それを目の前で見守っていた浮竹、清音、小椿、京楽、そして七緒はただ呆然とするだけだった。
先程まで感じていた強烈な霊圧は既になく、目の前に広がっているのは戦闘で荒れた瓦礫の大地と、ぼろぼろになった総隊長、そしてそれを涼しい顔で見下ろすの姿だった。
「・・・総隊長を、始解もせず倒すなんて」
「・・・・・参ったね。強いとは聞いてたけど、まさかここまでとは・・」
「ああ・・・・」
七緒や清音、小椿も信じられない、寧ろありえないといって良い事態に驚いていたが、総隊長の作り上げた真央霊術院の最初の卒業生でもある浮竹と京楽の驚きは、平静をなんとか装いつつも3人の比ではなかった。
寧ろ総隊長を3人よりも良く知っている分、その驚きは内心半端ではない。
5人がただ驚いている中、総隊長はなんとか立ち上がろうとしながら、自分を見下ろすに目を向けて口を開いた。
「・・さすがは、零番隊隊長と言ったところじゃな」
「・・・・やせ我慢にしか聞こえんぞ」
しかしは総隊長の言葉にも、ただ冷たく返して見せた。
ふと総隊長の視線がから、彼女の持つ刀へと移る。
「その刀・・・お主の斬魄刀ではないな・・・・・ただの浅打か・・」
「なっ!!」
総隊長のその指摘に目の前にいた全員が目を見開いて驚いた。
そして当のは、その刀を鞘に収め、肯定の言葉を口にした。
「ああ、そうだ。これは天桜ではない。その曇った眼で良く解ったものだな」
「・・それぐらい解らぬ儂ではない。まさか・・・斬魄刀なしでここまでやられるとはの」
総隊長のその言葉には、悔しさも確かにあったが、それ以上にに対する敬意のようなものがあったように思えた。
おそらく総隊長は戦う前から彼女には敵わないであろう事を悟っていたのだろう。
否、元からは総隊長を含む全ての十三隊の隊長を合わせたより強いと言われていたため、それは考えなくても最初から解っていたことだろう。
しかしそれでも、総隊長はここまで力量の差を見せ付けられると、逆に敬意を表してしまうのだろう。
「・・・お主の斬魄刀はどうしたのじゃ?」
「・・・・・答える義務はないと思うが」
総隊長の質問を短く切って捨てたに、総隊長も予想の範囲ないだったのかそれ以上は何も聞かなかった。
「・・しかし、。今回のこと・・・幾らお主でも、罪は免れぬぞ・・・」
「・・・」
「四十六室はどうもお主には甘いような気がしてならん。以前から、不思議に思っておったが、お主がこの瀞霊廷に不法に来た時から、何故かお主にはお咎めが一切ない。・・・まるで、何かを恐れるかのように」
「・・・奴等は、私の正体に気づいていたからな」
総隊長から告げられた言葉が初耳だった浮竹達はその事実だけでも目を見開いて驚いていたが、次にが小さくぽつりと漏らした言葉を微かに聞き取って更に眉をしかめた。
「・・どういう・・・」
「・・生憎、その四十六室なら、とうに全滅しているぞ」
浮竹が先程の言葉の意味を尋ねるよりも早く、が告げたその言葉に、その場にいた全員が先程以上に驚き動揺した。
「な・・んだとっ・・・」
「一言断っておくが、私が殺したわけではない。確かに奴等には、恨みがあるがそんな事をしてもまったく意味がないからな」
「で、では・・・誰が・・・」
「・・・すぐに解る。どうやら、動いたようだからな」
動揺の篭った総隊長の言葉にも、はただ静かにそう告げた。
「それはどういう・・・」
「・・・丁度、他の場所の戦いも終わったようだな」
それ以上質問には一切答える気はないというように、は浮竹の言葉をまるで遮るかのように、それまでの会話とは全く違う話題を唐突に持ち出した。
「さてと・・・私は行くぞ・・・」
「行くって・・・どこに・・?」
「・・今回の一件の主犯が来ると思われる場所だ」
「主犯?!」
全員を背に向けて告げたに一同が怪訝な表情をしてみせると、は1度だけ振り返ってまた口を開いた。
「・・・死傷者を含み、もっとも人の目を誤魔化して動けていたと思う者を連想してみろ・・・」
ただ一言それだけを告げた瞬間は瞬歩でその場を後にしていた。
残された面々はその言葉の意味が解らず呆然としていたが、その直後に届いた勇音からの天挺空羅によって、驚愕とも言えるその言葉の真意を知ることになるのだった。
