華空の出会い 中編




2人(?)の異世界からの来訪者がやってきてすでに一週間が経っていた。
いまだアイテムは完成しないようでラスはうんうん唸っている。
というか、メリィを構えない哀しみと、ウォールという恐怖の対象に怯えて精神的にまいっているといった方が良いのか・・・・・
一方でメリィの方はというと、その愛らしさから城中の全員に必要以上に可愛いがられて本人はとても嬉しそうだ。
そんな中でもメリィを一番可愛がっているのは約2名。
「アイス様、アクラ様、メリィ様〜。お茶にしませんか?」
「おっ!サフィにテール、グッドタイミング」
「ケーキだ、ケーキ♪」
「うわ〜い♪めりぃけーきすき〜」
はしゃいで喜ぶ幼いメリィに全員が可愛いと思ったがその中でも2人は完全に頬の筋肉が緩んでいる。
「・・・・・メリィ様〜〜!可愛いすぎです!!」
感激のあまりメリィを抱きしめたのはサフィルス。
そんな父を見てテールは呆れて者もいえないという顔になっていた。
「でも本当に可愛いよな」
笑ってそう言ったのはもう1人の緩みきった顔の人物であるアイス。
いまだサフィルスに抱きしめられたままのメリィに近寄って目線を合わせ、そして真剣な顔で思いもよらないことを言った。
「なあ、メリィ・・・お前アクラと替わらないか?」
「ふにゃ?」
「あ、兄上?・・・」
アイスの言葉に言われた当のメリィは解らないというように小首を傾げ、傍観者2人は呆然とし、そしてアクラはこめかみの辺りをぴくぴくさせている。
「だって妹にしてはアクラ生意気だし、それに比べてメリィは性格可愛いよな」
などとアイスが楽しそうに言っている時傍観者2人は気づいた。
アクラが密かに攻撃呪文を唱えていることに・・・・・
「誰の性格が可愛くないってーーー!」
アクラの叫びとともに今日も奈落城のどこかの部屋の壁が破壊されたという。


「いや〜、これまた随分とはでにやったね」
壊れた部屋の壁を見てベリルが感嘆の声を上げる。
「マスター、感心している場合ではありません」
「・・・・・スノウに貰った瞬間修復のアイテム・・・まだ残りあったかな?」
などとぼやくアレクの表情もどこか感心してように見えるのは気のせいだろうかと一同は思った。
その向こうで今回は今までの中でも特に酷いということで父であるプラチナと教育係であるジェイドに事情聴取される兄妹の姿があった。
「だって!兄上が・・・」
「・・・アクラもアクラだが・・・・・アイス、お前も言って良い事と悪いことがあるぞ」
「別に本気でアクラとメリィが替わればいいとは思ってないけど・・・」
「まあでも・・・メリィ様がアクラ様よりも可愛い性格っていうのは本当ですね」
「ジェイド?」
「・・・・・・」
今にもまた攻撃しそうなアクラと無言の圧力で何か言いたそうなプラチナに睨まれてさすがのジェイドも少し慌てる。
「えっとですね・・・・・」
「うるっさいぞ!お前ら!!」
はあ、はあと息を切らして現れたのはラス。
そうやらここからかなりは離れた所にあてがわれた自分の部屋から壮大な破壊音を聞きつけようやくたどり着いたというところだろう。
「ら〜す〜♪」
ラスを目にして嬉しそうに駆け寄ってきたメリィを見た途端、それまで怒り絶頂という表情をしていたのが嘘のようにラスの顔の全筋肉が完全に緩んだ。
「メリィ〜!会いたかったぞ〜〜」
メリィを抱き上げると嬉しそうに頭を撫でてやる。
すると今までの中で1番嬉しそうな表情をメリィはした。
どうやら頭を撫でられるのが凄く好きらしい。
「そういえばラス。まだアイテムは完成しないのですか?」
幸せなひと時をテールにより中断させられ多少不機嫌になりつつもすでにこの場に表れたときの怒りは完全に消えているラスはぶっきらぼうに答えた。
「それが、アイテム作成のために必要な材料がどうしても1つ手に入らないんだ」
「そもそも必要な材料って何があるんだ?」
アイスに尋ねられ1枚の紙切れを取り出す。
材料の書かれたもののようで、魚のヒレ1つ、鳥の羽1本、ヤモリの目1つ、狼の毛少々、猪の牙1つ・・・・・とまるで黒魔術(?)で何か怪しい薬でも作るような内容だったので思わずひてしまう一同。
ただしメリィはよく解っていない。
で、肝心の絶対手に入らない材料というのは・・・
「今夏だろ。雪の結晶なんて冬にでもならなければ手に入らないからな・・・」
諦めて冬までいるしかないかとラスが呟いた瞬間、ラスとメリィを除くその場にいる全員の脳裏にある少女の・・・姿をした人物(?)が浮かんだ。
「ラス・・・さん?」
「なんだよ」
「手に・・・入るかもしれませんよ」
サフィルスの告げた言葉に数秒ラスの周りの時間が凍りついた。
そして覚醒。
「どういう・・・ことだ?」
「我々の知り合いにスノウホワイト・・・スノウという方がいまして」
その人物(?)はこの世界で『冬』を司っていること。
また、彼女(?)の本体とも1部ともいえる彼女(?)が普段居る北の大山は年中吹雪に覆われた雪山だと説明をする。
「そういえばあいつ・・・ここのところ来てないわね」
「ああ、昔からあいつ熱いのとか暑いの・・・特に夏は苦手だから」
おかげでここ数日の間実に平和に生活できた・・・もとい、妻とおもいっきりいちゃつけた人物が1人いるがそのために恥ずかしい思いをしている人物も1人いる。
「ふーん・・・それじゃあ、その雪山に連れて行ってくれ」
『えっ・・・!』
思わぬ言葉にあの雪山を知るものたち一同の声がはもる。
しかし当然といえば当然なのだ。
あの自然の厳格と脅威を絵に描いたような・・・もといそのものともいえるあの雪山に好き好んで登る人物などスノウの所に遊びに行く時のアレクぐらいだ。
もっともその時は多少とはいえ吹雪をスノウが弱めてくれるが、スノウはアレク以外の相手には容赦がない。
そいうわけで、いつもスノウの方から城に遊びに来ることになるのだが、今が夏ということはそれは期待できず、アイテム完成を急ぐならあの山を登ってスノウに会いに行くしかない。
「あっ!ならあたしも行ってみたい」
名乗り出たのはアクラ。
そういえばアクラはあの山の事を知らない。
知っていれば絶対登りたいなどというはずがない。
その横で今度は首を横におもいっきり振るアイスの姿があった。
「お、俺は今回はパスな」
「と、いうかそれ以前にアイス様にはお勉強がありますよ」
すかさず言ってきたテールの言葉にアイスは内心それも嫌だと思った。


結局、ラスとアクラに火属性4人と風属性3人が同行して雪山のスノウに会いに行くことになったという。



BACK   NEXT