのです」
「それって、すごい?」
「凄いですよ・・・かなり高度な技術です!」
ヨハンのはっきりと言ったその言葉に、会場中から「おおーっ!」という歓声が上がった。
「・・・プルート殿、ソロイ殿がテニスをしたことは?」
「これが初めてなはずです・・・」
またもや葵の問いかけに呆然としながらもプルートが即答し、更に高い歓声が会場中から上がった。
「初めてでこれというのは、相当すごいわね」
「ええっ、私もソロイ殿がこれほどの才能とは・・・是非とも選手になることを薦めたいくらいです」
ヨハンの明らかに冗談ではないその言葉に、「さすがにそれはやめろ」、と会場中の誰もが心を1つにした。
そしてソロイが打った1球がついに決まった。
「油断せずにいこう」
ソロイはそう一言だけ言うと位置についた。
どう考えても真剣にプレイをしているという目をしながら。



「・・・・・なんなんだよ。さっきのあれは」
「魔法とか使ってないよね?」
先程の技にはアークだけでなくリュークですら疑いたくなったらし。
その2人に対して颯爽と横から口を挟んだ人物がいた。
「さっきの先生の解説聞いてなかったの?」
「・・・っるせーぞ。アクア」
「アクアさんも先生も、なんでそんなに楽しそうなんですか?」
恨みがましそうな目で見るアーク、理不尽な状況に泣き出したくなるリュート、この2人に対して、アクアはきっぱり、はっきりとつげた。
「実際たのしい」
その言葉を聞いた瞬間、2人の中で何かが切れそうになったが、寸前で理性が勝って何とか食い止めた。
「と、とにかく・・・ソロイ様がだめなら、あの大使と狙うぞ」
「・・・アーク、シリウス様でしょう」
「こんな時まで注意するな。いくぞ!」
そう言ったアークの球は物凄い勢いでシリウス目掛けて飛んでいった。
しかしそれをシリウスは難なく返した。
少し悔しそうに奥歯を噛み締めたアークが打ち返そうとしたその時、彼の目に、否会場中の全員の目にまたもや信じられない光景が映し出された。
「し、シリウス様が、2人いるぞ」
「い、いや・・・3人に増えた!」
自身満々の笑顔を浮かべる3人のシリウスに対し、もっとも何が起こっているのか解らず混乱しているのは対戦者の2人だった。



「し、シリウス殿が3人?!」
「先生、あれは魔法じゃないんですか?」
「いいえ、違いますよ。あれは物凄い高速移動のためにできた残像がはっきり見え、シリウス殿が何人もいるように見えるだけです」
「な、なるほど・・・・・」
なんだかすでにヨハンとアクアの解説行為に慣れてきてしまった面々は、普通にヨハンに尋ね、普通にヨハンが答えたことを受け入れるようになってきてしまっていた。
そうこうしている中、今度はシリウスの手によってアークとリュートはポイントをとられてしまった。
「残念無念また来週〜〜」
満面の笑顔で言ったシリウスのその言葉は、ソロイの時と違って誰にも理解不能だった。






結局、試合はほとんどソロイとシリウスの一方的なもので決着がついた。
試合終了後、アークは「当分テニスはやらない」と頑なに言い張り、リュートも疲れきった様子だった。
そして肝心のソロイとシリウスだが、シリウスはテニスをやれたことで満足し、いつもの様子に普通に戻っていた。
ただソロイの方は違っていた。
彼の場合はラケットを話した瞬間にいきなり元の彼に戻ったのだが、今まで自分が何をしていたのかまったく覚えていなかった。
そのため誰が追求してもまったくの知らぬ存ぜぬで、逆に「からかうな」というような事を言われて怒られた者は多い。
そのためなぜソロイとシリウスがああいう状態になったのかは、永遠の謎となってしまったという。







あとがき

やっと後半かけました〜〜〜。
そして後半もくだらない内容ですいませんです;
なんだか全ての方に謝罪したい・・・
手●ゾーンをするソロイ、●丸ステップをするシリウス・・・・・
私だって本当はそんなもの絶対にみたくありません。
キャラを崩しまくったことをここに改めてお詫びいたします。
そしてこりもせず、↓になにかおまけがあります。(多分そっちはまとも・・・かな?)






















「・・・・・・・・・・・・」
アロランディアの海岸付近からテニス大会の様子を見ていた1人の人物が、暫しの無言の後ぽつりと呟いた。
「予定より早く滅ぼした方が良いのかも・・・・・」
世界の事を憂いて遠い目をしながらそう言った彼を、この時ばかりはきっと誰も文句を言わなかったことだろう。






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