死亡した藍染こそが今回の一件の黒幕だということを。
四十六室のための居住区域である清浄塔居林の一角に足を踏み入れた卯ノ花は、当面の自分のやるべき事の1つを終えたものとみなし、次にこの場に来て増えた2つ目のやるべき事に取り掛かろうとした。
しかし彼女はその途中で何かに気づき、その手を止めて自分の目の前に倒れている人物を見下ろしていた。
「・・どうかしましたか?卯ノ花隊長」
天挺空羅を終えた勇音は卯ノ花を手伝おうと彼女の傍に駆け寄ったが、一向に作業始めようとしない卯ノ花に少し怪訝そうに尋ねた。
その言葉に反応したのか否か、卯ノ花は軽く溜息をつくと、勇音に向かって微笑み一言告げた。
「どうやら、日番谷隊長には必要はなさそうです」
「はいっ・・?」
卯ノ花の言葉に目を大きくして勇音が声を漏らすと、2人のどちらのものでもない小さな声が突然聞こえてきた。
「うっ・・・」
「気がつかれたようですね。日番谷隊長」
「ええっ!」
卯ノ花の言葉に驚いて勇音が彼女の横に立って見てみると、そこには先程この場を去った藍染に倒され、瀕死の重傷に陥っていたはずの日番谷がどう見ても無傷な状態で起き上がってきたのだ。
「これは・・・一体・・・」
「・・・私にも良く解りませんが、どうやら先程まで我々が目にしていた彼の傷はただの幻覚で、彼自身は仮死状態だったようです」
「幻覚・・・仮死状態って・・・」
卯ノ花の言葉に勇音は何故そんなことにというような視線を彼女に向けたが、卯ノ花も無言で解らないというように首を横に振った。
「・・・お前ら・・四番隊の・・・」
起き上がったばかりでまだはっきりとしないらしい頭で状況判断に困っているところを見ると、日番谷自身にも事態が全く飲み込めていないようだった。
そして少しの間何が起こったのか解らないといった様子だった日番谷だが、すぐにはっとして後ろを振り返った。
「そうだ!雛森っ!!」
「はいv」
日番谷の言葉に答えるように、それまで日番谷同様に瀕死で倒れていたはずの雛森が、身体の傷はそのままに、にっこりと微笑んで3人の前に顔を見せた。
その事態には日番谷だけでなく、卯ノ花も勇音も驚いて目を丸くした。
「雛・・森・・・?」
「あらあら・・・そういえば、まだあの方の姿のままでしたわね」
自分の両手で同じく自分の両頬を押さえるという、彼女の現状にまったく不釣合いな動作をしただけでなく、彼女の3人に向ける言葉遣いは明らかに普段の彼女のモノとは違っていた。
そのうえ、今彼女が口にした言葉の内容は明らかにおかしい。
「・・・お前、雛森じゃないな」
「はい。そうですよ、冬獅郎様」
雛森の姿をした正体不明の人物を睨みつけながら告げた日番谷だったが、その人物はまったく怯みもせず、にっこりと微笑んで自分の名前を呼んだことに、逆に日番谷の方が驚いてしまった。
そして彼女が1度ぱんっと手を目の前で叩くと、どこからか桜吹雪のようなもので3人からの視界を塞ぎ、次に3人の前に現れたのは、緋色の髪と瞳をした絢爛な着物姿をした女性だった。
姿を変えて目の前でにっこりと微笑むその人物に3人が呆然としていると、彼女はやはりにっこりと微笑んだまま告げた。
「こういうのもお初にお目にかかりますというのもなのでしょうか。天桜と申します。以後もお見知りおきを」
「・・・天桜?それは確か、の斬魄刀の名前じゃ・・・」
「それはそいつがその本体だからですよ」
聞き覚えのある名前に日番谷が眉を寄せた瞬間、聞こえてきたとても聞いたことのある声にそちらを振り返ってみると、そこには予想通りの声の主である時雨が1本の刀を大事そうに抱えて立っていた。
そしてその皿に後方には久遠の姿まであった。
「時雨・・・海城・・・!」
「これは、これは・・・羽鳴様に海城様」
驚く日番谷、卯ノ花、勇音に対し、天桜はやはり笑顔で2人を呼んだ。
「雛森のふりご苦労だったな」
「いえ、いえ。斬魄刀の本体である私にはあのような攻撃通じませんし。なにより、我が君たっての命ですので」
自分達だけ解ったように会話を進める時雨、久遠、天桜の3人に、他の3人は全く解らないといった様子だった。
「・・・一体、何がどうなってるんですか?それに・・・本当の雛森さんは・・・」
