Seven flames
2:Encounter
それは横をちょこちょこと必死に歩きながらついてくるミュウと共に、ルークがチーグルの森から出ようとした時だった。
「ルーク!」
「・・・この、声は・・」
聞き覚えのあるその声に嫌な予感がして自分の進行方向を良く見てみると、そこには良く見知った緑の髪の人物が自分の名前を呼びながらこちらに駆け寄ってきている。
「し、シンク!」
「ルーク!捜したよっ!まったくもう・・・」
黙ってこっそりと抜け出して来た自分に気づいて来たのであろうシンクに、ルークはこの後不機嫌なシンクの説教を予想して顔をさぁあっと青くさせる。
そしてルークのその予想は当然的中していた。
「まったく!君はちょっと目を放した隙にいきなりいなくなって・・・僕が任務の合間にどれだけ探し回ったと思ってるんだい?!」
「ご、ごめん・・・」
「謝れば済むってものじゃないって前から言ってるだろ!まあ・・・幸いにも、リグレットやラルゴは、『どうせいつもの気まぐれだろ』と言って別段気にしてなかったから良かったようなものを・・・」
やはり始まった説教にルークは半ば目を回したような感覚に襲われていた。
「ご、ご主人様!大丈夫ですの?!」
そんなルークの様子を察したミュウは、心配そうにルークに声をかけた。
するとその声にようやく目の前のミュウに気づいたシンクは、ルークへの説教を止めてミュウを見下ろし、そして一瞬の間の後に驚いた声を漏らした。
「・・・魔物が、喋った?!」
「はいですの!ミュウは喋るですの!!」
「ああ・・こいつ理由があって俺についてくることになったチーグルの子供で・・・」
「チーグル・・・そうだ!ルーク!」
「な・・・なに?・・・」
ミュウに驚いているシンクにルークが事情を説明しようとすると、シンクはそこで何かを思い出したかのように突然声を上げた。
その声に名前を呼ばれたルークは、また説教の続きをされるのかと一瞬びくっとなったが、今度はその予想は幸か不幸か外れていた。
「アリエッタだよ!チーグルの森で母親を殺されて、その仇をとるって言ってたんだ!」
「なんだって?!」
シンクの言葉にルークは驚くと同時に慌てた。
どうやってアリエッタに母親の死について話そうか悩んでいたところなのに、まさかアリエッタが先にその事を知ってしまうなんて思いもしなかったのだ。
「・・・友達のライガから聞いたらしい。それで・・・その仇のことなんだけど・・・」
「・・・・・イオンと、一緒にいた連中・・・だろ?」
シンクが少し話しづらそうにしていると、ルークが複雑そうな表情をしながら逆にそう返した。
「ルーク・・・知ってたの?」
「ああ・・・チーグルの族長が、イオンが他の誰かとここに来て、ライガを退治して言ったって聞いた。けど・・イオンにアリエッタの母親と戦うなんて真似できるわけねーから・・・きっとその周りにいた連中だろって思って・・・」
「ああ・・その通りだ・・・けど・・・」
ルークのその推理は正解なのだが、それでもシンクはまだ何かあるというように、複雑そうな表情で1度ルークから視線をそらした。
そのシンクの行動にルークが眉を寄せると、意を決したかのように視線を戻したシンクは語り始めた。
「・・実は、僕とリグレットとラルゴ、そしてアリエッタは・・・君が抜け出して少ししてから、イオンを取り戻すために、マルクトの戦艦・タルタロスに奇襲攻撃をしかけたんだ」
「・・イオンが、マルクトの戦艦に?!」
「うん・・・だけど、そこには意外な人物もいてね。僕は直接は会ってないんだけど・・・」
「意外な人物・・・・・?」
何故そこまでシンクが神妙になるのか解らずきょとんとするルークだが、シンクはそんなルークを見ながらやはり少し言いづらそうに口を開いた。
