The star of fake fate
6:Threat




襲撃などまるでなかったかのように続けられたパーティの終わり頃、ロイとそのパートナーを一応勤めていたアイスは大総統に見つかり、「可愛らしいパートナーだね」と声をかけられてしまった。
女装だけでもストレスが溜まっていたアイスは、その一言で完全にぶちきれた。
さすがに公式のマナーをわきまえているアイスは、その場では多少怒りを露にしてはいたが、なるべく平静を装っていた。
しかし仮住居に戻ってからの荒れようは、パーティの間抑えていたため余計に爆発してしまい、不機嫌なまま眠ってしまった。
よって「後で説明する」と言われたことは、翌日までお預けとなってしまった。
誰もあの状況のアイスに対して意見など言えるはずがない。
そして翌日、それなりに機嫌の直ったアイスの口から事の説明が成された。



「つまり、あの翼は創命主の象徴みたいなもので、力が完全じゃない今は、あれを出してないとそれなりの能力は使えないってことか?」
「そういうことだ」
エドの確認の言葉にアイスはテールが煎れたお茶を飲みながら肯定した。
「しかし、記憶を消したり、錬金術でもないのに壊れたものを一瞬で直すとは・・・」
「それもあれだけのものを・・・」
冷汗を流しながら言うエド達に対し、アクラは当然の事とでも言うように軽く言う。
「な〜に言ってるの。あんなの十徒が全員そろえば簡単らしいわよ」
「それどころか十徒がそろえば、死者を生き返らせること、世界を創造したり消滅させる術も可能になりますからね」
ウォールが真顔で言ったその言葉に、この『世界』の側の者達全員が思いっきり動揺する。
特に錬金術師である者達の動揺ははかりしれない。
「死者を生き返らせるだと?!」
「そんなこと・・・・・できるわけないだろう!それどころか・・・世界を・・・」
「ですが、アイス様にはそれが可能になってくるんです」
それに対してあらかじめ事の事実を知っている者達は冷静そのものだった。
しかしそれが事実であってもエド達には納得できないことだった。
「だからって・・・」
「それくらいできなければ・・・葬側とはやりあえないのよ」
突然の新しい声に一同が一斉にそちらに目線をやった。
そこにはエド達にはまったく知らない人物、しかしアイス達にはよくしった白色が立っていた。
「スノウ・・・」
「やっほ〜〜アイス、それに皆〜〜」
手を上げて明るく挨拶をすると、ソファまで歩いてそのまま腰をかけた。
そしてソファに座って自分からは何も言わずに脚をぶらぶらさせているスノウに、アイスは溜息をつきながら話し掛けた。
「どうだったんだ?」
「ん〜〜?そりゃあ、もちろん言うこと聞かせてきたわよ〜〜。大体そんなのわざわざ言わなくてもアイスは『知る』ことができるじゃない」
「・・・・・お前な」
本当に特定の人物と接している時のぶりっことは別人だなと、アイスだけでなくスノウをよく知るその場の全員が思った。
もっとも特定の人物に接している時の性格も、今自分達と接しているこの性格もスノウ本来のものではない。
スノウの本性はあの外見年齢をあげた冷徹な雪女の姿での性格のほうだ。
しかしあの姿での性格は遠慮願いたいと全員が思っていた。



