ドリーム小説

蒼紅華楽 十九




更木達の戦いが架橋を迎えた頃、湖帆は目の前に横たわる人物を見下ろしていた。
それは間違いなく先程まで白哉と戦っていた阿散井だった。
戦いの結果は現状の阿散井の状態を見ても解るように白哉の圧勝といったところだった。
しかしそれはあくまで結果であり、卍解をしっかりと習得し、白哉に立ち向かっていけたこと、ぼろぼろになりながらも最後まで勝つことを諦めず刃を届かせた、その戦いの内容は今までの阿散井と比べ格段に評価できるものだと湖帆は思っていた。
もっとも阿散井本人がどう判断するかは湖帆には解らないが。
ただの「助けるのは本当に危なくなってからでいい」という判断は、湖帆は正しかったと思っている。
もしも途中で出て行けば、阿散井のあんな戦いは見れなかっただろうし、何よりも彼の自尊心を粉々になっていただろうと思うからだ。
「さてと・・・まだ生きてはいるが、このままでは死ぬな。・・・一か八かで四番隊を」
「湖帆!!」
目の前徐々に命の灯の小さくなっていっている阿散井を見ながら、湖帆がなんとか彼を助けるために四番隊を呼ぼうと思っていたときだった。
後ろの方からこちらに近づいてくる聞きなれた声が聞こえてきたのは。
「捺芽四席!」
目をやると確かに声の主である捺芽が、他二名と一緒に慌てた様子で駆け寄ってきていた。
「ああっ!恋次さん!!」
「すぐに治療を始めます!皆さん、少し下がっていてください!!」
捺芽と一緒に駆け寄ってきたのは、捺芽がの命令で救出に向かった花太郎と、六番隊の隊員である理吉だった。
大怪我を負った阿散井を見るや否や、花太郎は迅速に治療を開始した。
その様子を見て一先ずは大丈夫だろうと、湖帆もどこか肩の荷が1つおりたようにほっと息を吐いた。
そんな湖帆の様子を少し苦笑しながら、捺芽はここに来た経緯を話し始めた。
「花太郎を救出してすぐに阿散井の霊圧が小さくなるのを感じたからな。処刑を邪魔しにかかっている阿散井を普通の四番隊が治療するはずがないと思って、牢から出てすぐで悪いが、花太郎に働いてもらうことにしたんだ」
「それは解りますが・・・此奴は?」
じっと怪訝そうな表情で湖帆が見つめる先にいたのは、どこかこの場に居づらそうな理吉だった。
すると捺芽が機嫌良さそうに笑いながら答える。
「ああ、こいつな。俺が花太郎を助けた時に会ったんだ。・・俺と同じで花太郎を助けてくれようとしたんだよ」
「助けようとしていた?」
「・・・花太郎さんが朽木さんを助けようとして投獄されてたのは聞いていたんで・・・花太郎さんなら同じ目的で傷ついた恋次さんを助けてくれるかもと思って・・・」
「総合守護詰所が十一番隊に壊されたとかで、四番隊は人が出払ってて。その隙を見て鍵を開けてくれようとしたらしいです・・・」
理吉の説明と、それを補足するような形で治療しながら付け加えた花太郎の言葉に、湖帆は目を丸くして驚いていた。
バレなければいいのだろうが、もしもバレれば十分罪に問われる危険性があるのだ。
自分達のようならともかくも、ただの一死神がよくそんな大胆な決心をしたものだと湖帆は思っていた。
「オレ・・・信じられなかったんです・・・恋次さんが旅禍に敗けたってことも・・・脱獄して旅禍の手助けをしてるってことも・・・そのために・・・オレ達に剣を向けてるってことも・・」
確かにそれだけの事があれば頭の整理がつかないのは無理がないと、湖帆は身体を震わせながら告げる理吉を見て思っていた。
しかし次の瞬間、頭を上げたかれは先程とは打って変わり、寧ろ少し晴れ晴れとした表情で告げた。
「・・でも思い出したんです・・・オレが恋次さんに憧れて十三隊に入ったんだってこと・・・!だからオレ・・やっぱり何があっても恋次さんに生きてて欲しいんです・・・!」
そう最後まで告げた彼の表情は最早完全に吹っ切れたもので、全て聞き終えた湖帆が思わず目を丸くしていると、横から捺芽の機嫌の良い声が聞こえてきた。
「なんか、俺達に似てるだろ・・?」
「・・・ええ、そうですね」
捺芽の短いただ一言の通り、確かに今の理吉の姿はどこかを想う自分達に重なる。
その事実に捺芽と湖帆の2人がどこか満足そうにする中、花太郎の治療によって、ようやく阿散井が意識を取り戻した。
彼が先程湖帆に告げたのと同じ内容を理吉から聞き、改めて捺芽と湖帆と一緒にルキア救出に向けて双極に向かったのはすぐ後の事だった。