「まあ、とりあえずは順序だてて説明するか」
「そうですね」
勇音の質問に時雨と久遠は顔を見合わせてそう言うと、改めて3人に向き直って説明を始めた。
「まず、最初に言っておくと。俺達、零番隊は最初から藍染五番隊長が主犯だって解ってた」
「えっ・・?!」
「でしょうね」
時雨が告げた言葉に日番谷と勇音は目を見張って驚いたが、卯ノ花だけは驚かず冷静なままだったため、逆に時雨達の方が驚いていた。
「・・・卯ノ花四番隊長。何時その事を?」
「・・・双極で他の零番の方達と話した折に、そのような事を思わせる会話をしましたから」
その言葉を聞いて時雨と久遠は、ああっと納得したように頷いた。
そして同時に無事に処刑の邪魔が出来たということも確信して内心少しほっとしていると、卯ノ花が質問してきた。
「貴方がたは、何時から彼が犯人と解っていたのですか?」
「殆ど最初からですね。もっとも、確信があったのはあの殺害騒動の時です」
「なっ?!」
日番谷は時雨のその言葉に目を見開いて驚いたが無理もない。
何故なら彼はその時、に藍染は白だったのではないかと確認を取り、そしてもそれを了承するように頷いていたからだ。
「俺は・・まったく逆の事を聞いてたぞ!」
「それは・・隊長が日番谷十番隊長を危険に晒さないように嘘を仰ったんです」
時雨のその言葉に日番谷がぴくりと少し反応した。
しかしそれには気づかず時雨は話を進めた。
「隊長は、この瀞霊廷中に霊力の網を巡らせ、常に状況を把握できるようにしていらっしゃいます。しかも事件があったと思われた時刻は俺達で言うところの『外』におられた。なのに、隊長は何も察知されなかったと仰いました」
「隊長が1人殺されるような事態なら、当然それに前後した霊圧の衝突がある。黙って簡単に殺されるほど、藍染五番隊長が潔いとも鈍いとも思わない、とも隊長は仰っていましたよ」
「にもかかわらず、隊長が霊圧を全く感じられなかったのは、その事実がなかったから。天桜に聞いた鏡花水月の本当の能力とも合わせ、俺たちは藍染五番隊長が間違いなく、今回の一連の件の黒幕だと断定しました」
「っていっても・・・今俺達が言った全部は、隊長お1人が推理したことだけど」
そう言って笑う久遠の表情は、言葉は自分達を情けないと評するものだったが、どこか自慢げなものだった。
そして2人の言葉を聞いて卯ノ花と勇音は納得した様子だったが、日番谷だけはどこか複雑というよりも、少し悔しそうな表情をしていた。
「・・冬獅郎様?」
「・・・・・つまり、俺はあいつに信用されてなかったってことか?」
どこか自嘲ともとれるその表情と言葉に、一瞬時雨は怪訝そうな表情をしたが、やがて首を横に振ると静かに否定して見せた。
「いいえ。それは違います」
「違うって事はないだろ・・・俺に決定的なことは話さなかったってことは、そういう事じゃ・・・」
「・・・信用してないことと、危険に晒したくないことは違いますよ・・・」
日番谷の言葉を静かに否定して首を横に振ると、時雨はどこか哀愁の漂う笑顔を浮かべた。
「あの方は、あの頃には既に貴方への好意をそうとは気づかず持ってましたから。だから、好きな相手を危険な目に会わせたくないと無意識に思って嘘をついたんです。好意のある相手を危険に晒したくないというのは、当然でしょう?」
「けどっ・・・!俺はあいつを護りたいからっ!」
「・・・護ってますよ」
時雨の言葉に納得しかけながらも、やはりどこか納得がいかない日番谷が声を上げると、時雨がそれを遮るように静かに告げた言葉に、日番谷は驚いて目を見開き声を漏らした。
「貴方はちゃんと、あの方を護ってます。1番大事な・・・心を」
「どういう・・・」
「・・・日番谷十番隊長。隊長から貰った脇差、今でも持ってますね」
尋ねようとした日番谷の言葉をやはり遮り、まったく別の話題を突然何の前触れもなく口にした。
しかも時雨が告げた言葉は疑問ではなく肯定の言葉だった。
そしてその言葉の通り、日番谷はから預かった脇差を今でも懐に大事に持っている。
「そうれが、どうかしたのか?」
「あの脇差・・・隊長がまだ流魂街にいた頃、夜一様から頂いたものです」
