Open life
弐(中)・予選開始


その日の青春学園高等部のグラウンドは異常なほどの盛り上がった中等部・高等部両生徒のためにかなり大変な状態だった。
部活所属の生徒だけとはいえ、そこは部活動が盛んな青春学園。
その人数は総計の9割程度である。
いくら外とはいえ、そのあまりに密度の高さと初夏ということもあり、かなり暑苦しくて仕方なかった。



「うっひゃ〜〜・・・すごい人数っスね」
「ホント、ホント!中等部と高等部の部活所属生徒でしょ?これ全部」
「まず間違いないな。そして、これが全部敵だ」
とりあえず、さすが比較的安全(?)な場所を確保している中等部男子テニス部レギュラーの面々は、逆にこれだけいると壮快とでもいうべき数の人数を珍しいものでも見るような視線で見ていた。
そして、その全員の眼つきが明らかに獲物を狙うようで、少し引いてしまうほどに亜やる気がありすぎるというものだった。
「たかが・・・行事で・・・」
「まあ・・・賞品が賞品だし・・・・・」
「俺たちもそれにつられてるわけだしね・・・」
深い溜息を一部を除き全員がしたのとほぼ同時に、あれだけ騒いでいた人々の喧騒がぴたりとやんだ。
何事かとよく目を凝らしてみてみると、学校の校庭に付き物とされている、鉄作りの壇上にマイクを持った人物が上がってきていた。



『Ladies and gentlemen!長らくお待たせしました。これより、『中等部・高等部合同部活対抗出し物大会』の予選オリエンテーリングバトルを執り行います!!』
その言葉を聞いた瞬間、登場以来押し黙っていた人たちが一斉に歓声を飛ばした。
ただ、レギュラー陣はいきなりのテンションの高い人物の登場に少しあっけにとられていた。
というよりも、中等部のほとんどの生徒がそうだといっても過言ではない。
高等部の生徒は免疫がすでにできているような雰囲気で、平気であのテンションにあわせて盛り上がっていた。
『本日の司会進行及び第1ラウンド審判の高等部生徒会広報担当の雪芽日菜野です。それでは早速皆さん、受け付け時に各部の部長さんにお渡しした封筒を空けて下さい』
雪芽の言っている封筒は、今日の登校時に、参加すると受け付けた部の部長に生徒会から手渡されていたものだった。
この受付を期限までしなければ参加は認められない。
その理由はおそらく、この封筒を貰うことができないためというのが原因だったのだろう。
この封筒は今朝手渡され、指示があるまで中身を空けることは禁じられていた。
もし空ければその場で即失格とも言われている。



手塚は手渡されていた封筒を菊丸たちに急かされながらも空けた。
中に何が入っているのかと思えば、それは俗に言う『知恵の輪』だった。
『それではオリエンテーリングのルールを通達します』
その言葉に知恵の輪に気を取られていた面々がまた雪芽に注目する。
『いたって簡単。この校内の各所にいる高等部生徒会全役員の出す指令をクリアし、その封筒に同封しているスタンプシートにクリアごとに各役員から1つスタンプをもらってください』
言われてさらに封筒の中を探ってみると、たしかにスタンプシートが入っており、さらにもう1枚すこし大き目の紙が入っていた。
『スタンプがクリアの証拠になりますから絶対に貰い忘れないで下さい。クリアしたら次の役員がいる場所を教えてもらい、そこを順に目指してください』
大きめの紙を広げてみるとそれはこの高等部の敷地全体の地図と校舎内の見取り図だった。
『なお、中等部の生徒さんはまだ高等部全域を把握していないはずですので、特別に地図と見取り図を同封しています。それで、最終的に我らが高等部生徒会会長様の指令をクリアした部に本選参加の栄誉を与えます』
そう言った瞬間、にやりと何かを企むような笑みを浮かべると雪芽がポケットからストップウォッチを取り出してそれを高く掲げる。
『では第一ラウンド、私からの指令です!もう察しの方もいると思いますが、各部に配布しましたその知恵の輪を解いて私の所に持ってきて下さい。制限時間は20分、ずるは禁止・・・では』
少しためを作るとさらに笑みを深くして勢いよくストップウォッチのスタートボタンを押した。
『はじめ〜〜〜〜〜〜!!』
その宣言と共に、周りから一斉にもの凄い金属音が響き始めた。