今更ながらは感知能力もずば抜けて高い。
瀞霊廷と少なくともその周辺までには張り巡らせた霊力の網で、意識していれば常にどこで何が起こっているのかすぐさま感知できる。
また意識していなくても、それなりの大きな事態であれば、自動的に感知することが出来る。
もっとも意識して行なっている時よりは当然はっきりとしたものではないが。
そして現在のは走りながら意識をしたうえで、瀞霊廷内ので起きていることを感知していた。
「・・・とりあえず、うちの隊は全員無事なようだ。阿散井も重症だったが、花太郎が助けて生きているようだし、十一番隊も旅禍達も全員大丈夫なようだ」
「そうか・・・それにしても、・・・・・」
から瀞霊廷内の現状報告を聞きながら、彼女の横を走る浮竹はなんとも複雑そうな表情をしていた。
「・・・なんだ?」
「・・いや、なんていうか・・・・・本当にあっさり解放してくれたな、と思って・・・」
自分が今持っているそれを見ながら浮竹は苦笑を漏らしながらそう言った。
実際本当にあっけなく解放された。
浮竹が必死に解放しようとしていた、四楓院家の紋の入ったそれは、浮竹が予定、予測していたよりもかなり早くは解放した。
あまりにもあっさりと解放したを見た時、浮竹と十三番隊の三席2人は呆然としていた。
その3人に対してなんの反応も示さず、は何時もの真顔で浮竹に解放したそれを渡し、すぐに双極に向かうと声をかけたのだった。
そしてそのの声で正気を取り戻した浮竹達と共に、処刑の行なわれる双極の丘を目指して走り始め今に至る。
「何か特別な方法でも夜一に聞いていたのか?」
「いや・・・夜姉が教えてくれたのは、お前がやっていたのと同じ内容のものだ。・・・それでも私がお前より幾分解放の手際が良かったのは・・・・・元々それが私は生まれつき向いている類のことだからだ」
「向いているって・・・そういば、解放に取り掛かる前、『結構得意』だと・・・」
「・・あっ!見えました。双極です!!」
気になっている事を浮竹がに尋ねようとした瞬間、まるでタイミング悪く霧生が声を上げた。
否、寧ろ明らかにわざと話題をそらそうとしているは解ったが、霧生の言ったことは事実であるし、それに何か自分が聞いてはいけない事情でもあるのかもしれないと浮竹はそれ以上の追求はしないことにした。
「どうやらまだ解放され始め程度ですね・・・」
「・・そのようだな。では、浮竹」
「ああ、任せておけ!」
そう言って先程より速度を速めた浮竹に続く形で十三番隊の三席2人も同時に速度を上げた。
その3人とは対照的に、速度を速めることなく、しかも双極で行なわれている様子がこちらからは良く解り、あちらからは死角になる程度の位置に達すると、はその場で足を止め、それに続いて琥珀と霧生も足を止めた。
「・・さてと、私達は浮竹達が双極の矛を破壊するまで余計なことは出来んからな」
「そうですね」
「でも、その最中に周りにいる連中が邪魔したら、俺達が援護に入るしかないですよね」
「まあ・・それは仕方がないだろうが、あいつ等が双極を破壊しようと出てくるなど予想外なはずだから、周りの奴らは一瞬呆けて対応が遅れるだろう・・・その時間差で全ての手順は終わるだろう・・・・・それに」
浮竹達は大丈夫だと確信を持ってそう言った後、はその目線を地に落とした。
正確には更にその下、双極の丘の下に存在する地下に・・・
「夜姉と・・・私の莫迦弟弟子も出てきたようだしな・・・」
それはすなわち、一護の卍解が完成したことを意味していて、聞いた瞬間琥珀と霧生は顔を見合わせて笑っていた。



