Open life
参(前)・本選前




めでたく・・・かどうかは解らないが、『出し物大会・予選』を突破した中等部男子テニス部員(レギュラー)一同は、きたる本選に向けて何をするべきかを話し合っていたのはその日の夕食時だった。
本選まであと10日程度・・・それまでに何をするのか考えないといけないと、練習に支障もないこの場で、とりあえず話し合っていたのだ。
ちなみに、本日のメニューは6種類のパスタと彩り鮮やかなサラダ。
食後のデザートは苺のミルフィーユらしい
そんな相変わらず絶品である昇の食事に満足しながらの話し合いをしていると、突然譲が不敵とも怪しいとも言える笑いをこぼし始め、一部の慣れたりしている人間以外全員退いてしまう。
具体的にいうと、不二以外のレギュラー陣である。
「ゆ・・・譲ちゃん、なに?!」
「ふっ・・・ふふふvじゃ〜〜ん!これを見てください!!」
そういって自信満々に取り出されたのは、ホッチキスでとめられた紙の束。
本のようにしてとめられているそれをまず手に取ったのは菊丸だった。
「なに?これ」
「台本ですv」
「台本って、にゃんの?」
「それは皆さんに『出し物大会』でぜひやってほしい劇の台本ですv」
楽しそうにそういう譲に一瞬目を皿のようにして驚くレギュラー(不二除く)。
その反応は当然といえる。
まさかこんなものが用意されていたとは誰も思っていないし、何よりも・・・
「譲ちゃん・・・劇っていってもね、時間が足りないよ」
本選開始まで10日しかないというのが現実である。
ここで演技の練習や、劇に必要な衣装、セットなどの調達など出来ない。
ましてや、自分たちはテニスの練習もあるわけでそちらの時間を極力割くわけにはいかない。
「大丈夫!根性で何とかなります!!」
「根性の問題じゃないって!」
「テニスの練習は今まで以上に、私が更に力を入れてお手伝いしますし」
「いや・・・そういう問題では・・・・・・」
実はレギュラー陣がこの家に来て以来、譲はずっとレギュラーの練習に付き合っていたりする。
譲は男相手にもひけをとらないどころか、上手いくらいなので練習に付き合ってももらっているのだ。
しかも、テニスに関してはかなり真剣で、手塚ほどとはいかないがかなり厳しい。
「第一衣装とか・・・」
「あっ!それなら・・・のぼ兄に作ってもらってるから大丈夫ですよv」
にっこりと微笑んで「ね〜〜」っと譲に話を振られて、昇はかなり上機嫌で首を縦に振る。
「昇さん・・・服作れるんですか?」
「お前ら知らないのか?こいつの仕事って、ファッションデザイナーだぜ」
こちらは好物のシフードスパゲティを食べられたという意味でご機嫌の双葉が答える。
しかも、昇の眉がぴくんと少しつり上がった事を見ても、どうやらまたご飯をたかりにきたようだった。
「ファッションデザイナー?!」
「それほんとっスか?!」
「それも世界的に人気の・・・・・ですよ」
にっこり微笑んで答えるのは双子の弟の翔。
ちなみに、直径15cm程度のお皿にパスタを各々取り分けながら一同は食べているのだが、翔はすでにそのお皿25皿分突入である・・・(桃城でもまだ10皿目程度)
「まじっスか?!」
「ええ・・・2年前にデビューして・・・・・・ブランド名が『SKY』」
ブランドの名前を聞いて一部が昇のほうに一斉に身を乗り出してきた。
「す・・『SKY』って、今人気急上昇の?!」
「じゃ、じゃあ『SKY』1人でやってる『SYOU』って・・・」
「・・・・・俺の名前を音読みにした、俺の業界名だよ」
その瞬間、食堂に響きあがる嬉声に属するであろう叫び声。
その後少しの間、以前の森根を前にした菊丸状態になっていた・・・・・。



「そういうわけで、ゆずに頼まれて衣装は現在作成進行中だから」
少し気持ちを落ち着けようとお茶を口にしながらそう告げる昇。
ちなみに、一部のレギュラー陣の手には、少し前までなかったはずのサイン色紙と思われるものが存在している。
「いや・・・・・ですが・・・・」
「・・・・・言っておくが、あれはオーダーメイドでお前たちの体格にきっちり合わせてるんだからな。加えて言うなら、劇の衣装とはいえ、お前たちに似合う服を作ってるんだから」
ようするにせっかく作った(作っている)ものを着ないのは許さないということらしい。
しかし、何時、どうやって自分たちの身長や肩幅などの体格をしったのだろうか、とレギュラーたちは思った。
「ああ、昇くんはその人見ただけでそれ解りますから」
どうやら翔にまたもや読まれたようである。
そして、昇のそれは確かに凄いとは思ったが、一種の超能力に近いのではないかと思い、やはり不二を除くレギュラー達は今後のこの家での自分たちの安否を気にかけた。
「ちなみにメイクとかも俺できるから」
「舞台のセットはすでに知り合いに頼んで作って貰ってますからv」
ここまで用意周到となると逆に拍手の1つでも送りたい気分になる。
「というか、譲さんがやって欲しいと言ってるんですから、やるべきですよね?昇くん」
「・・・・・ああ」
少しばかりその理屈に対して反論したい気分になったが、どうもこの2人は敵に回したくないのであえて何も言わなかった。
そして一同は翔どころか昇までもが、譲のやること、成すことには全て無条件で従うということに初めて気がついた。
「気づいてなかったの?昇さんと翔さんは、譲ちゃん至上主義だから」
そしてこちらも心を読んだらしい不二の言葉に、「それってシスコンって言わないか?」と何名かが思ったという。



