ドリーム小説
蒼紅華楽 九




霊力を遮断する殺気石で作られている四深牢だが、尸魂界一である桁外れの霊力を持つがその気になればほとんど意味をなさなくなってしまう。
その為、外から微かに感じられたモノにぴくりと僅かに反応しては湯呑を持つ手を止めた。
そしてすぐに良く外の様子を瀞霊廷とその周辺に常に張り巡らせている霊力網で探ってみる。
暫くして霊力網からそれが何であるのかはっきりと理解したは、軽く溜息をつくと湯呑を静かに床において立ち上がった。
「・・・隊長?」
「少し出てくる。また戻ってくるが、それまで悪いが1人で食べていてくれ」
「あっ・・・はぁ」
何があったのか解らないルキアは瞳を瞬かせながら返事を返した。
そしてルキアのその返事を聞くと、すぐには瞬歩でその場から消えていた。
後には何が起こっているのか解らず、ただ呆然としてのいた場所を見つめるルキアだけが取り残されていた。









四深牢を出たはすぐに目的地である比較的大きな霊圧同士がぶつかり合う場所に向かっていた。
その霊圧の片方はも普段から良く知っているものだった。
「1人は阿散井か・・・・・もう1人は旅禍だろうが・・・・・」
副隊長とまともに戦える者が旅禍の中にいた事には少しだけ驚いていた。
無論、夜一なら副隊長といわず隊長でも大丈夫だが、この霊圧はの良く知る義姉のものではなかった。
そしてまた良く霊圧を感じ取り、ふとある事に思い当たった。
「・・・あのオレンジ髪の小僧か?」
が白道門で夜一を見かけた時、果敢にも市丸を挑発していたオレンジ髪に死覇装の少年。
少し印象深かったので多少なりと霊圧の感じも覚えていた。
よく思い出してみれば今阿散井と対峙しているこの霊圧は確かに彼のもの。
そして時雨の報告の彼の特徴と名前等を思い出しては呟いた。
「なるほど・・・あいつが一護か」
ルキアが何があっても現世に無事帰してくれと懇願した相手。
ならば尚更ここで死なせるわけには行かないとが急ごうとした時、片方の霊圧がいきなり膨れ上がり、そしてすぐさま霊圧の衝突が止んだ。
「・・・これは!?」
少し思っても見なかった事態には驚いた。
先に倒れ霊圧が動きが先に沈黙したのは阿散井の方だった。
続いて一護の方の霊圧も沈黙するが、はすぐさま阿散井が負けたということを察した。
「なるほど・・・ここまでの奴とはな」
阿散井を倒した事には素直に感心し、同時に2人の安否が気がかりになっていた。