「・・アッシュ・・アッシュ・フォン・ファブレ・・・・・・君の、被験者だよ」
シンクの言葉にルークの心臓がどくんっと激しく脈打った。
この話が本当のことであるなら、憧れて、憧れて、しかしどうしても今まで会うことの出来なかった自分の被験者が、今ままでを思えば会おうと思えばすぐ会えるくらいの場所にいるであろう事実に。
確かにそれならばあのエンゲーブでの村人達が自分を見た時の反応にも頷ける。
寧ろ1度は自分でそうであったら良いという期待までしていたくらいだ。
しかしやはりそれと同時に大きな疑問も出てくる。
「な、なんで・・・アッシュがここにいるんだ?!大陸も・・・国も違うじゃないか・・・」
「ああ・・それなんだけど。他にヴァンの妹も一緒にいてね・・・どうやら、彼女との間に超振動が起こってこの辺りまで飛ばされてきたらしい・・・」
「だからって・・・なんで、マルクトの戦艦なんかに・・・」
「・・そこまで詳しくは解らないけど・・・おそらく、不当に国境を越えたとか言う理由で、捕まってたんじゃない?」
確かにそれならそんじゃ状況にも納得はいくと、ルークは1人気持ちを落ち着かせようとした。
しかし落ち着かせようとした矢先、これまでの話を繋ぎ合わせてはっと気づいた。
「ちょっと待て!今までの話だと・・・アリエッタの母親を殺した、イオンと一緒にいた連中ってのは・・・」
「間違いなく・・アッシュも含まれてるはずだよ・・・」
その結論がシンクの口から出た瞬間、ルークの顔色は先程とは比較にならないほど青くなっていった。
アッシュがアリエッタの母親を殺したという事実が本当なら、それはとてつもないショックではあるが、それ以上に自分が妹のように可愛がっているアリエッタと、誰よりも憧れている自分の被験者であるアッシュが命の奪い合いをするなど、ルークには絶対に耐えられない事実だった。
「・・止めないと・・アリエッタを説得しないと!!」
「君なら・・・そう言うと思ったよ・・・」
「シンク!アリエッタは・・今どこにいるんだ?!」
「・・・おそらく・・・フーブラス川のあたりだと思う」
「フーブラス川?」
イオンがその場所の名前を言うと、ルークは焦るようにそこはどこだというような表情をしていた。
「連中がイオンと逃げた後、セントビナーを張ってたんだけど更に先に行ったか現れなかったんだ。おそらく、カイツールに向かったんだろうけど・・・あそこを渡るための橋は今天災のせいで壊れてるから、直接川を横断すると思う」
「セントビナーからカイツール方面にある川・・か」
「そう。おそらくどう時間を計算しても、今いるのはその辺りだと思う・・」
「解った!!」
シンクからそう聞き終えたルークは、大急ぎで駆け出しチーグルの森の外へと向かった。
「わっ!待ってくださいですの!ご主人様!!」
「やれやれ・・・」
こうと決めたら一直線のルークに問題を持ちかけたのは自分とはいえ、さすがに少し溜息をつきつつ、シンクはどう考えてもこのスピードでは追いつけないであろうミュウを黙って拾い上げ、そのままルークの後を追ったのだった。
突然噴出してきた瘴気をティアの譜歌によって凌げはしたが、それはあくまでも一時的なことであって急いでその場を一同は離れようとした。
しかしそんな中で、ジェイドだけが突如武器を取り出し、先程瘴気に当てられ倒れこんだアリエッタへと近づいていった。
それは今後の事を考えれば敵を1人減らす最良の方法ではある。
そのためイオンの静止の言葉が届くよりも早く、ジェイドが気絶しているアリエッタを刺し貫こうとした。
しかしそれは彼の思い描いていた結果とは違い、刺し貫こうとした槍は、ありえないはずの金属音によって防がれ、はっとした瞬間自分の攻撃を防いだ人物から反撃があると踏んだジェイドは、大きく後退してその人物との間を空けた。
