「おいフランス、テメェさっさと帰れ」
「こんな遅くから家にかえるの面倒だから、泊めてくんない?」
「・・・いや、まだ夕方だろ。全然遅くないから帰れっての」
「えー、泊めてくれたっていいだろー?」

昼間アポなしで我が家に出現した無礼な男は、俺に泊めてくれとせがむ。
コイツは腐れ縁で永い付き合いだし・・・その、こ、恋人だったりするから頼まれると少し断りにくい。
・・・それに俺は紳士だしな、一応客人は手厚くもてなさなければ。

「・・・ちっ、仕方ねぇ。客間使わせてやるからウロチョロすんなよ?邪魔だから」
「よっしゃ!イギリス、メルシー!!大好きだ!」
「っ、うるせぇっ!お、俺は別に・・・好きなんかじゃ・・・!!」
「じゃあなんで俺と付き合ってんだよ?」

俺が素直じゃないのを面白がって、フランスはニヨニヨ笑っていながら訊いてくる。
かなり腹の立つ顔だが、嫌いなわけではない。
コイツが泊まるっていうのだって・・・まぁ、嬉しくないってわけでもないしな。

「・・・でも今日は俺、お前ごときに構ってる暇はねぇからな。仕事多いし」

フランスの質問は華麗にスルーして、話を続ける。

「・・・まぁ、日中は無理して俺と話してたから、仕事滞ってたもんなぁ」
「それがわかってるんなら、さっさと俺の部屋を出てけ!」
「仕事終わったら客間に忍んで来いよ?あ、俺がここに襲いに来るのもアリだな」
「っ、テメェみたいな万年変態ワイン野郎に付き合ってる暇はないって言ってるだろうが!!」

不吉な言葉を残したフランスを、怒鳴りながら部屋から追い出す。
い、いや・・・暇があるならアイツの変態っぷりに付き合ってやらんこともないんだぞ。
・・・そんなことを言ったら、アイツはすぐに調子に乗るから絶対に言ってやらんが。

「ふぅ・・・やっと集中して仕事ができる」

フランスが来なければ今頃には終わっていただろうという仕事なんだが・・・。
まぁ、本気を出して執りかかれば日付が変わる頃には終わるだろう。



「・・・やっと終わった。畜生、もう日付変わってるじゃねーか・・・」

だいぶ疲れた。
もうこの部屋から動く気力なんか残っていない。
・・・でも動かないとフランスが襲いに来てしまうから、どうにかして寝室まで逃げなくては。
・・・やっぱりこれ以上活動したら過労で倒れそうだから、動かないでいるべきか。
悩んでいる最中に、ドアがゆっくりと開き始めた。
ヤバい、フランスだ。
とりあえずソファに突っ伏して寝たフリをする。
すぐに息苦しくなったので、寝返りは打ったが。

「・・・あ、もう寝ちゃってるか」
「・・・・・・」

フランスの言葉には全く反応しない。
空気の読めない妖精がじゃれついてきたりするが、今だけはそれすらも無視。
フランスはソファの傍に座り込んだようだ。

「起きてる時もこれくらい大人しくしてればもっと可愛いのになぁ」
「・・・・・・」

畜生、起きてる時は大人しくなくて悪かったな。
つーか今現在起きてるよ、阿呆。
・・・なんて思っても、口に出してしまえばお終いだ。

「お疲れ。・・・ゆっくり休めよ、マイハニー」

そう言って俺の唇にフランスの唇が重なった。
顔にかかったフランスの長髪と吐息の所為で、顔が赤くなるのを堪えきれなくなって叫ぶ。
どうしてこの男はいつもこんな恥ずかしいことをしようとするんだろうか。
やっぱり変態だからだろうか。

「テメェ!何しやがる!?」
「あ、・・・やっぱり起きてたか。マイハニー」
「誰がマ、マイハニーだと!?とりあえず今すぐ窓から飛び降りろ!!」
「い、いや・・・この部屋5階なんだけど。マジ死ぬから!洒落になんないから!!」

フランスを窓際に追い詰める。
焦って顔を青くしているフランスを見るのは愉快なもんだ、畜生が。
あーもう、俺はどうしてこんな変態を好きになっちまったんだろう。
謎すぎて頭が狂いそうだ。

「落ちるのが嫌なら銃殺っていう方法もあるが・・・どうする?」
「イヤァァァァアア!!落ち着けアーサー!!殺さないで!何でもするからァァァア!」

何処かのヘタレなヤツみたいなことを抜かすフランスに言う。

「じゃあ、金輪際俺のことを"マイハニー"とか言うな。あと寝顔にキス禁止」
「・・・うっわ、ある種の拷問じゃん。目の前に無防備なお前がいるのにキスできないなんて・・・」
「まぁ、今のは寝てなかったけど。それなら・・・銃殺と拷問、どっちがいい?選ばせてやる」
「今後"マイハニー"って呼ばないで、今日は昼まで眠らせてやるから、"寝顔キス禁止令解除"で!!」

そんな選択肢を、俺は用意した覚えがないのだが。

「まぁいいか。・・・俺が寝てる間、お前は俺の護衛な。変なことしやがったら即銃殺」
「ありがとうイギリス!大丈夫、変なことはしないから!!」


眠ってるときに隣にコイツがいるのは、マジで心臓に悪い。
勘弁してもらいたいくらいだ。

だけどコイツが隣にいてくれれば、なんだか安眠できそうな気がする。
(・・・いや、たぶん俺の気のせいだけどな。)


不安と安心は紙一重。

Present from*桜花さま

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