ドリーム小説

蒼紅華楽 二




がルキアの刑について不信感を持ち隊首会に乗り込んだ翌日。
零番隊隊舎の共同執務室(別名・居間)に一同は集められた零番隊員達は、隊長であるから重要事項を発表されていた。
「先日、私のせいで十三番隊の隊長達に零番の事が知れ渡ってしまった。その事については先に皆に謝っておく」
「そんなの良いですよ。隊長」
「そうそう、隊長の取った行動は当然だと思いますし」
そう次々に自分に対して好意的な事を言ってくれる隊員達に、は真顔な表情とは裏腹に内心信頼できる部下ばかりで嬉しく思った。
しかしそれは口に出さずには話を続けた。
「隊長に知られたということは、いずれ十三隊隊員全てに知れ渡るのも時間の問題だ。よって、我々零番隊の存在を秘密裏にしておく必要は最早意味を成さない・・・」
「ということは・・・俺達、これからは表立って活動していくってことすっか?」
の云わんとした事を察した氷室が結論を口に出した。
「そうだ。これは上の馬鹿共もすでに了承済みだ。よってこれからは、『特秘処置機関』零番隊ではないく、『特別処置機関』零番隊と名を改めることとなった。まあ・・・やることと待遇は今までと変わらんがな」
ようはただ名前が微妙に変わっただけで今までとさして変化はない。
悪い事など何ひとつない。
むしろメリットの方があることに隊員達は気が付いた。
「じゃあ、あたし達これからは堂々と外歩いていいわけですよね?!」
「おっしゃ!これからは付け髭とか、妙な鬘とか、やけに変な形のグラサン着用じゃなくてもいいわけっすね?!」
「・・・・・久遠、お前そんなことしていたのか」
第九席・海城久遠の言葉に時雨は思わず引き攣った表情と呆れた口調でそう言った。
そんな格好で行動するということは当然ない。
零番隊が今まで私事で表にいく場合は、もっぱら夜になるべく目立たないように行動するのが常識だった。
よって久遠が口にした内容は全て彼の個人的なものなのだ。
他の数名の隊員達からも少なからず呆れたような、面白い生き物でも見つけたような視線を送られる。
も少し溜息が出ていた。
「・・・まあ、その通りだな。で、ここからが本題だが・・・・・一応、顔見せでもしておこうと思ってな」
「顔見せ・・・ですか?」
「ああ・・・こうなった以上、任務に限らず十三隊の連中と合同で何かする機会も出てくるだろうからな。今後のことも考え、少なくとも全隊長・副隊長には顔見せをしにいくぞ」
「そうですね・・・他の隊の者をここに招くということはできませんからね」
時雨のその言葉に全員が頷いた。

零番隊の隊舎は通常の尸魂界の空間にはない。
尸魂界の裏側といって良い別の空間に存在しているのだ。
そしてこの空間に行くためには2つの条件が揃わなければならない。
1つ目は隊長格以上の霊力。
これは零番隊の隊員全てが隊長格以上の実力者ばかりで成り立っているためである。
霊力自体が零番隊員である証にもなっているのだ。
零番隊は隊長を入れても9人と人数は少ないが、少ない数を埋めるにたる以上の実力者ばかりが揃っているのだ。
2つ目は合言葉。
これは当代の零番隊長が決め、隊長が変わればその度に合言葉は書き換えられる。
もっとも零番隊の隊長などそうそう変わることはありえない。
隊員達はこの合言葉を聞かれないよう周りに気を配って隊舎へと続く『抜け穴』を解放しているのだ。

「さっすがに、秘密裏でなくなったとはいえ、隊舎への行き方は秘密にしておきたいですしね」
「そうですね〜。私達のとっておきの秘密基地って感じですし」
「・・・牡丹」
氷室の意見はまだともかくとし、牡丹の的外れな言葉に時雨は溜息が出た。
はそんな会話を綺麗に流して続きを話す。
「ということで、本日は各自好きなように十三隊の隊舎を周って顔見せをするように」
「承知しました」
「面白そうすっね〜〜」
「最初はどこからいこうかなぁ」
牡丹のその言葉のすぐ後、以外の隊員全員が顔を見合わせ、そしてすぐに面白そうな笑顔を作ってこうはもらせた。
「「「やっぱりあそこからいくか!!」」」
隊員一致のその言葉に、1人蚊帳の外のは目をきょとんとさせて首を傾げた。