スタートからすでに7分・・・未だにこの指令をクリアしている部は意外にもいないようだった。
無論、中等部男子テニス部の面々もだった。
「ちくしょ〜〜〜!はずれね〜〜〜〜〜・・・・・」
「こんな難しい知恵の輪初めてだ・・・」
「あっ!そういえば・・・・・・」
ぽんと手をついて不二が何か思いついたようにごそごそとポケットを探り始める。
すると、不二は1つの手帳を取り出した。
「不二先輩・・・なんスか?それ」
「これはね、生徒会役員の人たちのデータと、今回のオリエンテーリングに関するちょっとした情報だよ」
「・・・・・そんなものどこで手に入れたんだ」
「譲ちゃん・・・正確には譲ちゃん経由の翔さんといったほうが良いのかな?」
何やら少し黒い笑みをもらす不二に対し、普段なら一同は退く所ではあるが今回に関しては『持つべきものは幼馴染』と深く生徒会役員と繋がりのある不二に感謝した。
「それで、それで!なんて書かれてるのさ」
「え〜〜っとね・・・・・雪芽日菜野さんはっと・・・あった。特技は鍵あけとか声帯模写らしいよ」
「か、鍵あけ?声帯模写??」
「・・・・・・・鍵あけ・・・それでこれなんっスか?」
そう言って、少しあきれた表情で見るリョーマの先には、知恵の輪に絶えず奮闘している大石の姿があった。
「そうみたい。で、今回の知恵の輪は雪芽さんが頼んで作ってもらった特注品らしいよ」
「・・・どうりで」
なかなか解けない知恵の輪はおそらく、雪芽の意地悪心もあるのだろうと一同は深い溜息をついた。
だがそうしている間、ついに知恵の輪を解けた部が出始め、スタンプを貰って次に移動しているようだった。
「や、やばいっスよ!」
「不二!解き方とか書いてないの?!」
「ないね」
その瞬間のレギュラー陣の落胆振りは計り知れなかった。
しかし、解き方まで記載されて、それをそのまましたのならずるになるのでこれはこれで良かったのかもしれない。
「・・・・・ちょっと、待てよ」
何かを思い当たったのか、今まで奮闘していた大石がぐるりと時計回りに知恵の輪の片方を回した。
すると、あれだけ苦労していたものがあっさりと解けた。
「お、大石!!どうして解ったの?!」
「いや・・・鍵空けが得意だっていってたろ?それで、鍵って時計回りに回して空けるから・・・ひょっとしたらって思って」
「ビンゴだったみたいだね」
ある意味単純ともいえるその答えに一同は疲れたように溜息をついた。





スタートから15分でスタンプ1つ目をゲットした一同は、次の役員が居るといわれた図書室を目指していた。
さすがに第一ラウンドでそこまで脱落になった部は少ない。
すでにクリアした部はそれなりに多いようで、一同は急いでいた。
普段なら、『校舎の中は走らない』が定説であるが、どういったわけかこの日は教師陣公認で、走ってもいっこうに構わないということになっているらしい。
「翔さんが手まわしたんだな・・・」
「それ以外に何が考えられる」
改めて彼のこの学園での影響力の強さを認識しただけのことだった。