の予想は的中し、浮竹は周りの者達が驚いて対処を遅らせる中、先に双極の丘に来ていた京楽と共に双極の矛の破壊に成功した。
双極の矛はその姿を真のものに変えるその寸前で砕かれる結果になった。
「あとはあの磔架だけか・・」
「そうじゃな」
矛は破壊されたが、その片割れであり、ルキアが未だ縛りつけあっれている双極の磔架を見ながらが呟いた時、後ろの方からとても聞き覚えのある声がしては瞬時に振り返った。
「夜姉・・っ!」
「「夜一様!!」」
「すまんな、。こんなぎりぎりになるまでお前に迷惑かけて」
「・・・別に、気にしてない」
頭に置かれ撫でられる手と、人の姿でのようやくの義姉との間近での再会に、は照れたように頬を赤くして呟いた。
そのの反応に夜一は微笑みながら、後ろにいる琥珀と霧生を見た。
「お前達も零番の者じゃな」
「はい。明塚琥珀と申します」
「岬杜霧生って言います」
礼儀正しく挨拶するその2人の名前を聞き、夜一は一瞬ぴくりと反応した。
「明塚・・・岬杜・・・・・そうか、お主達は・・・」
何かを察したように呟く夜一に、琥珀と霧生は自嘲的に笑って見せた。
「・・そうか・・・それで・・・・・」
「はい。僕達が今こうしてここにいられるのも隊長のおかげです」
「だから俺達、隊長の為ならなんでもする気満々ですから」
哀愁どころか、寧ろ清々しい程にはっきりとそう告げる2人に、そこまで言われているは少し照れたような表情になり、最初はどう対応すべきかと考えていた夜一はすぐに嬉しそうに笑った。
「そうか・・なら、これからも儂等の義妹をよろしく頼む」
「はい」
「もちろんです!」
「・・・私は、それほど大層な事をした憶えはないのだがな」
義姉と部下達のやり取りにそんなことをぽつりと呟きつつ、やはりまだ少し照れている様子のを見て、夜一はまた1度微笑み、そしてすぐに顔を双極の方へと向けた。
「さて・・・あいつがあれを壊したら儂等も動くとするか」
そう言って夜一が目線をやった先には、天踏絢を見に纏い磔架の上に立ち、その磔架自体に向けて斬魄刀を振り上げている一護の姿が映った。
そしてその後すぐさまその斬魄刀を一護が振り下ろすと、ルキアを縛り付けていた磔架は物凄い轟音と共に破壊され、ルキア自身は一護に抱えられる形で無事救出されていた。
それを見届けた夜一はにやりと笑って達に声をかけた。
「儂等も行くとするか?」
「うん・・・」
「隊長―――!」
夜一の言葉にがこくんと頷いたのとほぼ同時に、後ろの方から聞きなれた声と足音が聞こえてきた。
「あっ!捺芽四席に、湖帆に・・・」
霧生が慌てた様子でこちらに駆け寄ってくる面々の名前を呼んでいると、その途中で駆け寄ってきているうちの1人が物凄い勢いで、彼等の横を通過して行った。
「・・・阿散井〜〜」
最後に名前を呼んだ人物はすでに彼の横を無言で通り過ぎ、それを追う形で目線をやれば、何やら上と下で言葉を交し合った後、一護が物凄い勢いでルキアを阿散井に向かって投げ飛ばし、それを驚きながらもなんとか阿散井が上手く受け止めるという光景が一同の目に映った。
「・・・一護殿」
「あそこで投げるか・・・?普通・・・」
「・・・本当に莫迦弟弟子だな」
「・・上手く受け止めてくれた阿散井に感謝じゃな」
それぞれ思い思いの事を口にしながら、夜一が最後に言った言葉に他の3人が静かに頷いていると、駆け寄ってきていた捺芽と湖帆が4人のもとに到着した。
「隊長!それに、夜一様もご一緒でしたか」
「捺芽、湖帆・・ご苦労だったな」
「いえ・・でも阿散井の奴の足の速さには驚きましたよ。朽木の処刑が絡んでるせいか、ここに来て零番の俺達より速くなりましたからね」
苦笑しながらそう告げる捺芽のその言葉に、一同先程の形振り構わず横を駆け抜けて言った阿散井を思い返していた。
そして目線をその阿散井や一護、ルキアの方に向けると、何やら派手に言い争っているような光景が目に映った。
それを見て一同は苦笑したり、溜息をついたりした。
「では・・・今度こそ本当に行くとするか?」
「うん」
「「「「はいっ!!」」」」
夜一の言葉に全員が肯定の返事を返してすぐ、一同はすぐにその場へと向かった。