真面目に書類整理に取り組んでいた日番谷は、突如何かに気づきぴたりとその筆の動きを止めた。
「・・・・・松本」
「はい・・・?」
「・・・妙な足音がしないか?」
日番谷にそう言われて副隊長である松本は一瞬怪訝そうな表情をしたが、一応耳をよくすませて周りの音に集中した。
すると、確かに日番谷の言う通り妙な足音・・・基、大人数の足音が聞こえてきたのだ。
しかもどいうやらまっすぐこちらを目指している模様・・・
そしてその足音の主達は姿を現した。
「ちわ〜〜す!零番隊でーーーっす」
最初にそう言って入ってきたのは琥珀だった。
その最初の謎の人物のあまりに陽気な出現にすら面食らっていた日番谷と松本は、その後も次々と室内に雪崩れ込んでくる零番隊員達に何が起こったのか解らず思考を停止させていた。
反対に零番隊員達は楽しそうで、しかも日番谷をみつけると全員そのテンションはさらに上がった。
「おお〜〜!これが噂の日番谷十番隊長か!!」
「隊長の寝込み襲って無事だったっていう!」
「ちっさ〜〜〜」
次々と自分に向かって発せられる勢いのある言葉に、日番谷は暫し呆然としていた。
しかし、零番隊員のある言葉を聞いて松本が退いているのを見て、はっと我に返った日番谷は零番隊員に向かって怒気をはらんで言い返していた。
「誰が誰をいつ襲った?!それに小さいとか言うな」
「・・・後者はともかくとして、前者は同意できるな」
聞いたことのあるその言葉にぴくりと反応した日番谷がそちらを見ると、そこには昨日も見たの姿があった。
その少し後ろには相変わらず副隊長の時雨が従っている。
「お前・・・・・」
「正確には寝ている私を起そうとした・・・だ。だからお前もそんな目で見てやるな」
「はっ・・・はぁ・・・・・っていうか・・・・・」
「零番隊隊長のだ。部下達が寝ている私に近づいてまったく無傷ですんだ日番谷をまず見たいといったのでな、こうして迷惑だろうが隊員全員で来たわけだ」
「そうですか・・・・・・・・って!」
松本はの言葉にぎょっとして彼女を見た。
「ぜ、零番隊隊長って・・・・・今噂になってる・・・あの?!」
「あ〜〜やっぱり噂になってるのか」
松本の言葉に氷室はそうはいったが、まるで人事のような口調だった。
一方の松本はまだ信じられない物を見る目でを見てみた。
もっとも外見的には少女のであるため、彼女の実力を目の当たりにしなければ十人が十人こういった反応を返すであろう。
「・・・で、何しにきたんだ」
「ただの顔見せだ。我々の存在が露見した以上、これからは十三隊との行動を共にすることもあるだろうからな。その時のために隊長。副隊長には零番全員の顔見せを行うことにした」
「全員って・・・・・」
「うちは十三隊と違って少人数・・・9人しかいないからな」
「だから全員が必然的に席官だったりするんですよね〜〜」
真顔のままで告げると、けらけら笑ってそう言う久遠に、十番隊の2人は少し驚いていた。
「・・・そんな少人数でよく仕事回るわね」
「ああ、うちはその分実力でカバーしてるから」
松本の言葉に氷室はこともなげにそう告げた。
確かに実力でカバーしているというのは事実だが、今まで零番にほとんど任務がこなかったというのも事実である。
「まあ、本当は何人かずつで別々に各隊舎を周るつもりだったのだが・・・こいつらがまず最初にお前を見たいというのでな」
「・・・俺?」
何故そんな話になったのか解らないという怪訝な表情で日番谷は零番隊員達を見回した。
「・・・私の寝ているところに近づいてまったく無傷ですんだお前を見ておきたかったそうだ」
「どういう・・・・・そういえば何で俺は昨日お前にいきなり刀向けられたんだよ?!」
の言葉で昨日のことを思い出した日番谷は彼女にその事を尋ねてみる。
するとはやはり真顔で短く告げた。
「昨日も言っただろう・・・自己防衛本能だ」
「だから、なんだそれは?」
「・・・・・・」
再度日番谷に尋ねられ、はしばしの間の後小さな溜息を漏らした。
「・・・お前は比較的暮らしやすいところで生活していたのだろうな」
「はっ?」
何か独り言のように訳の解らない言葉を呟かれて日番谷は声を漏らした。
そしてすぐに踵を返して執務室の出口まで歩いていく。
「おいっ、ちょっ・・・」
「私は別に行くところがある。お前達は引き続き適当に周って顔見せをしておけ」
「「「は〜〜い」」」
日番谷の静止などまるで聞く耳も持たず、は部下達の返事を聞くとそのまま十番隊の隊舎を後にしていった。
が出て行って暫くして、時雨が少し呆然とした様子の日番谷に話しかけた。
「日番谷十番隊長、隊長の言う『自己防衛本能』というのは、隊長が生きていくうえで自然に身についたものなので仕方ないんですよ」
「・・・どういうことだ?」
「・・・・・隊長は、東流魂街八十地区の出身です」
その言葉に日番谷と松本はただ驚愕の表情を浮かべていた。