普段は決して、協力することのない意外な双子のタッグにより、一同は譲の言い分をしぶしぶ聞くことになってしまった。
ただし、不二だけは元からどうも乗り気らしくかなり機嫌が良い。
「それで・・・・・どんな内容なの?」
「ん〜〜〜とですね。白雪姫を少し改良したものですね」
「「「「「「「「白雪姫?!!」」」」」」」」
その言葉に思わず退いてしまったり、あからさまに顔を引きつらせてしまったものも居た。
『白雪姫』ということは、つまり誰かが女役をやらねばならないというわけだ。
そんな役を普通の男がやりたいはずもないので、この反応は当然といえる。
しかし、譲の「改良した」という部分が少し気になり、ぱらぱらと台本を手にとって内容を見ていた大石の手がぴたり止まった。
否、手だけでなく体全体がまるで石化したように硬直していた。
「大石?!」
「どうしたんっスか?!」
「・・・・・譲、ちゃん」
「はい?」
「これ・・・・・本当にやるの?」
「はいvもちろんです」
とても上機嫌の譲と汗を滝のように長す大石。
その相反する2人に首を傾げながらも、菊丸は大石の手から台本を奪い取り、中を確認した瞬間思わず声を漏らしてしまった。
「なに・・・・・?これ?」
「何が書いてあるんだ?」
「そ、それがさ〜〜〜・・・・・」
手塚に尋ねられ、少し言いにくそうにしながらも菊丸は引きつった笑いと汗を浮かべながら逆に尋ねてみた。
「白雪姫の話にさぁ〜〜」
「んっ?」
「・・・・・魔王なんて・・・出てこにゃい・・・・・・・・・・よね?」
「「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はっ?」」」」」」
菊丸の言っていることが理解できない一同は一斉に間抜けな声をはもらせた。
「ま、魔王って・・・・・・・・・・」
「・・・・・それはそういう意味かな?桃」
その台本の中の話ではあるが、現実にそういった言葉の当てはまりそうな人物が近くに居たので、思わずその人物を見た桃城は少しばかりの恐怖体験をすることになった。
簡単に言えば、不二の黒い笑顔攻撃をお見舞いされた。
桃城がそんな恐怖体験をしていることは放っておき、他の面々はその台本について話し合っていた。
「『白雪姫』に魔王なんていないはずじゃ・・・・・」
「だから改良版なんですってば♪ちなみに、魔王=王子です」
つまり白雪姫の相手役が魔王らしい。
そのうえ、数は7人ではないが、小人が魔王の下僕だったり、正体が魔女の王妃は健在なのだが、例の鏡は魔王の所有物になっている。
そして極め付けが・・・・・
「・・・・・越前」
「はい?」
「言いにくいんだが・・・・・お前だけあらかじめ配役決められてるぞ」
「なんの役っスか?」
「・・・・・白雪姫」
その言葉を聞いた瞬間のリョーマの周りの空気が一気に凍りついた。
「なっ!なんで俺が?!!」
「越前くん、絶対似合うと思うのv」
リョーマの抗議の声など聞いていない様子の譲がかなりハイテンションになっていた。
「譲ちゃんて・・・・・・」
なんだか多少人格が変わっているような気がするとレギュラー達は思ったのだが、そこでまたもやすかさず不二のこの一言が。
「今頃気がついたの?」
一同は心の中で涙を流し、本当に今後のことをうれいていた。
「越前くんの衣装は特に素敵に仕上げてもらうようにのぼ兄にお願いしてるからね♪」
「だから・・・嫌だっ」
「女装が似合いそうな男の子は女装するべきよ」
きらんと譲の瞳が怪しく光ったような気がした。
さらになんだか雰囲気が逆らいがたいものになっているような気がする。
この辺りは育った環境というか、血というか・・・そういう言葉が適用されるに相応しい。
「ふっふっv越前くんのお姫様姿楽しみだな〜〜vv」
多少鼻歌交じりになってしまっている譲にリョーマは「逃げられない」と思い深く肩を落とした。
その中で、1部の先輩レギュラーが小さくガッツポーズなどしているのに気がつきもせず。






食事後、『白雪姫・改(仮)』のリョーマ=白雪姫以外の」キャステインングがくじによって決定された。
一部の間でそのキャスティングに関してブーイングがでたがすぐに駆逐された。
ブーイングが出た理由は、不二が魔王役=リョーマの相手役になったためである。
ちなみに、裏細工などは一切行っていなのだが。
「さすがしゅう兄!見事当たりを引き当てるんだもんね!」
「でも、あらかじめ僕が引き当てるのは知ってたしね」
「そうですね〜〜。相変わらず、依鈴くんの占いは百発百中ですね♪」
「そうでなきゃ小細工してたけどね」
「でもどちらにしろ、僕のリョーマくんへの愛の力で絶対引き当ててたけどね♪」
楽しげに話をする3人の傍で、昇はレギュラー陣、特にリョーマに対し心の中で涙ながらに謝り続けたという。






あとがき

今回もなんだか・・・
あの4コマでの衣装は今回のことで解っていただけたと思います(^^;
リョーマさんが白雪姫で、不二先輩が魔王って・・・・・・;
すいません(滝汗)
どんな話になるのかは・・・・・・また番外編みたいなので書きます。
本編でやるにはどうにもこうにも・・・・・・;
次回、ついにリョーマさんゲットかも・・・・・・・・・



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