ようやく辿り着いたの目の前には、瓦礫の山と2人の重傷者、そして心配そうに駆け寄っている2人の人物の姿が映った。
そして静かにその場に立ったは、一護の傍に心配そうに駆け寄っていた2人のうちの1人に見覚えがあった。
「お前は・・・」
「あっ・・・あぁあ」
2人の内、を見てすぐに花太郎は恐怖のあまりその場に声を上げて座りこんでしまう。
阿散井を目の前にした時以上の尋常でない反応に、岩鷲は眉を潜めながら花太郎に告げた。
「お、おいっ!どうした?あいつは誰なんだ?!まさか・・・また副隊長・・・・・」
「副・・隊長・・・とんでもない!・・あ、あの方は・・・・・尸魂界一の霊力を持ち、最強の死神と謡われる・・・・零番隊隊長・・・様、です」
「さ、最強の死神?!」
花太郎が出した予想もしない目の前の人物の正体に岩鷲も息を飲み込み、一瞬の内に緊張を体中に走らせた。
花太郎の言ったことが本当であるならば、絶対に逃げられないであろうということが解りきっているからである。
もっとも花太郎は勿論、岩鷲にも何かに押さえつけられたように、その場から動くことが出来なくなってしまっている。
そんな2人の心情など知ってかしらずか、凝視されているは何事もないかのように口を開いた。
「・・・お前、ルキアの世話係だった四番隊の者だな」
「は、はい・・・」
「そうか・・・なら、地下水道にも詳しいし、治癒霊力も使えるな。さっさとそこの入り口から地下水道に入って身を隠し、そいつの治療をしてやれ」
「えっ、えええぇえ?!」
のその思いもしない言葉に花太郎は思わず声を上げた。
もっとも花太郎や岩鷲の側からすれば、彼女は自分達を捕縛、もしくは排除する側であるはずなのに、助けるような言葉を言っているのはあまりにもおかしいからである。
「ど、どういう・・・」
「どうもこうも。私はルキアを助けたいし、旅禍達に協力してやることにしている。なのに、お前達を排除する方がおかしいだろう?」
「お、俺達に協力・・・?」
「ああ、そうだ。うちの隊員には会わなかったのか?この中で会わなかったにしても、空鶴さんの所で・・・」
そこまで言ってふとは岩鷲の服の模様にようやく気づいて眉を潜めた。
「墜天の崩れ渦潮・・・志波家の者ということは・・・・お前が岩鷲か・」
「あ、ああ・・・そうだけど・・・」
「なるほどな・・・まさか、空鶴さんが自分の弟を送り込んでくるとはな」
「姉ちゃんを知ってるか?」
やけに親しげに姉の名を呼ぶに岩鷲は気になって尋ねた。
「ああ、何度か会ったことがある。それに私の義姉と義兄の友人だからな」
「あんたの姉ちゃんと兄ちゃんが?」
「ああ・・・義姉にはお前も既に会っていると思うが?」
そう言われても岩鷲には心当たりがないといわんばかりに首を傾げていた。
はその岩鷲の様子から彼の思考を読み取り、「まあ、あの姿しか見せたことないのなら仕方がないか」と、夜一の猫の姿を思い出して納得した。
そしてふと、の頭にある事が浮かび、思い口調で岩鷲に話しかけた。
「・・・1つだけ言っておく。お前の兄は死神に殺されたのではない」
「な、にっ・・・」
の思わぬ言葉に岩鷲は目を見開いて驚いた。
いきなり兄の話題を出されたことは勿論だが、今まで岩鷲がそうだと思っていた事をが否定したからだった。
「何言って・・・なんでお前がそんな事・・・・・」
「一応、海燕さんとも面識があるのでな」
「そういうことを言ってるんじゃねぇ!兄貴の傷は刀傷だった・・・斬魄刀で刺し殺されたのに間違いない!それに俺は・・・あの時、兄貴を引き摺ってきた死神から、『自分が殺した』ってちゃんと聞いて・・・・・」
「なるほど・・・あいつらしいのかもしれないな・・・・・」
怒鳴って否定する岩鷲に対し、至って冷静な態度ではぽつりと呟いた。
そしてすっと岩鷲をまっすぐに見据えてまた口を開く。
「あいつは罪の意識から『自分が殺した』と言ったようだが、私はそうは思っていない。それに・・・死に至らしめたことが必ずしも殺した事になるとは限らない」
「・・・な、どういうこと・・・」
「確かにその死神の斬魄刀で海燕さんは死に至った。しかしあれは『殺した』のではなく、むしろ救う行為だ。お前の兄を『殺した』のは、まず間違いなく虚だ」
の言っていることが本当に正しいのかも解らず、岩鷲はただ頭の中が整理がつかずに混乱しきっていた。
そんな岩鷲の心情を察したは溜息をついて口を開いた。
「さて、話はもうここまでだ。先程の霊圧の衝突で少なからずこの場所に気づいている者がいるだろう。そろそろ行かなければ見つかるかもしれないぞ」
「えっ?!」
のその言葉にはっとして今まで2人の会話の内容が解らず取り残されていた花太郎がはっとして一護の身体を支えよとする。
「が、岩鷲さん!て、手伝って下さい。僕1人じゃ・・・・・」
「で、でもよ・・・」
「早く行け・・・他の連中に見つかりたいのか?」
まだ少し話しを聞きたいと思っていた岩鷲だったが、の一押しに仕方なく言葉を飲み込み、花太郎に代わって一護の身体を担ぎ上げた。
「行くぞ!人の来ない所に案内してくれ!」
「は、はい・・・!」
「・・・花太郎」
急いでこの場を離れようとした時、後ろからした自分の名前を呼ぶ静かな声に驚いて花太郎は振り返った。
そしてそこにはやはりしかいないことから、彼女が自分の名前を呼んだのだと理解して少し呆然とする。
「・・・その2人を頼むぞ。特にそっちの怪我人は死なせてやるな」
「は、はい!!」
の少し優しい声に驚いていたものの、すぐに花太郎は少し顔を赤くして返事をするとお辞儀をして一護の身体を担ぐ岩鷲と共にその場を離れた。