その瞬間、その人物は笑みを浮かべると、立ち上がって先程までの緊張感が嘘のような声を漏らしていた。
「はぁ〜〜・・なんとか間に合ったな」
「っ!ルーク!!」
その名前を呼んだのは驚いた声で呼んだのはルークだった。
そしてその名前を聞いた瞬間、他の面々も驚いて身を強張らせていた。
ただ1人、ルークの顔を凝視して呆然としているアッシュを除いて。
片や当の注目を集めているルークはというと、そんな事は気にしないかのようにイオンを見て和やかに声をかけていた。
「あーっ、イオン!良かった〜〜無事みたいだな。行方不明になったっていうから心配してたんだぜ」
「すいません・・・」
ルークのその素直な言葉にイオンも普通に苦笑を漏らして応対する。
しかし他の面々はそれどころではない様子だった。
「ルーク・・・『七焔のルーク』?!六神将最強といわれるあの・・・」
「驚きましたね・・・まさか、女性だったとは・・・」
「ん〜〜・・確かに俺強いけど、最強っていうのはちょっと違うよな。俺的にはリグレットかシンクが・・・やっぱシンクかな」
遠慮しているのか自信家なのか解らない言葉を呑気に返すルークに、どこか一同の緊張も解けて言ってしまいそうだった。
しかしそんな中、今まで静かに沈黙を守っていたアッシュが声を上げた。
「・・お前はなんだ?」
「・・・ん?」
「どうして・・・俺と同じ顔をしている?!」
そう言って声を上げるアッシュに一同は彼とルークの顔を交互に見比べる。
確かに、ルークの出現に驚いて気づくのに遅れたが、アッシュとルークの顔は男性と女性の違いこそあれど瓜二つである。
その事にジェイドはなにかを悟ったような表情をし、それ以外の面々はアッシュ同様驚きを隠せないといった様子だった。
しかし当の尋ねられたルークは、暫しアッシュの顔をきょとん見た後、ぱああっと次第に表情を明るくさせて口を開いた。
「お前・・アッシュか?!」
その声はとても明るく、とても嬉しそうなもので、周りにいた全員が思わず目を見開いて小さく声を漏らした。
「うわ〜〜本当にシンクの言ったとおりだ!こんなに早く会えるなんて嘘みたいだ!!」
そう言って嬉しそうにはしゃぐルークを暫し呆然と見ていたが、はっとしたアッシュはいらついたように声を上げた。
「ふざけるな!お前は、一体何なんだと聞いて・・・」
「・・アッシュ・・・そんな問答をしている暇はなさそうよ」
ルークに答えを促そうとしたアッシュの言葉を、真剣なティアの言葉が遮った。
「・・・ここに留まってる時間が少し長すぎたみたい。瘴気がもう少しで復活しそうよ」
「なっ・・・しかし・・・」
「ルーク!見逃してはくれませんか?!」
ティアの言葉に何時もであれば冷静な判断をするアッシュだったが、ルークが何者であるのかが余程気になるのか、なおも食い下がろうとするが、その言葉はイオンのルークへの嘆願によって遮られてた。
「うん。良いぞ」
そしてイオンのその願いへのルークの返答は、誰もが驚くほどにあっさりとしたものだった。
「俺はアリエッタを連れ戻すつもりでここにきたんだ。アリエッタも結果的に無事だったし、イオンの無事も確認できたし・・・それに・・・」
ちらりとアッシュの方を見てにっこりと微笑むと、ルークは最後の言葉は心の中だけで呟いた。
「だから元々見逃すつもりできたし・・・・・このままここにいたんじゃ、なんかやばいんだろ?俺達はお前達がここを出てから行くから、お前達も早く行けよ」
「・・・驚きましたね。イオン様を攫うためにタルタロスを襲った人の台詞とは思えませんね」
「ジェイド!」
ジェイドの挑発的なその発言に、イオンは咎めるように彼の名前を呼ぶ。
一方それを言われた当の本人であるルークは、さすがに心外とばかりに頬を膨らませる。