息を切らせながら到着した図書室には1人の小柄な少女が居た。
自分たちを見た瞬間小さく「あっ」と声を漏らしたようだった。
「・・・生徒会の方ですね?」
「はい、そうです。いらっしゃいませ。あたしは第2ラウンドの課題提示者で、高等部生徒会企画担当の」
「も、森根・・・春南さん!?」
名乗ろうとした時、それを遮って菊丸が驚いたように彼女の名前を言い当ててみせた。
「あら?あたしのこと知ってるんですか?」
「どうなんだ?英二」
「し、知ってるもなにも・・・・・その道じゃ有名な売れっ子マジシャンだよ・・・・・」
「マジシャンって・・・・・・手品師?!」
こくこくと必至に首を何度も縦に振るのをみて、それが事実であると知り、とてもそうは見えないと一同は思った。
「そんなたいしたことないですよ、あたし」
「あの・・・それで森根さんは何を?」
ころころと嬉しそうに笑う森根にいいかげん話が脱線してきてると思った大石が話しを指令の方に戻そうと声をかけた。
「あっ!そうでしたね、すいません。あたしからの課題はこれです」
そういって取り出したのは1枚のコインだった。
「これを今から投げて、キャッチします。コインの入ってる手を当てて下さい」
「解りました」
知恵の輪よりもまだまともで手っ取り早く終わる内容に一同は内心ほっとした。
そして合図とともにコインが投げられ、森根がキャッチした。
「はい。答えをどうぞ」
にっこりと微笑んで握りしめた両方の手を一同の前に突き出してくる。
日頃テニスで目のほうも鍛えられている一同は何か思案している菊丸を除く満場一致の結果あっさりと答えを出した。
「ひだ・・・」
「両方!」
手塚が言いかけたのを遮って、勢いよく割り込んでそう言った菊丸の一言に全員驚きを露にした。
「え、英二先輩?」
「両方・・・ってことはないだろ・・・」
「・・・・・・・・・」
両方ということはありえないだろうともう一同に対して、菊丸は少し緊張したような表情で森根の答えを待っていた。
それに森根はにっこりと微笑むと両方の手を開いて見せた。
「大正解です」
「「「「「「「「えっ・・・・・・・・?!」」」」」」」」」
「やった〜〜〜v」
あまりに意外な展開に驚く他の面々に対し、当てた菊丸ははしゃいでいた。
「ふふ・・・あたしは、『入っている方の手』とは言っていませんからね」
確かに言われたのは『入っている手を当てる』ということで、『どちらに入っているか?』とは言われていなかった。
「でも・・・コイン1枚でしたよね?」
「それは簡単なトリックだにゃ」
「その通りです。あらかじめ、もう1枚のコインを袖の中に隠し、キャッチして腕を下ろした瞬間に、コインを手の中に滑り込ませました」
「森根さん、ずっと片腕は曲げたままだったから、そうじゃないかと思ったんだにゃ」
「でも、これを外されてもあたしは失格にはしませんでしたよ」
「えっ・・・・・そうなんですか?」
森根の唐突で意外な発言を一同は少し驚いた。
「はい。本当は中等部の方には、普通にコインの入ってるのがどちらの手か当てるものだったのですが・・・」
「それじゃあ・・・どうして?」
「皆さんが会長と親しい方々と聞いてましたから」
ここでもまたあの人が関わってくるのかと不二以外の面々は少し眩暈がした。
これから先ずっとあの人の影響力のもと過ごすしかないことになったらどうしようと、少し不吉すぎる予感がよぎってしまった。
「それであたしのこともお聞きしてるかと思いまして。・・・でも、それとは関係ないところであたしのことをそちらの方はご存知だったようですので」
「それで、予定通りああいうふうにしたと?」
「はい。当てられなくても、他の中等部の方々は『どちらか片方の手』なので、それと同じようにして再チャレンジしてもらおうと思いまして」
「中等部は・・・なんですか?」
「高等部の人たちは皆さん、あたしの特技ご存知のようですから」
確かに菊丸のいう通り、売れっ子のマジシャンほどの人物であるのなら、いくら広い高等部でも、それだけの有名人のこと、すぐに噂は広まることだろう。
「それではスタンプを・・・・・はい、どうぞ」
「ありがとうございます」
「次は生物室ですよ」
「あ・・・あの」
次の場所も聞いて出発しようとした矢先に、菊丸がおずおずとまた少し緊張したように森根に話し掛けた。
「なんですか?」
「た、頼みがあるんっスけど」
「??」
「さ・・・サインください!ねえちゃんたちがファンで、俺も見てたらファンになって・・・だから、兄弟全員分のサイン下さい!!」
いきなりの菊丸のその発言にレギュラーの中にはあと少しでこけそうになった者もいた。
「あたしのなんかで良いんですか?」
「も、もちろんです!!」
「では、明日にでも生徒会室に取りに来て下さい。色紙もこちらで用意させてもらいますので」
「ありがとうございます!」
菊丸がきらきらと瞳を光らせながらもの凄く嬉しそうに森根の手をとって感謝の意を露にしていた。
すでに兄弟の人数を教えていたり、メール番号まで交換している。
「英二の新たな一面を見た気分だな・・・」
「そうっスね・・・・・・・・」