2人の姿が完全に地下水道へと隠れたことを確認したは、その場に取り残されたもう1人の怪我人である阿散井の姿を見つめ、自分の背中の斬魄刀を引き抜いた。
「血色の如く狂い咲け『天桜』」
そうして斬魄刀を解放すると以前の日番谷の時のように刀身の巻き布を阿散井にかける。
するとみるみるうちに阿散井の傷は癒えていっている。
その様を眺めながら後ろに近づいてきた霊圧に振り替えもせずは声をかけた。
「捺芽か・・・」
「隊長!こんな所でどうされたんですか?」
そこにはが名を呼んだ通り捺芽と、そして彼が現在同行している茶渡の姿があった。
対する捺芽はは今頃、四深牢でルキアとお茶会(?)をしているだろうと思っていたので、彼女の姿がここにあることに素直に驚いていた。
そして捺芽のその言葉では初めて振り返って見せた。
「比較的大きな霊圧の衝突を感じたのでな。こうして出向いたわけだ」
「そうですか・・・俺達もそれを感じてここに来たんです。こいつが片方は知ってる奴の霊圧だっていうものですから」
「なるほど。お前も旅禍か」
「ああ・・・一護の霊圧を感じたのだが、見なかったか・・・?」
先程の捺芽の呼び方から明らかに自分よりも年下の少女の姿をしたが隊長であることに驚きつつも、茶渡は何よりも自分が今1番聞きたいことを聞くことにした。
「ああ、先程までここにいたぞ。阿散井に勝ったが重症だったから身を隠させた。まあ、四番隊の者もついているから死ぬことはないだろう」
「へ〜〜・・・副隊長クラスに勝てるような奴がいたんですか」
のその言葉に捺芽は興味深そうに目を光らせ、茶渡は内心一護が無事であることにほっとした。
「みたいだな」
「それで、どこに行ったんだ?」
「地下水道だ。が、追うのはあまり進めない。あそこは内部が複雑だからな。行っても迷うだけだ」
「そうですよね。あそこを完全に把握してるのなんて、四番隊以外じゃ、隊長と琥珀くらいですよね」
「・・・私は大体わかる程度で完全ではないぞ」
捺芽の言葉にはあっとは溜息をつく。
「・・・そういうわけで、案内は不可能だ。霊力を手繰れば可能だろうが・・・・・・私が動くと変に勘ぐる者もでてくるからな。なるべくは、私とはいない方が良いんだ」
少し自嘲的に話すのはそれがが未だ夜一に接触できないでいる原因でもあったからだ。
「そうか・・・それなら仕方がないな」
「すまないな。一護も治療が終わり次第上に戻ってくるだろうから、それまでは適当に身を潜めながら合流の機会を待っているといい」
「・・・・・・・・・・」
のその言葉に捺芽は内心、「身を潜める」にはかなり無茶のあるタイプだと、茶渡の体格とここまで来るまでの彼の功績を目の当たりにして思っていた。
「解った。そうさせてもらう」
「すまない。それと・・・捺芽」
「はい」
「一応、『天桜』で治療したが、かなりの重症だからな。阿散井を念のため四番隊に連れて行ってやってくれ」
「解りました」
「そういうことで、すまないがここからはとりあえずは1人で行動してくれるか?」
「ああ、構わない」
「悪いな」
再度謝罪するに、「気にしてない」とでもいうように手を上げると、茶渡は2人に背を向けてその場から離れていった。
これ以上長くこの場にいるべきではないということに勘付いたであろう彼にと捺芽は少し感心した。
「・・・なかなか、見所のある奴だな」
「でしょう?俺も結構気に入ってるんですよ」
「そうか。それでは捺芽頼んだぞ。そろそろここに数名ほど駆けつけてくるようだ」
「解りました。それでは行ってまいります」
阿散井の身体を担ぎ上げた捺芽はにぺこりとお辞儀をすると、そのまま瞬歩を使って一瞬でその場から消えていた。
そしてそれを確認したは解放解除した『天桜』を鞘にしまったと同時に後ろの方で声がした。
「オイオイオイオイ!なんだこれりゃ?!!」
そこには三番隊副隊長である吉良と数名の死神達が驚いた顔でこの場の惨状を見ていた。