「1つ言っておくけど、俺はその時いなかったよ。まあ・・・いなかったとしても、やったのは俺の仲間の六神将に変わりないから・・俺にも責任があるといえばあるかもしれない・・・」
そう言って申し訳なさそうな表情をしていたルークだが、しかしその直後今度は先程とは全く正反対の鋭い目つきでジェイドを射抜いた。
「けど、それも命令だから仕方なくやったんだ。あんた達だって、身の危険や命令があれば・・・人を殺すんだろ?」
同じだろう、というように告げられたその言葉に、誰も反論を返すものなど1人もいなかった。
寧ろ、返せないといったところだろう。
それを肯定するように、薄く笑ったジェイドがルークに向かって言葉を返した。
「成程・・確かにそうですね。では、ここは貴方を信じて素直に通させてもらいますよ」
「ああ、そうしてくれ。それと・・・イオンの事、くれぐれも頼む・・・」
「ルーク・・・」
「イオン、怪我なんかするんじぇねえぞ」
「・・・すいません」
ルークの優しい言葉にイオンは心底申し訳なさそうに頭を下げると、ルークの横を通り抜けて出口に向かう一同の後に続いていった。
そのまま全員出口にまっすぐに向かうかと思いきや、1人だけ衝動的に立ち止まって後ろを振り返っていた。
それに気づいたティアが咎めるように声を上げる。
「アッシュ!今は詮索してる暇はないはずよっ」
「っ・・・だが・・・」
「ティアの言うとおりだ。瘴気が復活するまで時間がないことだし・・・今はあちらさんの情けを素直に聞いとこう」
「そうですね。仮に倒せたとしても・・・『七焔』が相手では、瘴気が復活する前にここを抜けるなんてことはできません」
「・・・アッシュ。今は行きましょう」
仲間全員に促されて、アッシュは仕方なくまた出口へ向かって歩き出した。
途中1度だけやはり気になって振り返りはしたが、今度は立ち止まることはなく、どの1度きりを最後にアッシュは仲間たちと共にフーブラス川の出口へと姿を消していった。
彼等の姿が消えるとルークは軽く溜息をつき、横たわっているアリエッタを抱き上げた。
「ん・・?なんだろ・・・?」
なんだか妙に気持ちがざわつくような感覚がするが、それが結局何か解らずルークはただ首を傾げただけで、すぐに気にしないことにした。
そうているとアリエッタの近くで一緒に倒れていた、彼女の友達であるライガ達が目を覚ました。
目を覚ましてアリエッタを抱き上げるルークの姿を認めると、嬉しそうに擦り寄ってきた。
「起きてくれて丁度良かった。ここは危険だからアリエッタを連れてすぐに出るけど、良いな?」
ルークがそう言うとライガは少しの間の後、その場に座り込んで尻尾をぱたぱたと振った。
それが背中に乗って良いという意思表示だということに気づいたルークは、一言礼を言うとアリエッタを抱えたままライガの背に乗り、そのままライガに運ばれてフーブラス側を脱出したのだった。
フーブラス川からそれなりの距離を離れた場所に辿り着くと、ルークは自分を乗せてくれていたライガに声をかけてその場に下ろしてもらった。
そして未だ眠るアリエッタを起こさないように自分の膝の上にアリエッタの頭を乗せて横にさせてやった。
アリエッタの顔を覗きんで心配そうにしているライガに、大丈夫というように微笑みかけてやった時、少し遠くからチーグルの森の時同様に自分の名前を呼ぶ聞きなれた声が聞こえてきた。
「ルークっ!」
「ご主人様〜〜!」
案の定現れたのはシンクと、そのシンクに運ばれている形のミュウだった。
ミュウはルークのすぐ傍にいるライガに一瞬びくっと怯えたが、ルークへの思いが勝ったのか意を決したかのようにルークに飛ぶついていた。
「ご主人様!心配したですの!!」
