「んっ…。」 朝日がまだ出てから間もない頃、イギリスは妙な圧迫感で起き上がった。 いつもはもっと遅く起床するのでまだ意識がハッキリしない。 目の前のものが霞んで見える。まるで、霧のかかった日の様だった。 しかし、一度目が覚めてしまうと、二度寝という訳にもいかない。 しかたがないので体を起こそうとするのだが、体が重い。 筋肉痛で体が痛いとか、金縛りで完全に動けないという風ではない。 まだぼやけている視界に捕らえたのはフランス。 「ふ、ふらんす...?」 まだ寝ぼけたように気の抜けた声で確認する。 だが、今の状態では視力はほとんど使い物にならない。 腕を前に伸ばしてみる。 すると、いきなり腕を掴まれた。イギリスは驚いてフギャっと声を上げた。 先ほどの衝撃で視界もハッキリとしてきた。 信じがたいが、目の前にいるのはフランス。 何故こんな所にいるのだろうか,,,。 そのような考えが思考を埋め尽くした。 「お〜い、まだ寝ぼけてるの〜?」 そう言うとフランスはイギリスの両頬ほつまんで軽くひぱった。 「にゃにしやぎゃる。」 両頬をつままれたまま喋るイギリスはおかしくてフランスは笑い出した。 「こんなことされて、怒らないなんて寝ぼけてるの〜?」 クスクスと笑いながら笑ってるフランスを見てるとなんかムカついた。 「てか!なんでお前がココにいるんだよっ!」 「気がつくの遅っ。」 フランスはそういいながら立ち上がるとキッチンの方へと歩き始めた。 「まぁ、いろいろあってな〜。」 キッチンでガチャガチャと物を物色する。 「どうせ、上司に大目玉くらったか、女にフラれたんだろうがな。」 いそいそと布団をたたむイギリスを後ろにフランスはまだキッチンを物色している。 「あはは、せーかい。勝手に来たお詫びになんか作ってやるよ。何がいい?」 「そういう事でいちいち来るなよなぁ。別に何でもいいけど。」 布団をたたみ終え、立ち上がるとカーテンを開け、リビングの椅子へ腰掛けた。 「そういえば、イギリス寝言言ってたよ。」 「は?寝言?」 イギリスは目を丸くした。 自分は寝言なんて言ってる意識無かったし、まぁ寝ているので気がつきはしないが。 第一、フランスに寝言を聞かれたという事がすごく恥ずかしかった。 イギリスは恐る恐るフランスに問う。 「........なんて言ってた?」 「気になるの?」 そう言われると、急に顔が熱くなった。フランスの顔が少し笑っている。 何か可笑しなことを言っていたのであろうか......。 「んーっとね、もう、許してとか言ってたよ〜。」 「なっ......!」 カーっと顔が熱る。フランスはニヨニヨとこちらを見ていた。 すごく恥ずかしい。すごく。 「ジョーダンだよ〜。」 フランスはニコッと笑って告げた。 「マジで怖かったじゃねぇかよ。ばかぁ!」 イギリスは近くにあったティッシュを箱ごとフランスに向かって投げた。 投げられたそれは美しく放物線を描くとフランスの頭へ直撃した。 「いったぁ......。」 フランスは頭を抑えながら言った。 「天罰だ。」 「でも、ほんとに寝言は言ってたよ?」 「なんて?」 「お兄さんの名前呼んでた。」 「!」 イギリスはビックリした。 実際、夢の中にフランスは出てきたけど、寝言で言っていてしかも、本人に聞かれた。 他に何か言っていないか不安になった。 「何の夢見てたの?」 フランスが興味津々に聞いてくる。 「ひ、秘密だ。」 イギリスは冷静なフリをしていたがひどく動揺していた。 「えー、ケチ。」 「うるせー。だいたい、お前が勝手に入ってきたんだろうが!」 「そうですけどー。」 フランスを口を尖らせたままブーブーと何か言っていた。 全部相手にすると面倒なので無視。 「あのさ、イギリス。俺の事好き?」 「は?寝言は寝て言え。てか何で、この流れでそこ行くんだよ。」 「えー、だって寝言でお兄さんの名前言ってたって事はそうじゃないの?」 「な!ばか。ちげぇよ!」 イギリスは否定し続ける。だが顔が赤いのは隠し切れない。 「じゃぁ、嫌い?」 捨てられた子犬のような顔でこちらを見続けるフランス。イギリスは視線が泳ぎだす。 「ねぇってばー。」 イギリスは口を固く閉ざしたまま耳まで真っ赤にした。俯いていても分かるほど。 「……大好きだよ、ばか!!」 顔を上げるとイギリスの目にはうっすら涙が滲んでいた。 (これは羞恥の涙か?しかし、これはこれで可愛い。) 優しく笑うフランスはイギリスの頭を撫でた。 「何だよ、ばかぁ…」 「んー?可愛いなぁって思って。」 「フランス、ちょっとこっち来て。」 「どうしたの?」 イギリスは顔を近くにして来たフランスのおでこにキスをした。 「お返し。」 そう囁くと、軽くキスをした。自分からしたのにすごく照れているのはイギリス。 「と、特別だからな!」 「Je t'aime.Merci」 フランスは俺もと呟くとイギリスを抱えあげた。 「わ!」 「なら、俺はこれからもずっとイギリスの事好き。」 「あ、当たり前だ、ばか。」 フランスはイギリスに軽くキスを落とした。 |