十番隊を出て六番隊の隊舎牢の目前までまっすぐやってきたは、そこで先日ルキアの牢の前で掃除道具を持っていた死神に会った。
「あっ・・・」
「・・・お前、確かルキアの所にいた」
「は、はい。四番隊の山田花太郎です!せ、先日は失礼しました!!」
「ああ、お前も私達の事を耳にしたのか。別に気にしていないからお前も気にするな」
「は、はい・・・」
最初は少し怯えていた様子に花太郎も、の言葉に少しだけだが安心する。
そしてふと花太郎はあることが頭によぎった。
「あ、あの・・・今日もルキアさんの所に?」
「そうだが・・・でなければこんな所に来るわけがないだろう」
「で、でも今は・・・・・」
『こっから出て来いてめぇっ!!』
花太郎が何か言いかけた時、ルキアの入れられている牢の方からなにやら怒鳴り声が聞こえてきた。
その声を聞いてすぐにはその場から駆け出していた。
「あっ、ちょっ・・・」
止めようとした花太郎の言葉は、当然宙に虚しく消え去った。



が牢屋の前まで行って足を止めると、そこには牢の格子に手をかけている赤髪の人物と、そちらに背を向けて座っている牢の中のルキアがいた。
「てめーなんかスグ死刑だス」
「縁起でもないことを本人に向かって言うな」
あまりにも聞き捨てならないことを口走ったので、は彼の背中を思いっきり蹴り飛ばした。
そしてその身体は宙を舞って壁へと激突した。
「れ、恋次?!!」
あまりの凄い音に反応してルキアは阿散井が飛ばされた方を慌てて振り返って見た。
そして起き上がった阿散井は蹴った張本人であるを睨みつけながら叫んだ。
「ってぇ・・・・何しやがるてめぇ!!」
「し、零番隊長!!」
恋次を蹴った相手を確認しようとしたルキアはの姿に思わず声を上げる。
そしてルキアの口から出た思わず人物名に、阿散井は思わず固まってしまった。
そんな2人の反応を無視し、は平然とルキアに話しかけた。
「元気そうでなによりだ、ルキア」
「は、はあ・・・」
「どうやらお前も零番の事を聞いたようだな」
「は、はい・・・花太郎から・・・・・」
「ああ、あの四番隊の奴か・・・・・・」
につられてルキアは普通に会話を進めてしまう。
一方の阿散井の方はというと、はっと我に返ってようやく2人の話に乱入してきた。
「ちょ、ちょっと待てルキア!」
「なんだ?恋次」
「い、今お前そいつ・・・いや、その人の事なんて呼んだ?!!」
「・・・零番隊長」
ルキアのその言葉に阿散井の顔は少し青褪めていた。
零番隊隊長の話は、彼が昨日六番隊長である朽木白哉から直接聞かされていた。
しかし聞いていたのはその存在と白哉が目の当たりにしたその実力だけで、容姿がまではどんなものかは聞いていない。
まさか自分より幼い少女の姿で、しかもこんなに早く会うことになるとは思っていなかったのだ。
そんなことをぐるぐると頭の中で思っていると、は阿散井の方をじっと見て口を開いた。
「・・・恋次というと、六番隊副隊長の阿散井恋次か?」
「は、はい・・・そうです」
に話しかけれ、阿散井は我に返って返事をする。
一方のは何か言いたげにしていたが、溜息をついただけでそれ以上は何も言わなかった。
「あ、あの・・・」
「私の事は気にするな。ルキアと少し話しをしようと思ってきただけだ」
「・・・ルキアとどういう関係ですか」
「・・・・・一応昨日顔を合わせただけだ。それと助けてやると言ったな」
「はっ・・・・?」
のその言葉に恋次は思わず面食らってしまう。
昨日顔を合わせただけの相手に対してなぜそんな事をいうのかと。
「・・・いや、でもそれなら今朽木隊長がこいつの減刑を願い出てるだろうし。みすみすこいつを見殺しになんかしやしないと思いますけど」
「・・・いや、あの人は私を殺すよ」
阿散井のその言葉に少しの間の後ルキアが重い言葉を口にした。
「私はよく知っている。あの人がどういう人のなのか」
「・・・だろうな。貴族の連中はやけに掟を重視する。特にあいつはその傾向が強いようだからな」
苦々しそうに呟くに何故か殺気に似たようなものを感じて阿散井の背筋に冷たいものが走った。
「だから私達が助けてやるんだ」
「いや、でも・・・・・」
それでも白哉がルキアの減刑嘆願する事を期待している阿散井は食いさがろうとした。
しかしその言葉はルキアのやはり重く苦しい言葉に遮られた。
「朽木家に拾われて四十余年・・・あの人は一度だって私を見てくれたことはないよ」
その言葉を聞いた阿散井は最早何も言えなくなり、はしっかりとした瞳でルキアを見つめていた。








あとがき

今回ギャグ色を強めたつもりです。
零番隊は基本的に全員仲が良いです。
人数が少ないために結束力もとても強く、その中心にいるのが主人公です。
ようやく恋次も登場で、ようやく原作の一コマを入れることができました。

これで明らかになりましたが、流れとしては現在一護達が現世で修行しているあたりです。





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