「まったくだよ・・・1人で行くってチーグル押し付けるんだから」
「みゅうぅぅぅ・・・シンクさん、酷いですの・・・」
チーグルの森から真っ先に駆け出したルークに、あの後2人は結局追いついていたのだが、ルークがどうしても1人で行くと言って聞かなかったため、仕方なくシンクは着いていこうとするミュウを押さえつけて1人で行かせたのだ。
別に戦闘に行くわけでもないし、例え戦闘になったところで、封印術のかかった死霊使いとあのメンバーでは、どうやってもルークとアリエッタの2人には勝てはしないだろうと思ったのだ。
だからといって当然始終心配はしていたが。
「あははっ・・ごめん・・・」
「・・まあ、無事だったなら良いけど・・・とろこで、アリエッタどうしたのさ?」
「あっ・・それがさ・・・」
「んっ・・・・・」
何かあったのかと心配そうに尋ねるシンクに、ルークが事情を説明しようとした時、小さく呻くような声が聞こえて一同はそちらに注目した。
「アリエッタ・・・!」
「・・ルー・・ク?」
ゆっくりと開いた目でルークを捉えると、アリエッタはまだはっきりとしては口調でその名前を呼んだ。
その一連の行動にアリエッタの意識が戻った事を喜んでルークが笑ったのも束の間、アリエッタは開いた目に思い出したように涙をためると、上半身を起き上がらせていきなりルークに抱きついた。
「アリエッタ?!」
「ルーク・・ママがっ・・・ママが死んじゃったよぉ〜〜!」
ルークに抱きついて歯止めがないかのようにひたすら泣き続けるアリエッタを、ルークはその表情に暗く影を落としながらただぎゅっと抱きしめた。
「・・・ごめんなさいですの」
暫くただそうしていると、突然ミュウがそう謝罪の言葉を呟いた。
「・・・ミュウがライガさん達のおうちを焼いちゃったから・・・ライガの女王様は・・・・・」
「・・・貴方が・・・ママ達のおうちを・・・・・」
それを聞いた瞬間、アリエッタは泣き顔から少し怒りを露にし、アリエッタの横にいたライガもそれに同調するようにミュウを威嚇する。
その様子にミュウはびくっと身体を震わせて小さくなる。
「・・っ、ちょっと待ってくれ。アリエッタ」
アリエッタにしてみればそもそもの元凶となったミュウに対して怒りを覚えるのは当然だったが、ルークもこんな小さな生き物が威嚇されるのは忍びないし、他のも思うところがあるのためアリエッタを静止する。
「だって・・ルーク・・・っ」
「こいつは、ちゃんと自分のやったことを反省してるんだ。そりゃ、反省すれば良いってもんでもない。・・反省してもアリエッタのお母さんは返ってこないんだし・・・」
最後の方はアリエッタに言うにはさすがに酷なことだと思い、ルークは顔を落として声を少し小さくさせる。
しかしすぐに顔を上げるとアリエッタの目をしっかりと見て言葉を続ける。
「けど・・こいつにもアリエッタみたいに、親や仲間がいるんだ。こいつが死んだら今度はそいつらがアリエッタみたいな思いを抱えることになるんだぞ・・・」
「・・・でもっ・・・」
「それにアリエッタのお母さんだって・・・きっと・・アリエッタに復讐なんて真似・・してほしくないと思ってると思う・・・」
「・・ママが?」
「ああ。アリエッタが復讐しようとすれば、相手だって反撃してくるだろ。そりゃ・・・チーグルみたいなのは問題ないと思うけど・・・・・さっきの連中はそうじゃない・・・」
そう良いながら、その中にアッシュも含まれているので、ルークは少し複雑そうな表情をする。
「上手く復讐できてもアリエッタも傷つく、下手したら返り討ちにあって死ぬかもしれない。・・アリエッタのお母さんは、自分のためとはいえ、アリエッタが怪我したり、死んだりするのを喜んだりしないだろ?」
「・・うん・・ママ・・そんなんじゃない・・・」
