Lost Mise 〜失われし約束〜
四章



朝一番にアレクの部屋に診察に訪れた専属医師に「どうしてすぐに呼ばなかった」と軽く怒られた後、プラチナはアレクの部屋を後にした。
アレクの容態は軽い風邪程度のものですぐに良くなるだろうという話だ。
しかし念のために今日の仕事は当然休みらしい。
プラチナが廊下を歩いているとサフィルスとジェイドの2人に入れ違いに会った。
サフィルスの方は散々大げさと言えるほどに文句の嵐、ジェイドの方はからかい口調の嵐で攻めてきた。
そのせいか、それとも自分も体調が悪いのにきちんと横になって寝なかったせいか、体が少し疲労感に支配されている。
その為に廊下の角を曲がる所で人の気配が読めず見事にぶつかってしまった。
それと同時にどさどさと何かが落ちる音。
「す、すいません!」
誤り慌てて落としたものを拾い始めたのは司書のカロールだった。
「いや・・・こっちも不注意だった」
そう言ってカロールの落としたものを拾うのを手伝いながらふとプラチナはある事に気がついた。
カロールと自分が拾い集めているのは本である。
それ自体は問題ではないのだが問題はその本の内容が同じであること。
それも・・・・・
「・・・植物関係の本ばかりだな」
特に樹木に関するものが多い。
「あ・・・ええ、アレク様が退屈だと仰るのでお部屋まで持っていくところです」
「それで何故植物の本ばかりなんだ?」
「アレク様、昔からお好きなんですよ。植物が」
そういえば昨日部屋で読んでいたのも植物に関するようなものだったかもしれないとプラチナは思い出した
「特に椿がお好きなんですよ。中庭のあの椿もアレク様が小さい時に挿し木を植えられたものだって言う話ですし」
カロールのその言葉を聞いた瞬間プラチナは何かの違和感に襲われた。
確かにそれは事実だが何かが違う。
何かが欠けている・・・
「っ・・・!」
頭がまた痛み出した。
ここに帰ってきて以来何度かあったが今回の痛みはその中でも最も酷いものだ。
カロールが心配そうにプラチナの顔を覗き込む。
「あの・・・大丈夫です、か?」
全然大丈夫ではないがプラチナはこくりと頷いて拾い終わった本を両手に持って心配そうに見るカロールの視線を背にその場を立ち去った。


自室に帰ってきてすぐにベッドに横になり、天井を見ながら考え込む。
都会にいたときも何度か頭がなぜか痛くなることはあったが、ここに帰ってきてからは頻繁に頭が痛くなる。
そして、頭が痛くなるのは決まって姉がらみばかり。
どうしてだろうかと考えているとまた頭が痛くなり始めたのでもう1つ気になっていた事に思考を移した。
あの中庭の椿の花・・・
椿の花は通常、10月下旬から4月上旬にかけて咲く。
最盛期は2月下旬から3月の初めまで。
暑い夏の盛りである今の時期、あんなに満開に咲いているはずがない。
いくら考えても結論が出ないまま時間が過ぎて行った。
「ぷらちな、いるですか?!」
突然ノックもせず扉を開けて入ってきたのはプラムだった。
慌てた様子で息をきらしているが、呼吸を整える時間も惜しいと言う様子だった。
「どうした?」
「あ、あれくがいなくなったです〜」
その一言に今まで興味がなかった思考が一気にそちらに反応し慌ててベッドから跳び起きた。
「なん・・・だと?」
「さっきお部屋にいったらいなかったのです・・・じるさんにぜったいあんせいって言われてたですのに・・・」
アレクがいなくなったことで実はかなり混乱しているようで、プラムはその後自分でも何を言っているのか解らない事を話していた。
プラムが混乱している間、愕然としていたプラチナの脳裏にある風景が浮かんだ。
「えっ、えっ!どこにいくですか?!」
混乱から戻ったプラムが見たのは慌てて部屋を飛び出した良くプラチナだった。
プラチナは尋ねるプラムに答えぬまま一目散に走り出していた。
プラチナには何故かアレクのいる場所に心当たりがあったのだ。


神社の裏の獣道を滝へと続く方向とは別方向に進んでいく。
そしてしばらく進むと、覚えていないはずなのにどこか見覚えのある場所に辿り着いた。
そこは紅い鳥居が中央に放置された広い野原。
そして、そこに1人佇む金の髪の少女は昨夜と同じように虚ろな瞳をしていた。
その瞳を見ていると頭が真っ白になり、自然と身体が操られるように前に出て・・・
いつの間にか彼女を抱き寄せて口付けていった・・・・・