その言葉に日番谷は驚いて目を見開いた。
時雨の言ったその言葉だけで、それがにとってどれだけ大切なものか解ったからだ。
「・・・脇差に乱雑に巻かれている飾り紐を取っていただければ解るでしょうが、握り手の上の方に四楓院家の紋があります。あの飾り紐はそれがバレて取り上げられないよう、隊長がわざと乱雑に巻かれていたのです」
確かに脇差には明らかに脇差に元からついていたと思えない飾り紐が乱雑に巻かれていた。
しかもそれは時雨のいう握り手の上の方を重点的に巻きつけ、後は鞘から刀を抜けないほどに乱雑に巻かれていた。
抜いて使用するなら邪魔ではないかと日番谷は思いながらもそのままにして持っていのだが、まさかそんな理由があるとは思いもよらなかったため、驚いて目を見開いたまま脇差のある辺りを握り締めた。
「その脇差は、隊長が夜一様から頂いたものゆえ、隊長が常に肌身離さず持っていたものです。そのため、隊長の霊力を大量に宿し、持ち主に危機が訪れた場合、何らかの形でそれを救う術が自動で発動されるようになっているようです」
時雨のその言葉でようやく卯ノ花と勇音はあの現象を理解した。
日番谷が藍染に刺されて致命傷を負っていたように見せていた幻覚と、それを補助するような形で起こっていた彼の仮死状態という状況は、その脇差が日番谷を救うために、藍染に日番谷が致命傷を受けてそのまま死亡すると思わせるためのものだったのではないかということを。
死亡すると解っている者に対し、普通のものはそれ以上の攻撃を使用とはしない。
余程の狂人であれば別であろうが、藍染の場合はそうではなかったということだ。
「・・隊長は、夜一様と喜助様の事を本当に大切に思っていらっしゃいます。・・その夜一様から頂いたものを、片時でも預けるという意味、ご理解していただけますね?」
「・・多分、他の奴だったら、絶対渡してませんよね」
うんうんっと頷いてそう告げる久遠に、時雨はそれを肯定するように苦笑して見せた。
「正直、隊長にそこまで心配される貴方が羨ましいですよ。・・・その脇差を預けられたという時点で、貴方は隊長の中で夜一様や喜助様よりも上の位置です」
「あのお2人よりも上って、我が君の中じゃ相当凄いですよ。他にいませんもの」
それまでただ黙って日番谷に向かって告げられる時雨の言葉を聞いていた天桜が、まるで時雨の言葉を補助するようにそう告げた。
そしてそれは、の斬魄刀の本体である彼女の言葉であるからまず間違いないといえる。
「ですから、日番谷十番隊長。護ってないなんて、信用されてないなんて、絶対に思わないでください」
「はっきり言って、俺たちにはただの自慢にしか聞こえません」
にっこりと微笑んでいるものの、先程までのものとは違い、時雨と久遠の笑顔はどこか黒かった。
その表情にびくりっと日番谷と勇音は方を震わせた。
「ああ、ちなみに。本物の雛森ですけど。日番谷十番隊長達の後をつけてる途中を捕獲して、絶対に安全な場所に匿ってますから」
「その時点から私と入れ替わっていたというわけです」
「ちなみに、俺と久遠が来たのは、もしもの時のためのただの保険です」
先程までの深刻な空気や、黒い空気から一転、あっさりと明るい空気にもって行けるこいつ等の感覚は本当にどうなっているのだろうと、日番谷と勇音は思ったがあえてそれは口にしなかった。
とりあえず、本物の雛森の無事が確認できてほっとした。
そして安心して軽く息を吐いた勇音が、ふとあることが気になって天桜を見つめた。
「そういえば・・・なんで、主の隊長から離れてるのに、この人は具象化できてるんですか?」
はっきり言ってが今現在いるであろう場所と、自分達がいるこの場所とではそれなりに距離がある。
そんなに遠く離れていて、斬魄刀が具象化できるという話は聞いたことがない。
「えっ?ここに斬魄刀自体はあるぞ」
そう言って時雨は先程から大事に抱えていた刀を見せた。
「・・・それでも、持ち主があんなに離れた状態で具象化できるなんて」
「隊長だからな」
勇音を始め、斬魄刀そのものを見せても納得できないといった様子の3人に、久遠はきっぱりと単純な言葉を告げた。
それに3人は多少呆気にとられる。