「だったら、アリエッタのお母さんを心配させないためにも・・・復讐なんて真似、やめにしよう?」
ルークのその言葉を聞き、それでもアリエッタはどこか少し迷っているような様子だった。
そのアリエッタの様子にルークは最後の一押しとばかりに言葉を口にした。
「アリエッタが元気でお母さん達の分まで行き続けることが・・・アリエッタのお母さん達が1番喜ぶことじゃないかな?」
ルークはそれ以上何も言わず、じっとアリエッタの答えを待っていた。
そしてやがてアリエッタは少し戸惑いがちではあるが、こくりと小さく頷いて口を開いた。
「・・わかった・・ルークがそう言うなら・・・・・アリエッタ・・・ルークの言うとおりにする・・・」
「良かった・・・やっぱりアリエッタは良い子だな」
そう言ってルークがアリエッタの頭を撫でてやると、アリエッタは照れながらどこか嬉しそうな表情をした。
そしてなおも小さな声で謝るミュウに再び目をやると、アリエッタは無言のままミュウに手を伸ばした。
そのアリエッタの行動にびくっとミュウは目を閉じて身体を強張らせたが、次に下りてきた頭を優しく撫でられる感覚に目を開くと、そこには少しだけ笑ったアリエッタの顔があり、自然にミュウの表情も笑っていた。
その光景を少し微笑ましく見ていたルークも、もう大丈夫だなと思いながら笑っていたのだった。
「さてと・・・で、これからどうする?」
一連の流れの中、1人除け者扱いのようにされていたシンクが少し不機嫌そうにルーク達に声をかけた。
「・・シンク、なんで不機嫌そうなんだ?」
「・・・・・カルシウム・・足りないの?」
「ですの?」
なんだかミュウの加入でボケがさらに増え、いつもならここでボケに対して突っ込んだりもするが、今回はさすがにそういう気にもなれずシンクは軽く溜息をついて本題を進めた。
「・・ヴァンの計画はちゃくちゃくと進行してる。成り行き上とはいえ、タルタロスも乗っ取れて、戦力と移動力はました。で、僕達はこれからどうするの?」
そう自分達は隠してはいるがヴァンの計画に反対している側の存在だ。
ヴァンの計画が順調に進行している状態であるなら、こちらとしても何か対抗策を考えなければならない。
シンクの言葉にその時それに始めて気づいたルークは少し頭を悩ませた。
考えても、考えてもあまり良い案が浮かぶことはなかった。
しかしふと、ルークの頭にある事が思い出された。
「・・なあ、シンク・・・この近くにはカイツールがあるんだよな?」
「ん?・・・ああ、そうだよ」
「で、橋が落ちちゃったから今はここから徒歩じゃ行けないけど、あっちにはデオ峠とアグゼリュスがあって・・・」
そう言ってなにやらこの辺りの地理でも思い返そうと必死になっているルークを、シンク、アリエッタ、ミュウの3人は不思議そうな表情で見ていた。
そしてやがて考えがまとまったのか、はっきりと思い出したというような表情でルークはシンクとアリエッタに向けた。
「・・シンク!アリエッタ!」
「はいっ?」
「・・なに?ルーク・・・」
名前を呼ばれてそれぞれルークに声を返す2人に、当のルークは何か思いついたというような笑顔と言葉を返した。
「ちょっと手伝ってくれ!」
あとがき
本気でシンクはルークの保護者になってます・・・;
これでもところどころ省いたほうで、本当は他にも色々と書きたい事あったのです・・・・
アッシュ出せたんですが、あまり会話がなかったです・・・
でも多分次はそれなりに会話するかもです・・・;
我が家のアリエッタはルークの言うことは良く聞きます。
後イオンも結構そうかもしれないです。
この2人は全面的にルークのこと信頼してますので。(あとシンクも)
次回は某死霊術師さんの自称ライバルの某死神さんが初登場です。(誰かバレバレ・・;)