ルキアを抱えて走り出した阿散井を追う副隊長達の前に、一護が立ち塞がってそれを邪魔しようとした時だった。
それよりも早く彼等の目の前に立ち塞がった人物に、一護も邪魔をされた人物達も目を丸くした。
「・・悪いが、ここは通すわけには行かない」
「っ!零番の・・」
先頭に立って阿散井を追っていた二番副隊長の大前田が叫ぼうとした瞬間、彼の腹に湖帆が女のものとは思えない想い一撃を加えた。
その一撃であっけなくずるりと崩れ落ちた巨漢と、彼女の鋭い眼光に、さすがの副隊長達が一瞬怯んだ隙に、捺芽が一番隊の副隊長を、霧生が四番隊副隊長である勇音を各々当身で気絶させていた。
「・・・湖帆。さすがにそれ、やりすぎじゃ・・」
「これだけ肉が厚ければ問題ないでしょう。お2人こそ、少し甘いのでは?」
「いや・・そう言われても・・・・・特に勇音は女だし・・・」
何か個人的な嫌悪感でもあるのだろうかという湖帆の言動に、捺芽と霧生はなんとなくそれ以上何も言えなくなってしまった。
そしてその光景を少し呆然として見ていた一護に気づき、3人は自然と頭を下げた。
「すいません、一護殿。出番奪ってしまって」
「いや・・それは別に良いんだけど、さっ!」
3人との何気ない会話をしていながら一護はそれに反応していた。
否、もともとそれが来ることを予想して、多少呆けながらも周りを警戒していたのだろう。
そしてそれが成功した一護は、まるでいたずらの成功した子供のような笑みを自分の背後から刀を振り下ろした人物に向けていた。
「・・・見えてるって言ったろ。朽木白哉!」
そう言って白哉の刀を受ける一護をどこか満足そうに見ると、3人はすぐさま先程自分達が倒した者達をそれぞれ抱え上げ卯ノ花の所へと急いだ。
当然、そこには厳しい表情で自分達を見つめている卯ノ花の姿があった。
「・・そんな顔しないでくださいよ。卯ノ花隊長・・・」
「・・・させている方が言う言葉とは思えませんね」
「いや・・もっともです」
卯ノ花の手厳しい言葉に苦笑を漏らしながら、3人は抱えてきた3人を卯ノ花の目の前に降ろした。
「あまり酷くしてませんが・・・あ、いえ・・・大前田はその・・例外ですけど・・・・・」
自分がしたことではないのに、何故かその事実に後ろめたさを感じ、自分の後ろで何故か少し満足そうに目を光らせている湖帆を感じながら、卯ノ花に話を続けた。
「・・念のために肉雫月の臓で回復してやってください」
そう言って苦笑を浮かべる捺芽を見て、卯ノ花は少し怪訝な表情をした。
「貴方達は・・・本当はどういうつもりなのですか?」
「・・どうもありません。俺達は隊長のご命令に従うだけです」
「今回は別に、『邪魔する相手を殺せ』なんて命令は受けてませんしね」
「・・もっとも、必要とあれば隊長のご命令がなくとも、我々はやりますが」
そう言って迷いのない笑みを3人は卯ノ花に向けた。
それは確かに言っていることはある意味とんでもないことではあるが、不思議と邪気など全くなく、彼等のに対する絶対の忠誠の表れだろうと卯ノ花は感じ取っていた。
「それに・・・そもそも今回の処刑事態が誰かの陰謀みたいなもので、本当は争う必要性はないんだよな・・・」
「・・・・・それは、藍染隊長の死と関連があることですか?」
卯ノ花が突然口にしたその言葉に、3人は目を丸くして反応した。
そしてそれはそのまま卯ノ花にとっては肯定を現すものだった。
「・・・やはり、そうなのですね」
「卯ノ花四番隊長・・・貴方・・・・・」
卯ノ花の言葉に3人が未だ驚きを隠せない様子でいると、暫くして微笑んだ卯ノ花が斬魄刀を解放させ、肉雫月がその姿を現した。
「貴方達の頼みは引き受けました。私はこの子達の治療のため、この場から離れていることにしましょう」
そう言うと肉雫月に大前田と一番隊副隊長のみを飲み込ませ、比較的軽症ですんでいる勇音だけは肉雫月もその背に乗せ、自分もまたその背に乗った。
「それでは、お互いに武運を・・・」
そう言い残して比較的あっさりとその場から去って行った卯ノ花に、逆に面食らわされた3人は暫し呆然としていたが、やがて捺芽が苦笑を漏らし始めた。
「・・・さすが卯ノ花四番隊長。うちの隊長が一目置くことがあるな」
隊長格の中で本当に敵に回すと厄介なのは、戦闘主体の他の隊長達でなく、治療主体である彼女ではないかと、捺芽達は卯ノ花の去って行った後を見送りながら強く感じていた。