旅禍侵入1日目のその夜、十番隊隊首室で少しぼーっとしていた日番谷が突然ぽつりと呟いた。
「なあ、松本・・・手っ取り早く強くなれる方法ってないのか?」
「・・・・・・・はっ?」
先程からどうしたのだろうかと、明らかに日番谷の様子のおかしさに気がついていた松本は、改めておかしな事を口にした日番谷が口にした事の真意が解らず声を上げた。
「た、隊長・・・?どういうことですか・・・?」
「どうもこうも、言ったとおりの意味だが」
訳が解らず尋ねているのはこちらなはずなのに、松本は逆に日番谷に怪訝そうな表情をされてしまった。
「・・・隊長は今でも十分強いじゃないですか」
「・・・・・駄目なんだよ」
ほとんどの者が聞いたら首を縦に振るであろう松本の弁に、日番谷は目線を落としてまたぽつりと呟いた。
「こんなんじゃまだ足りない。護りたい対象より弱くて・・・何が強いんだよ。護りたい対象より強くなけりゃ、意味ないだろう」
「・・・・・・護りたい対象?」
日番谷から出た言葉を松本は目を瞬かせながら鸚鵡返しに呟いた。
そこまできて日番谷はようやくはっとして自分がとんでもないことを口走っていたことに気がつく。
「ちょっと待て、松も・・・」
「なるほどそういうことですか。って、やっぱりそれって桃の事ですか?」
非常に楽しそうにしながら尋ねてくる松本に日番谷はますます焦ってしまう。
「ちがっ・・・」
「でも桃と隊長なら隊長の方が明らかに強いし。じゃあ、桃じゃないとしたら誰ですか?それに今頃そんな事言い出したって事は、最近知り合った相手って事ですか?」
「松本!だから、話をき」
なんとかして松本を止めようと日番谷が必死になっているその時、突然隊首室の扉が開き、2人が反射的にそちらに目をやると、そこには無表情なが1人立っていた。
「あれ?隊長」
「一応何度か呼んだぞ。取り込んでいるようだったから聞こえていなかったようだが」
のその言葉に松本が謝ろうとしたが、すぐに近くで顔をいっきに真っ赤にさせている日番谷を見てそれは止まってしまった。
そして松本の頭の中にあることが浮かんだ。
「(隊長より強い、最近知り合った・・・・・)」
目の前にいる人物はまさに先程あげた2点に当てはまるのではないかと松本は思った。
そしてそれを裏付けるような日番谷の真っ赤な顔でに松本は確信し、暫くしてその口角は楽しげに上がっていた。
その松本の表情に気づいた日番谷は、眉間に皴を寄せながら小声で尋ねる。
「・・・なんだ?その表情」
「いえ、別に。ただ何時の間にそういうことになってたのかな、っと思っただけです」
松本のその言葉に完全に勘付かれていると思った日番谷の顔は微かに引き攣った。
「松本・・・お前・・・・・」
「・・・何をこそこそしているのだ?」
日番谷が松本に何やら言おうとした時、取り残されていたが怪訝な表情をしながら声をかけた。
そしてそのの声に日番谷はぎくりとして、また少し顔を赤くさせながら彼女の方を振り向いた。
「な、なんでもない・・・それより、お前こそ何しに来たんだ?」
「私か?私はこれを持ってきただけだ」
そう言っては手に持っていた風呂敷に包まれたものを軽く持ち上げてみせた。
「・・・それ、朽木の妹の所に持っていったやつじゃないのか?」
「そうだ。ただ、ルキアの奴が全て食べ切れなかったのでな。隊舎に持って返っても、隊員達に同じものを作って置いてきているから意味がない。だったら、余り物で悪いが違うところで処理してもらおうと思ってな」
日番谷は「処理」という言葉は食べ物に対して当てはまるのかと思ったがあえてそれは言わなかった。
「・・・別に構わないけど」
「そうか。悪いな」
日番谷の了承を得られてはすぐに風呂敷を解き、重箱の蓋を開ける。
そこには確かに明らかに誰かが食べた後だと解る広いスペースが出来ていたが、残っている品々は一応どれも手がつけられていないものなのであまり抵抗もなく食べられそうだった。
むしろ余り物であっても、元の作りがよい為に一品、一品は十分に見栄えのするものだった。
「うわっ。これ誰が作ったんですか?」
「私だが・・・」
「・・・・・・えっ?」
感心して尋ねる松本にさらりと答えるに、松本は意外そうな声をもらした。
その松本の言葉には怪訝な表情をする。
「なんだ?私はそんなに料理が出来なさそうか?」
「いえ、そういうわけでは・・・」
「言う度に皆、今のような反応をするが・・・・・私は料理ぐらい出来るのだがな」
そう言うの言葉に、松本は「少なくともここまで出来るとは誰も思わないだろう」と思っていた。
「・・・まあ、良い。とりあえず、お前たち2人で適当に処理してくれ」
「あ、はい・・・いただきます」
「貰うぞ」
まだ少し納得していなさそうだが、このまま考えていても仕方がないと判断したの言葉に促され、日番谷と松本は箸をとって曰く「残り物の処理」に取り掛かった。



