「ユビサキから世界を」








「イギリス」



組み敷いたときに嫌がってる手を掴む。
綺麗な細くて長い指がもがくように爪を立てる。
女性のような綺麗な肌をしてる。



「悪い」



そう言うとイギリスの瞼が震えて、長い睫が小刻みに揺れる。



「やめろ…っ」



くぐもった声を聞かないふりして口付ける。
酒で力が抜けた体をもう一度抱きしめなおした。
シャツの中に手を入れると体をねじって抵抗する。



「痛くしないから」



いいわけのように口にした。
だから嫌がるなとは、流石に言えなかった。



「お前、何してるのか分かってるのか」



睨むイギリスに俺はひっそりと心の中だけで笑う。



分かってる。
この先お前と笑い合えなくなるってことも、
二度とお前に触れられなくなるってことも、
今のこの微妙な関係が壊れるってことも。

だけど怖かったんだ。
絶対俺を置いて先に進んでしまうお前が。



綺麗な細い指にキスを繰り返した。
この指が、お前をどこかにやってしまうんだ。
俺が行けない場所まで、お前は行ってしまう。
こんなに近いのに、はるか遠い、俺とお前の距離。
妬ましくて、恨めしくて、苦しくて、愛しくてしょうがない。



「恨めよ、俺のこと」



くすんだ金髪に指を差し込む。
長い足を抱えなおして、折り曲げた。




「…っく、」




イギリスは声なんか上げなかった。
声も息も押し殺して、眉を寄せて耐えていた。
俺は何度も何度もイギリスの指にキスをして、その指をかみ砕いてしまいたい衝動と戦った。




「すきだ」




口にした言葉にイギリスが「だったらこんなことするんじゃない」と諭すように言った。
お前はいつだって正しい。
だけど俺は正しいばかりじゃ生きられなくて、イギリスの人差し指にほんのすこしだけ強く噛みついた。
痕すらつかないほど弱く。
だけどそれだけで、俺の心は罪悪感で一杯になる。





「すきなんだ」





代わりに二度目のささやきは声にはしなかった。
指先に言葉の形を教え込むように、今度は強くつよく噛んだ。

Present from*有栖さま

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