菊丸と森根が意外にも意気投合してしまったために、いらぬ時間を取ったレギュラー陣はよりいっそう急いで生物室までの廊下を駆け抜けていた。
そしてようやく辿り着いた生物室の扉を開けて入った瞬間、足元に何かがぶつかったような気がした。
「ん・・・・・・・・・・・?!」
思考が一瞬止まり、瞳を大きく見開かせてそれをよく見た。
それは苦悶の表情を浮かべて倒れていた人だった。
良く見てみると、他にも中等部、高等部問わず幾らかの人が倒れている。
そして、それに気をとられて今まで気が付かなかったが、そこに1人の人物が無表情で座っていた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「あ、あの・・・・・・・?」
「課題を受けにきたのでしょう?」
無言のままの圧力に多少怯えつつも、それに似ているものを日頃から内部でよく味わっている一同は勇気を持ってその人物に声を掛けると、少し無機質なような声でその人物は返した。
「そうですけど・・・あなたは?」
「高等部生徒会運営担当の依鈴秋徒です。ちなみに第3ラウンドの課題提示者です」
「はっ・・・はぁ・・・・・・・・・・・」
どこまでも淡々としたその口調に何かを感じて少し泣きたくなってきた。
だが、1つ確認しておかなければならなかった。
「あの、すいません。この人たちは・・・・・?」
「気にしないで下さい。因果応報・・・・・自業自得ですから」
そうやはり淡々と告げる依鈴の言葉になにかとてつもないものを感じ取ってしまう。
そんな心情を知ってか知らずか、依鈴は何かの箱を取り出した。
どこにでもありそうな普通の箱で、人の腕が通るくらいの穴が上にぽっかりと空いているそれを、依鈴は一同の前に突き出した。
「どなたでも良いですから引いてください」
「じゃ、僕が引こうかな?」
周りにとりあえず「良いかな?」と聞く不二に対し、一同は内心「この空気に対抗できるのはお前しかいない!」という思惑から不二に遠慮なく引くようにすすめた。
しかし・・・・・・
「ふふっ・・・・・・どういう意味か、あとでじっくり聞くからね」
楽しそうに言われる不二の言葉に、また考えてることを読まれたと、前門の虎、後門の狼状態でオリエンテーリング終了後に起こるであろう恐怖に内心涙した。
そんな一同に黒い笑みをもらし、箱の中に腕を入れてがさ後外中身を探り、中に入っている紙切れらしい1枚を取り出した。
「これで良いんですか?」
「はい、見せてください」
そう言われたので、中身が見えないようして折りたたまれた紙を依鈴に渡すと、依鈴はその紙を開いて中身を確認した。
「・・・・・・・・・スタンプシートかしてください」
「えっ?」
「・・・スタンプ欲しくないんですか?」
そう言われて手塚は慌ててスタンプシートを取り出すと依鈴に手渡す。
すると本当にあっさりと依鈴はスタンプを押して手塚にそれを返した。
「えっ・・・・・どうして?」
「課題クリアしたからです」
「「「「「「「「えっ?!」」」」」」」」」
「この箱から吉以上を引き当てられたら合格です」
そう言って先ほど不二が引いた紙を見せる。
それには見事、『大吉』という文字が書かれていた。
「それにしても、1番確立の低い大吉を引き当てたのは見事ですね」
「良いんですか?そんなことで?!」
「そんなこと?」
その発言を侵害とばかりに依鈴がぎろりと、言った張本人である桃城を睨み付けた。
その視線になぜか背筋が凍るような感覚を桃城は感じた。
「・・・・・・・・・・・」
不二や翔とはまた違った種類の雰囲気の圧力をかける依鈴に、まるで金縛りにでもあったかのように桃城は動けなくなってしまった。
そして、依鈴が取り出した紙のよなものを桃城の額にぴたりと貼り付けた。
その瞬間、桃城は体がいきなり重たくなった感じがして、その場に倒れこんでしまう。
「桃?!」
「なにしたんっスか?!」
「大したことではありません・・・この室内にいる浮遊霊を、その人に集中的に集めただけです。それはそのための札です」
そう言って、桃城の額に貼られている紙・・・札を指差した。
その言葉に一同の顔が青ざめ、体温が下降していった。
「浮遊霊・・・・・・・?!」
「ええ。この教室内にはかなりの数がいますよ。もっとも、こちらが何かしなければなにもしません」
「ああ、依鈴さんって、家が代々陰明師の家系なんだって」
例の手帳を取り出しながら言った不二の言葉に驚愕が3割、納得が5割、そして「そうしてお前は平気そうなんだ」という不二への内心の突っ込みが今更ながら2割だった。
「おみくじはというのは、ある意味の自分の運命を試すものです。『そんなこと』よばわりするものではありません」
依鈴はというと、悶えて苦しんでいるような桃城を見下ろしながら冷たい目を向けてそう言い切った。
何か深いこだわりでもあるのかもしれないと、他の面々は己が身の安全のためにそれ以上はなにも言わなかった。
そこでふとある考えがよぎった。
ひょっとしたら、ここに倒れている人物たちは桃城と似たようなことを口走ったか、或いはこの指令の内容で失格になったのが気に食わず文句を言った、このどちらかの理由のために、桃城と同じ目にあったのではないだろうかと。
否、確実にそうだろう。