「隊長はこの瀞霊廷とその周辺には霊力の網を常に巡らせているからな。それを利用すれば、かなり離れていようが具象化は可能なのさ」
「我が君の莫大な霊力あればこそ、でございますわね」
さも当然でなんでもないということの出来る時雨、久遠、天桜の3人に、本当にどういう感覚をしているのだと3人は驚きと呆れが半々という状況だった。
しかしその3人の反応も大概予想通りだったのか、時雨は至ってあっさりと話を切り替えた。
「さてと・・・そろそろ、藍染五番隊長が隊長とかに取り押さえられてる頃だろうから、俺たちも・・・」
「・・・・・そう上手く良くかな?」
時雨の言葉にまるで答えるかのように、その場にいる全員にはまるで聞き覚えのない静かな声が響き渡った。
その声に驚いて全員が急いでそちらを振り返ってみてみると、奥の方から顔の上部だけを隠す虚のものに似た仮面をつけた白い着物姿の幼い少女の姿をした人物が姿を見せた。
「・・・・っ!」
その人物の姿を見た瞬間、他の面々は怪訝な表情をして警戒の色を見せたが、時雨ただ1人だけがその姿を目にした瞬間、僅かに動揺したように目を大きく見開いていた。
しかし他の面々はその時雨の異変には気づかなかった。
「・・誰ですか?貴方は」
「今お前達が話していた、藍染とかいう死神に少しばかり協力してやっていたものだ」
「じゃあ、てめーも奴の仲間か?しかもその仮面・・・虚か?!」
「仲間?あんな死神風情と一緒にしてもらっては困るな。ましてやそこらの虚如きとも・・・・・・おや?」
日番谷の問いかけを嘲るように否定してすぐ、その人物は何かに気づいたかのように日番谷の顔をじろじろと眺めた。
その様子に日番谷がまた怪訝そうな表情をした時、その人物は薄く笑って口を開いた。
「そうか・・・お前、あの時あの小娘が助力に来た小僧か・・」
「小娘・・・?」
「なるほど、なら・・・あの小娘の弱点になるかもしれないな・・・」
小声で何かを企むかのように深く笑んだその表情に、時雨は今度は明らかな動揺を見せ、まるで何かを確信するように顔の色を青褪めさせた。
「副隊長・・・?」
その様子に気づいた久遠が彼に声をかけるが、時雨は全く周りの音が聞こえていないとでもいうように、そのままの状態で微動だにしなかった。
「・・・この際、てめえの正体は後回しだ。だが、お前が藍染と組んでるって言うなら、てめえはこの場で斬るぜ!」
「好きなようにすれば良い。もっとも・・・お前にそれが出来ればな」
「ふざけるなっ!」
あくまでもこちらを莫迦にしたように言葉を口にするその人物に、日番谷が刀を構えてその人物に向かって走り出した瞬間、未だ青褪めた様子の時雨がはっとして日番谷に向かって叫んでいた。
「駄目です!日番谷十番隊長!!」
しかし何故止めるのか解らない時雨の言葉は既に遅く、日番谷はその人物の目の前で刀を振り下ろそうとしていた。
だがその場から逃げようともしないその人物は、ただ余裕の笑みを浮かべたまま自分の仮面をとり口を開いた。
「・・・お前に、この顔を斬りつけられるならな」
それだけ言ってより深く笑んだその人物の顔を見た瞬間、日番谷は目を見開いて驚いて振り下ろすはずの動きを止め、時雨以外の他の面々もその顔にただ驚くばかりだった。
「・・?」
日番谷が驚いたまま呟いたその通り、その人物の顔は普段彼等が見慣れているものよりも幾分か幼いが、確かにのものだった。
そして日番谷が動きを止めたその瞬間を見逃さず、の顔を持つその人物は日番谷に向かって容赦のない致命傷となるほどの攻撃を放っていた。
あとがき
色々とすっ飛ばしてすいません;
戦闘シーンは思いっきりすっ飛ばすし、藍染隊長復活シーンまですっ飛ばすし・・・;
私の文章力の限界です・・・
本当に申し訳ありません・・・
原作と違って雛森は途中ほどで天桜と入れ替わり、日番谷くんは主人公の事前準備にて原作とは違い助かりました。
時雨と久遠は天桜共々、実はここにまわされていたのです。(保険ですが;)
でも日番谷くん、1回助かったのに、今度は別件で危ない状態です・・;
どうなるのかは次回をお待ちください。
多分次回で、主人公と時雨の過去とか、主人公の正体とか、色々と暴露することになると思います。