「んやぁ・・・あ・・あん・・・」
自然の流れともいうように始められていた行為にどちらとも不思議に思ってはいなかった。
ただ今は、相手の熱を感じていたい・・・・・
ただそれだけの為に、狂ったように行為を続けていく。
「んん・・そ・・はぁ・・イイ・・・・・」
アレクの太腿を撫でていた手が秘部へと移動する。
指をほんの少し、慣らすように入り込ませていくと、今までのアレクからは信じられないほどの嬉しそうな声があがった。
「あっ・・・もっと・・ちょ・・だ・・」
放置されているプラチナのもう片方の手を自分の口許に持ってくるとその人差し指を進んでぺろぺろとなめだす。
夢中な様子で、更に中指を、薬指を、小指をなめていく。
親指もなめようとしたところでプラチナに止められ、アレクが今までなめていたその指のうち3本をいっきに彼女の口の中に入れる。
「ふ・・うふぅ・・・・・」
無理矢理3本の指を狭い口内で掻き回されて苦しそうに声をもらす。
その様子を見て意地悪そうに笑うと、プラチナは唇をアレクのみ身元まで持っていく。
「そろそろいくぞ・・・」
びくんとその甘い声だけで充分反応したのに、更に耳をなめられ、甘噛みまでされる。
耐え切れなくなって声を出そうにも指を入れられているため、声は口の中で溶け消えていく。
指をずるりと引き抜かれ、異物のなくなった感覚に安心しつつも残念そうな表情のアレクを見て笑うと、指よりも明らかに質量の大きいそれを彼女の中に一気に押し込んだ。
「ん!ふ・・・んんふっ・・・」
「すぐに好い声上げさせてやるから我慢していろ・・・」
声色は優しいが笑みはやはり意地悪そうに、乱れるアレクを楽しそうに見下ろす。
「・・・いいぞ」
そう言うと、口から指を引き抜いてやる。
「んひゃあああ!・・・はぁ・・ああ!やんあっ」
「ほら、好きなだけ鳴け。あんなに鳴きたがっていただろ?」
プラチナの動きに合わせて上げる声は全て彼への貢物とでもいうように、彼の言う通り声を上げられなかった間の分まで鳴いているようっ立った。

2人が意識を手放したのは同時だった・・・


目を覚ますとそこには誰もいなかった。
夢だったのかとも思ったが、確かに暖かな温もりが自分に移り残っていた。
どこか懐かしさの漂うこの場所で、彼は辺りを見渡して彼女をいつかのように探していた。
「・・・っ!」
あと少し反応が遅ければ自分は肩からざっくりと切られていただろう。
突然のさっきに身を翻して何とか避け、体勢を整え、自分を切りつけたであろう凶器のナイフを持っている人物を見て愕然とする。
「・・・サフィ・・ルス?」
その人物は確かに屋敷の執事であるサフィルスであった。
しかし、凶器らしきナイフを握る彼の瞳はプラチナが知る者とは違ってとても冷たい・・誰かに操られているような、彼本来のものではないような気がした。
考える暇もなく再び振り下ろされるナイフを避けられはしたが、体勢を崩してしまう。
次は確実に受けてしまうであろうという体勢で覚悟を半ば諦めの境地で覚悟を決めていると、サフィルスの手が別のナイフに掠められ、彼はそのナイフを落とす。
「大丈夫か?!プラチナ!」
「ロード・・・」
思わぬ人物の登場にプラチナは目を見張る。
まさか、この人物にたすけられるとも思っていなかったが、どうしてナイフを扱えるのかという疑問もあった。
「まだ・・・」
プラチナに手を貸そうとした矢先に、サフィルスがナイフを拾おうとしている事に気づき即座に首元を叩いて気絶させる。
「あっ・・・」
サフィルスが倒れこんだ直後に、そこにあった白い花の花びらが宙を待った。
それはまるで、雪のようにプラチナには見えた・・・
「よし、とりあえずこれで・・・」
一仕事終えたような表情のロードにどさりという音が聞こえた。
「!プラチナ!?」
なぜか倒れこんだプラチナに駆け寄り、呼びかけるがいっこうに返事は返ってはこなかった。


思い出したよ・・・全部・・・
君の事も・・・
失くした君との約束も・・・・・



あとがき

くらっ!!!
プラチナがアレクを捜しに行ったあたりからとても暗くなってきています・・・
いや・・そりゃ元々くらい話でしたけど・・・
今回今まで以上にアレクの壊れ度&プラチナの鬼畜っぷりが最高潮・・・(か?)
本当にすいません!!!(土下座)
しかも、サフィ〜〜!ごめんなさい〜〜〜!!
操られています!ええ、誰とは言いませんけど・・・
そして、最後にロード大活躍!
いいところ独り占めしている気がします。
それにしても・・・今まで出1番長いきがします・・・


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