「そ、それじゃあ俺たちはこれで・・・・・・・・」
「あっ・・・・・・待ってください」
とりあえず、これ以上ここにはいたくないと考え、依鈴にもお許しを貰って桃城の札も外してもらい、それでも気絶してしまったままの桃城を引きずって生物室を出て行こうとした瞬間に呼び止められ、恐る恐る後ろを振り返った。
「な、なんでしょう?」
「・・・貴方が不二周助くんですね?」
「そうですけど・・・なにか?」
「すこし、お話したいことがあります。他の方は外で待っていて下さい」
なぜ不二を指名したのかは解らないが、他はともかく不二ならばこの人相手でも多分大丈夫だろうと思い、一同は我が身の安全のために言われた通り足早に生物室の外に2人を残して出て行ったのであった。



「で、僕に何のようですか?」
全員が出て行ったのを見計らって不二の方から切り出した。
「実はですね・・・貴方のことを会長からお聞きしまして」
「翔さんから?」
「はい。それで、会長のお願いもあって貴方のあることを占ってみたのですが・・・・」





数分後、さすがに少しだけ心配していた一同の前に生物室の扉を開けて不二が現れた。
その表情は何故かとてもこの上ないほどにご機嫌だった。
「ふ、不二・・・どうしたんだ?」
「えっ?なんでもないよ」
それでもやはりとても嬉しそうな不二の様子に、中で一体何を話したんだと気にはなったが、そこはしつこく追求すると機嫌が下がり、いらぬ被害を招くかもしれないので誰も何も言わなかった。
なにより、このままでいてくれれば、この後も当分不二からの被害は出ないことだろうとも思っていた。
「それじゃあ、次はパソコン室にいこうか」





生物室では、依鈴が先ほど引かれたおみくじをまじまじと見ていた。
「・・・あの占いの結果と良い。このおみくじの内容と良い・・・・・彼は相当良すぎる星のもとにでも生まれたのでしょうか?」
そんなことを溜息をつきながら依鈴はそのおみくじを綺麗に折りたたんでしまいこんだ。
「これでは、彼に思い通りにならないことはないようなものですね。・・・・・・・会長といい、どうなってるんでしょう・・・」
最近の自分は意外なほど良すぎる運気の持ち主にばかり会いすぎだと、彼には珍しくまた溜息をついた。






あとがき

予想以上に長くなってしまいました。
今回は桃城ファンの皆様に申し訳ありませんでしたm(_ _)m
なんだがやってしまったという気分です;
秋徒(依鈴)がこのサイトの別部屋の某人物にとてもそっくりです。でも、見えても平気という点は違います(あっちは気配感じただけで気絶です;)
私の作るお話に1人はいるタイプです、彼は。
おみくじは、大吉引いたのはやはり不二先輩だからでしょうね(苦笑)
ちなみにおみくじの内容、恋愛成就の部分は・・・『近い将来実る』です(苦笑)
占いの結果も・・・当然リョーマさん絡みです。



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