「・・・ところで、お前は雛森が好きなのか?」
「っ・・?!なっ」
余り物とはいえ見た目以上の味に日番谷と松本が舌鼓を打ちながら、何品目かを食べていた時、唐突にから尋ねられた言葉に日番谷は思わず噴出しそうになった。
「な、何言って・・・」
「先程の話を聞いている限りではそうだと思ったのだが?」
「は、話って・・・どこから聞いて・・・」
「松本がお前に『護りたい対象?』と尋ねた辺りだ」
あの辺りですでに部屋の外にいたのかと、慌てていたとはいえ全く気づいていなかった自分の不覚さを日番谷は恨んだ。
「まあ、あいつはかなり人気もあるようだからな。それに幼馴染同士なら無理もないかもしれないし」
「ち、違う!」
明らかに自分の本心とはまったく違う、自分にとっては明らかにまずい方向に勘違いをしているに日番谷は慌てて声を上げた。
「・・・違うとは?」
「だから、俺とあいつはただの幼馴染だ。それ以上でも以下でもない。大体、あれは・・・俺が護りたいのはお前・・・・・」
あまりにもまずい方向にいきそうだったので、勢いに任せて話していた日番谷は自分がとんでもないことを暴露してしまったことにようやく気づき言葉を止めた。
そしてそれを聞いたは少しぽかんとして慌てて顔を真っ赤にした日番谷を暫し見つめていた。
やがて開いたの口から言葉が漏れた。
「・・・私より弱いのにか?」
が真顔で告げた言葉は日番谷自身も危惧していたことのため、本人から言われてよりショックが大きかった。
そして重箱の中の最後の一品をお腹に納めた松本は、そのままショックに襲われている日番谷にただ同情の視線を送っていた。
日番谷が落ち込む原因を作ったは暫しその様子を眺めていたが、やがて無言のまま完全に空になった重箱を片付け風呂敷に包むと立ち上がった。
「それでは私は帰らせてもらうぞ」
「あ、はあ・・・」
日番谷を落ち込ませた張本人であるのに、むしろそれにまったく気がついていない様子のに何も言えず、松本は日番谷が気がかりになりつつも、帰還宣言をしたにただ曖昧な返事を送った。
「それではな」
短くそう言ってが出て行き、その足音が遠ざかったのを確認した松本は、より強い同情の目を日番谷に向けながら声をかけた。
「隊長・・・大丈夫ですか?」
「・・・・・・」
「・・・隊長?」
「・・・もう今日は寝る」
どこか疲れたようにそう言い、日番谷は立ち上がって奥にある自室に向かっていった。
その後姿に哀愁を感じた松本は、ますます同情の視線と言葉を送った。
「隊長・・・いつか報われますよ」
「・・・本当にそう思うか?」
振り返りもせず尋ねてくる日番谷に、松本は少し宙で考えてから苦笑いを浮かべながら告げた。
「・・・・・・多分」
「・・・・・多分かよ」
松本のフォローになっていないフォローは、逆に日番谷をますます落ち込ませ、完全に意気消沈させた日番谷は眠りに付きに向かったのだった。












あとがき

日番谷くんの性格が限りなく偽者くさくなってすいません。
そして主人公は別に悪気があるわけではございません;
全て素で言っております(余計に性質が悪い;)
もっとも主人公は本来まったく恋愛ごとには興味がないということを付記しておきます。
ちなみに花太郎も今回主人公に気に入られた模様です(名前呼ばれてますから)
次回はいよいよ私が書くのを楽しみにしていた場面からスタートです(笑)





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