ただスノウの事を知らないエド達は呆然とした表情でスノウを見ていた。
全身真っ白というその容貌は変とも思えるが、不可思議な感覚があり、どこかその白に魅入ってしまう。
「おい・・・・・」
「えっ、あっ・・・・・」
アイスの呼び声で正気を取り戻したエド達は、今度は不信そうな目でスノウを捉える。
「・・・こいつ、誰だ?」
「スノウホワイト・・・簡単にいうと俺達の仲間」
「本当に簡単な説明ですね・・・」
ホークアイの呆れを含んだような言葉に、ブリックとテールの2人が苦笑する。
「こいつにはある事を任せてたんだ」
「任せてたって・・・・・何を?」
「脅し」
スノウがさらりと言った一言に場の全員が固まってしまった。
「スノウ!」
「え〜〜!だって事実だし〜〜〜」
「だからって足蹴にしろと入ってないぞ」
「足蹴にしたんかい?!」
「うん」
アイスが『知詠』で知ったその事実に思わず焦ってブリックは叫んだが、スノウはなんともないようにただ軽く頷いた。
「自力じゃまともに実体化もできないし、あの空間からでれないくせに!あたしにたてつこうなんて、本当に腹立つのよね〜」
「・・・だからって足蹴にしてやるなよ」
足蹴というその事実に合掌を送っている人物も数名いた。
一方話が見えてこないのはエド達だった。
スノウが一体誰に対して脅しをかけたのかすら解らないのだから仕方がない。
しかし次のアクラの言葉で騒然とする。
「・・・この『世界』の自然始祖も哀れよね」
自然始祖という名に思わずエド達は動揺して目を見開いたり、立ち上がったりした。
「な、なあ・・・確か自然始祖って・・・・・俺達で言う真理のことだよな?」
上擦ったエドのその言葉にアイス達はこくんと同時に示し合わせたかのように頷く。
そして改めて確認できたその事実から、特にパニックを起こしているのは、かつて真理に出会って酷い目にあったエルリック兄弟だった。
「脅し・・・どころか足蹴ぇ?!」
「そんな・・・・・よりにもよってあれを!!」
「・・・前に無茶するためにここの始祖を『脅した』って言ったろ?あれは実は俺は直接行ってなくて、スノウにその役を任せてたんだ」
「ようするに、正確にはまだ脅しの最中だったんですよね」
アイスの言葉を引き継いで言ったウォールの言葉は、さらりとしたものだったが恐ろしいものだった。
「いや・・・でも、なんでそいつにお前の代わりが・・・・・?」
「・・・こいつは俺達の『世界』の始祖の分身兼配下の1人だ」
その言葉に一瞬何を言われたのかが解らなかった。
しかしその意味を理解した瞬間、この『世界』の者達は驚きを通り越した目でスノウを見た。
「・・・そんな方が、どうしてここへ」
「ああ、別に敬語なんて使わないで良いぞ」
「すっかり人間に馴染んできとるしな〜」
「というよりも、こんな白い謎の生命体に敬語を使うくらいならアイス様やアクラ様に使ってください」
ウォールがさらりと呟いたその一言に、この『世界』の者達はぴしりと固まり、違う者達は「言ってしまった」という表情になり、そして当のスノウは青筋を立てていた。
「ウォール・・・・・誰が、誰が白い謎の生命体ですって〜〜〜!」
癇に障る事を言われたスノウがきれて戦闘体制に入ると、辺りの気温が急激に低下していった。
それとほぼ同時にウォールもナイフを構えて戦闘体制に入る。
まさに一触即発のその状態は、1人の人物のたった一言であっさりと終結する。
「2人とも止めろ。命令だ」
アイスのその言葉に真っ先に反応したウォールはすぐにナイフを収めて座り、続いてスノウも不満そうな表情はしているものの大人しく座る。
すると自然に部屋の中の気温も元に戻った。
そしてやはりその光景に「いつものことだと」慣れている者達と、今回初めて見せられた人物達の呆然とした反応の違いは対称的だった。
「・・・アイスって、やっぱり何気に凄いのな」
「・・・そうみたいだね」



暫く静かな空間が続いた後、話を切り出したのはヒューズだった。
「で、そこの彼女はどんな脅しをしてきたってんだ?」
「星の位置を弄るように言ったのよ」
「・・・星の位置を弄る?」
主語のないその言葉の意味が解らずにエド達は首を傾げる。
そうしているとアイスが1つ溜息とついて詳しく説明し始める。
「例の遺跡の奥に泉があると言っただろう?」
「ああ、確かそこで・・・3日後の午後6時にそこで体を清めれば、晴れて自由の身なんだよな?」
「ああ、そうだ。で、実はその泉の真上にある星座がきていなければいけないんだ」
「でもその星座って・・・季節とかも問題だけど。そもそもあの辺りじゃ見ようとしても見れない星座だからね〜」
「だからこの『世界』の始祖に言って、無理やりその時だけでも地軸を捻じ曲げさせる必要があったんだ」
アイスが本来の力を持てば、アイス個人で可能になることだが、今のアイスにはその力はない。
だからこそこの『世界』の始祖である真理に頼む(脅す)必要があったのだ。
「で、その正座ってなんなんだ?」
「・・・・・南十字星」











あとがき

お待たせしました;
そして予告通りの白い生命体の登場です。
真理を足蹴にして脅したと言っていますが、実際にはもっと恐ろしいこともして脅していますから・・・
始祖の分身兼配下ならスノウの方が真理くんよりも立場弱いのでは?と思われた方いらっしゃると思いますが、あくまでもスノウのが私的に上なんです;
なぜなら、それはスノウの主である始祖マーテルが他の世界の始祖と比べるのも馬鹿らしいくらい、郡を抜いてレベルの高い始祖だからです;
だからこそアイス(創命主)を見定める権利があるのですし・・・
その分身兼配下のスノウ達は通常の他の世界の始祖よりもだんとつで立場が上です。
まあ、そんなお馬鹿で私的ドリームな設定はお気になさらずに・・・(おいっ;)
次回で決着かもです・・・・・(曖昧)
最後にお願いですから石は投げないでください・・・;






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