捺芽達が多少落ち着いた空気の中にいる中、同じ双極の丘にあてはまる場所であるのに、こちらはかなり緊迫した状況下になっていた。
その理由は総隊長・山本元柳斎と、零番隊隊長・が互いに睨み合っていたからだった。
の後ろにいる京楽、浮竹、七緒、そして少し離れた場所にいる清音と仙太郎、そしてその2人を守るような形で立っている琥珀、この6名がその緊迫した空間を冷汗を流しながら見守る中、先に口を開いたのは山本の方だった。
「これは・・どういうことじゃ?
「どうもこうも見ての通りだ・・・前にも言ったが、私はルキアの処刑に賛同していない」
きっぱりと告げたの一言に、山本の眉が少し釣りあがった。
「・・先程、砕蜂を捕まえて連れて行った影・・・・・あれは夜一じゃな?」
「ほう・・・その曇った眼に、良く夜姉の姿が捉えられたものだな」
「お主の願い・・・叶ったと言って良いのかの」
山本のその言葉に今度はの眉が少し釣りあがった。
「『義兄と義姉が何時かまたこの尸魂界に帰ってくる事。そのためにも、2人が尸魂界を去るきっかけとなった、憎い死神に自身がなってまで、2人が帰ってくるその日まで、尸魂界を命がけで守り続ける』・・・・・」
「・・・・・・・」
山本のその言葉に、その事実を知らなかった者達は驚いたように目を見開いた。
「その願いが、帰還が叶って早々に、尸魂界に反逆するか?」
山本のその言葉を暫く黙って聞いていただが、少しして先程よりも鋭い眼光で山本を睨み付けると、冷たく言葉を口にしだした。
「クソジジイ・・・貴様が今言ったことには誤りが幾つかある・・・」
「なに・・・?」
「一つ、願いはまだ叶っていない・・・夜姉は帰ってきたが、きー兄がまだだ・・・二つ、先程お前は単に『帰ってくる事』といったが・・・ただ帰ってくるのでは意味がない。『潔白と認められ、大手を振って』が抜けている・・・」
「・・・・・・」
「そして三つ、私は別に尸魂界そのものに反逆した覚えはない・・・何故ならお前達とは考え方そのものが違うから・・・」
「なにっ・・?」
それまで心の中でどう思っていたのか解らないが、の言葉をそれまで黙って聞いていた山本が、の最後の言葉に反応して声を上げた。
しかしはそんなことは気にせずに言葉を続ける。
「尸魂界を護りたいという想いでは貴様等と私はなんら変わりない。しかし、その方法も、考え方も、何を持って尸魂界を護るということなのか・・・・・その認識が根本的に違うということだ・・・」
・・・」
今まで幾度かあったの規定外の行動。
それは彼女の性格、彼女の今までの環境、そして零番隊隊長という立場上、仕方がないことであると山本は受け流してきた。
しかしここに来てのの言動に、最早黙っていることは出来なくなっていた。
それはの方も同じようで、今まで溜まっていた何かが溢れてきているようだった。
そして、それをはっきりと告げたのはの方だった。
「場所を移す・・・そして刀を抜け・・・戦闘を始めるぞ・・・」
そう言いながらは彼女にとっては僅かだが、周りの者達にとってはきついと感じられるくらいの霊圧を溢れ出した。
「・・・ただし、貴様の相手をするのは・・・京楽でも、浮竹でも、琥珀でもない・・・」
そして恨みと怒りの深く篭った眼を山本に向け、はっきりと告げた。
「この私が、相手をしてやる・・・・・」












あとがき

瞬殺です・・・・・
なにがって主人公と戦う総隊長がです・・・;(すいません)
実際には本当にちゃんとした戦闘するかは解りませんが・・・(えっ?)
さて、今回やけに開いてなかったり、開いている私の行間の取り方ですが・・・
時間、もしくは場所が完全移動した場合は広くなり、場所が変わっていなかったり、時間が近かったりしたら狭いということにしています。
ただし、これは絶対でなく、その時の話の状態とか流れによって判断し、変えることがあります。
回想シーンなんかこのパターンが多いです・・・
なので、行間どうなってるんだ?とかいう突っ込みはどうかしないでやってください;
あ、ちなみに・・・WEBページにちゃんと表記されないので、肉雫月の「づき」の部分を「月」で代用させていただいたことには予めご了承ください・・・
それをいったら双「極」もですが・・・;;




 

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